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ホムンクルスの愛に、エルフは~ただ友が欲しかっただけなのに~
「ついにできたぞ」とフラスコを高く上げるエルフ1000歳は、声高々に言う。誰もいない地下の研究室で、やっと友達ができた
私は、エルフの中でも、異端で誰とも仲良くしてもらえない……一人ぼっちのエルフ・一匹狼のエルフそもそも、オオカミじゃないんだが
でもついに、友ができる。待ちに待った友が私にもできるのだ……
フラスコの中で、揺らぐ陰に私はこれから始まろうとする楽しい毎日を想像していたのになぜこうなったのでしょう——
「やぁ……脳をいじらないで~~耳から入れるなっあ」と気持ち悪い高い声がこだまする女のような自分の声に、気持ち悪さを感じていると
「ねちょねちょ」という音だけが響く
「気持ち……悪い。きもちいい、よくない」ともう自分がなにを言っているのかわからなくなる
エルフの特徴的な耳を、黒い影入っていく
「なんで、友達が欲しっつかただけなのに……」という俺の声に頭に直接語り掛ける声がこだまする
「……愛してる……あいしてる僕の大切な人」という何とも愛らしい声と裏腹に、実態を帯びていくその影は私よりも大きくまるで、
見るだけで勝てないと思わせるような男だった
「やった!!これで、ルシュルに触れる」と声はどこか幼さを残している物体に驚く
「いいから、やめて……おねがい」と力なく言うと、
「でも、気持ちいでしょ……ルシュルの喜ぶ顔が見たい」とにこやかに笑う
まだ精神は幼く、善悪が分かってないこのホムンクルスを止めなきゃと逃げようとすると、その大きな手で抑えられる
「ルシュルには僕だけだよね……どこにも行かないよね——逃げるなんて許さない」とぎりぎりとつかむ手に腕が悲鳴を上げる
「逃げないから、あたまのにゃかではなさないで……」というとそれに納得したのか、耳から煙が出てくる
足から力が抜けて、ぺたりと座り込むと
「ルシュルどうしたの?もっと僕と遊ぼうよ~せっかくルシュルに触れるようになったんだよ、褒めてよ」とにこにこと笑う
「ちが……違うこんなことのために生み出したんじゃない——ルリア、君とはともになるために……」と頭をうなだれながら言うと
「僕はそんなこと望んでない……ルシュルと話すだけじゃなくて触りたい、僕は友だと思ったことはない」と顎をぐぃつとあげられる
私の涙を、ペロっと舐めると
「ルシュル、ルリアがいるのに一人で遊んじゃだめだよ——夜聞こえてたよルシュルの声が……」というとキスをしてくる
触れるだけの優しいキスに涙がぼたぼたと落ちてくる
「ホムンクルスの前で泣くなんて、そんなに求愛したかったんだね」と言われ肩を噛まれる、そして血が流れる音とどくどくと脈打つ心臓に悲鳴を上げる
「っひ、っんん」と濡れる下半身と、頭の中に響き渡る食べられる……殺される
「食べないよ、だって僕の大切な人なんだから」と、ケタケタと笑う
あぁ、私はやっぱり一人ぼっちに戻るのかと思ってると心の底から笑いあえる友が欲しかっただけなのに——
「どうして、ルリアを無視するの?ルリアはルシュルだけのものなのに……」というと先ほどとうって変わって深いキスをしてくる
角度を変えてキスをしてくる。それは、もうルシュルの気持ちいところが分かっているかのように
「ルシュルの頭の中を覗いたから、ルシュルの好きなところ分かるよ」と私の疑問に答えるかのように言う
「ルリアのことしかいらないように、ルシュルだけが僕を見るようにしなきゃ」と私の目を大きな手で覆う手が離れたかったと思うと
なにか、言葉が聞こええたときには、ルリアだけしか見えなかった。
まともにどこにいるかもわからずはっきりと見えるのはルリアだけ
床の感触はあるのに、どこにいるのかわからないそんな初めての感覚に、泣きながらルリアに手を伸ばすと
ルリアにつかまれた瞬間に、床や部屋の家具が見えるようになる
「成功だぁ!!これで、ルシュルはルリアだけのことを見てくれる」と喜ぶ声が聞こえる
「これで、ルシュルはルリアがいないとダメだよね……もう離れられないね」という声とともに、大粒の涙を流す私に
「大丈夫だよ、僕がずっと一緒にいて、寂しくないようにずっと離れないから……」指を絡ませてくるホムンクルスに
あぁ、だからホムンクルスは禁忌だということを思い出した——でも、一人ぼっちじゃないという願いだけはかなったことに気づく
ベッドに運ぶ、ルリアの笑顔を見ながら、私はルリアのものになったのだと理解する——
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