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第137話

 ヒバリが顔を上げた時、後ろから静かにポリーヌが姿を現した。その手には美しいトレーがあり、音も立てずに茶の用意をしている。それを横目で見て、ヒバリはツバキたちにソファを勧めた。彼女たちは嬉しそうに微笑み、ヒバリの正面に設置されているソファに並んで座る。ロールを抱いたまま自らもソファに座ったヒバリは、後ろに控えた凪に小さく首を傾げた。 「ナギ殿もどうぞ」  ヒバリはツバキたちのソファとは直角の位置にある一人掛けのソファを勧めた。それはヒバリなりの気遣いだとわかるが、凪としては流石に頷くわけにはいかない。 「いえ、席につかせていただくなど恐れ多いこと。私はこちらにおります」  なんならもうこの部屋を出て仕事に戻りたいくらいだが、それは許されない。凪はツバキの後ろに控え、できるだけ気配を消せるよう沈黙した。そんな凪にツバキは悲しそうに瞼を伏せるが、ウォルメン閣下の下に徹することもあるヒバリは何も言わない。ただ静かにツバキの方へ視線を向けた。何か用があったのかと無言で問いかける。それに気づいたツバキがハッとしたように目を開き、取り繕うように微笑んだ。 「今日は娘をご紹介したくおしかけてしまいましたが、実は、もうひとつ」  そう言ってツバキは懐から小さな小瓶を取り出した。それをそっと、凪の前に置く。コトン、と妙に音が響いた。

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