1 / 1
烏山先生の取材ドライブ〜道は迷っても愛は迷わない〜
プルヘブ、フォーシーズン~愛しのあなたへ~四季折々の恋人たちへの賛歌。烏山影人の新境地。鬼才の放つ禁断の世界へようこそ! リーフ出版初のBLコミックス創刊!
リーフ出版に勤める水上渚は、ごく平凡なサラリーマンであり、少年漫画誌の編集者だったはずが、運命の悪戯か?
今業界で一番の売れっ子である、漫画家烏山影人の担当編集者に指名されて、気まぐれな烏山に振り回されているうちに、気づいたら恋人になっていたという経歴の持ち主だった。
今ではほぼ同棲状態だったが、そこはそれ、仕事とプライベートはきちんと区別しなくては! と思っているのだが、肝心の恋人は相変わらず気まぐれなので、手を焼く毎日だった。
烏山影人は漫画家の他、アニメのキャラクターデザイン、ソーシャルゲームの作画、イラストレーターとしても活躍していて、その作品は男性はもちろん女性にも人気がある。
昭和の名作「プルプルヘブン~桃色果実は熟れ盛り~」を漫画化してからは、成人向け作品にも意欲的に関わり、現在はなんとBL(ボーイズラブ)作品まで手がけているのだ。
BL作品の処女作である「プルヘブ、フォーシーズン」はドラマCDまで発売されるという人気ぶりで、すでに次のBL作品の告知がされている。
「俺としては、このままBL専門になっても良いんだけどね」
とは烏山談で、渚とのプルヘブ生活でネタには事書かないのだそうだ。
いやしかし、プライベートを参考に作品を作られても、渚としてはただただ恥ずかしいの一言に尽きるワケで。
そこで渚とはまったく縁のなさそうな、スポーツをテーマにしたBL作品はどうかと勧めてみたら、思いの外烏山の反応は良かったのだ。
「それで、何のスポーツにしますか?」
「ん、競輪。自転車にするよ~」
(何故に自転車? )
「スポーツって言ったら、野球とかサッカーとか、イケメンがいっぱい登場して、読者的には美味しいんじゃないですか? それとも今話題のフィギュアスケートとか? 氷上のプリンスって格好いいじゃないですか?」
「何よ? 渚君、俺よりメダリストの子が好みなワケ?」
(いやいやいや、何故そうなる? )
なまじ想像力が豊かすぎるせいか、烏山の妄想は時に明後日の方角に膨らんで行く。
そうすると拗ね始め、仕事をストライキしてしまうのだ。
「もう描かない! 漫画家やめてやる~」
「あぁ、もうっ。分かりました。自転車! 自転車にしましょう!」
(自転車でBL作品って、なかなか難易度高いと思うんだけど、本人のたっての希望だ。ここは編集者として、通してあげるべきだな! )
と、何とか自分で自分を納得させて、渚は女性編集長である寺門冴子の許可を仰ぐべく、一度リーフ出版本社に戻ろうとしたのだが。
「ついでに取材許可取ってきてよ。今週末TTC(東京展示センター)でロードバイクのイベントあるから、一緒に見に行こう。TTCの後は実際に競輪場も見たいな」
「分かりました」
ニコニコ手を振る烏山に見送られ、渚は烏山の事務所から本社に戻った。
週末、烏山の希望どおりTTCに取材に行くことになったのだが。
てっきり電車で移動すると思っていた渚は、烏山の車に驚いた。
「えぇと。烏山先生って自動車の免許持ってましたっけ? 俺運転しますよ?」
「運転免許ぐらい持ってるよ、心配しないで。渚君は助手席ね」
烏山に促され、渚は助手席のドアを開けたのだが。
シルバーグレイのSUVタイプのレクサス。
(これってワールドプレミアムモデルじゃ? )
価格を考えたら、渚の愛車である青い軽自動車が一〇台くらい買えそうな気がする。
(しかもこの車体サイズ。こんな大型車、烏山先生大丈夫なんだろうか? )
「俺烏山先生の運転するところ初めて見るかも」
あははは、と何気なく笑ってみたのだが。
「うん、久しぶりだぁよ。んーここ数年は乗ってないかも」
「ええ! もしかして……ペーパードライバーじゃないですよね?」
「大丈夫だよ。ナビあるから」
(いやいやいや、そう言う問題じゃないんだけど)
「俺やっぱり後部座席にしようかな……」
「駄目! 渚君は助手席! 渚君、俺の運転する姿見ててよ!」
烏山に泣きつかれ、渚は助手席に留まることになってしまった。
下道を通るよりも、高速道路で移動した方が早いと言うことで、烏山運転のレクサスは首都高速に入る。
ペーパードライバー状態であるとは言え、烏山は持ち前の運動神経で、難なく運転をこなしていた。
その姿に渚はホッとしたのだが。
『次の信号を右折です』
「ねぇ、渚君。次の信号を右折だって」
「高速道路に信号はありませんよ。烏山先生、ナビを鵜呑みにしないで下さい」
「だよね」
カーナビは時々高速道路の真下を走る一般道路の案内をしてしまうことがあるため、精度は100%ではないのだ。
『このまま五㎞以上道なりです。その後銀座方面です』
カーナビの案内を聞きながら、車はひたすら首都高を直進する。
そのまま道なりに真っ直ぐ進もうとした烏山を、慌てて渚が制する。
「右! 右側に寄って下さい!」
「えぇ~渚君。ナビ鵜呑みにするなって言った癖にぃ~」
「今のはナビどおりで良いんです! 銀座方面にひたすらむかってください。左車線だと湾岸に行っちゃいますよ。湾岸に行ったらネズミーランド渋滞に填まります」
「俺としては、ネズミーランドに行っちゃっても良いんだけどね。だってデートしてるんだし」
「デートって。取材じゃないんですか?」
「いいじゃない。取材って名前のデートで」
「烏山先生っ」
取材なんて、殊勝な事言ってると思ったら、案の定すっかりドライブデートのつもりだったわけだ。
ぐむむぅ~~~と、渚がふてくされてるのを横目に、烏山はニコニコ上機嫌だった。
ひたすら合流の多いクネクネカーブした首都高を走り続けて行くと、カーナビの案内に横浜という言葉が出てくる。
「銀座方面の次は横浜方面ですよ」
「え? 横浜?」
車はそのまま銀座方面出口へと進入してしまう。
「あ、やば。出口に来ちゃった」
「烏山せんせぇ~」
渚が頭を抱える中、二人を乗せた車は高速を降りてしまった。
「もう一回高速乗ろう。あ、高速入り口って看板でてるよ」
烏山の言葉どおり前方には緑の看板があった。
車は再び首都高の入り口へと向かったのだが。
「あの、間違えて降りてしまったのですが、もう一回払わないと駄目ですか?」
料金所のおじさんに渚が訴えるも、もちろん却下されてしまった。
「うぅ~、高速料金が二重払いになってしまった。経費がぁ」
「だいじょ~ぶだよ、渚君。俺が払うから」
涙目の渚に烏山は微笑んで、スマートに財布からお金を取り出す。
(うううっセレブめ! でも今回は許す! )
「じゃ、もう間違えないで下さいね! 横浜ですよ、横浜」
「はいはい」
二人を乗せた車は、再び首都高に乗った。
横浜方面をひたすら目指して車を走らせる烏山に、「平和島ですよ、平和島で降りて下さい。本当に横浜に行っちゃったら駄目ですよ!」と渚は念を押して、無事二人はTTCに辿り着く。
立体駐車場に入るのにも迷って、同じ所を往復するハプニングもあったが。
「渚君、ほら見て。全国規模の展示イベントだからね、プロの競輪選手から部活動の高校生まで、いっぱい見に来てるよ」
「本当ですね」
展示物の自転車ばかりか、観客の着ているユニホームなど、漫画の設定に生かせそうな素材もあって、なかなか有意義な取材になった。
展示物を見て回るうちに、渚の両手は烏山が貰って来たパンフレットでいっぱいになってしまう。
「渚君、やっぱり俺が持つよ」
「駄目ですよ。烏山影人先生に荷物持ちをやらせるわけにはいきませんから」
「真面目だなぁ~渚君は。でも彼氏としては、見てられないんだよね」
そう言うと烏山は、ひょいっと渚の手から荷物を奪ってしまう。
「ああっ。俺が持つのに!」
昼も過ぎお腹が減った渚は、烏山に昼食を提案したのだが。
「お昼はそこのコンビニのおにぎりで良いよ。運転しながら食べるから」
「でも、そんなに急いで帰らなくても大丈夫ですよ?」
「まだ競輪場見てないでしょ? このまま東京出るから、渚君まさか日帰りのつもりだったの?」
(東京を出るって? 日帰りじゃない?)
きょとんとした渚の腕を引き、烏山がコンビニに入っていく。
「渚君、鮭にする? ツナマヨ?」
「あ、俺焼き肉入ってるのが良いです」
手際よく買い物を済ませた烏山に連れられて、渚は再びレクサスの助手席に乗り込んだ。
「あの、競輪場って、どこの競輪場ですか?」
「ん、渚君の実家の近くの」
「ええ!! 俺んち!!」
「だって渚君の実家もまだ行ったことないし」
「いや……実家って、今誰も住んでいないし」
「誰もいなくても、好きな人の住んでた所って気になるじゃない? 何だったら、二人で一緒に渚君の実家に移ったって良いよ?」
「駄目ですよ。本社から遠くなったら、通うの大変ですもん」
「ちぇ」
「ふてくされても駄目です」
TTCの立体駐車場の料金の高さに渚が悲鳴を上げそうになったり、再び首都高に乗るはずが入り口が見つからず迷ったりしながらも、二人はなんとか首都高に乗り東京から脱出をする。
『このまま東北道方面を道なりです』
「あれ? 渚君の実家って、東北道だっけ?」
カーナビの案内どおり道なりに進む烏山を、渚が慌てて制する。
「東北道じゃなくて、常磐道です! ああ、右……って、渋滞列出来ちゃってる」
「あちゃ~、仕方が無い。無理矢理入れて貰おう」
ウインカーを上げて、どうにかこうにか右側の渋滞列に入った車は、そのままのろのろと三郷ジャンクションに向かって進んでいく。
なかなか進まない車の列に、気分を変えようと烏山がラジオを付けた。
その時流れはじめた歌に、烏山が呟く。
「〝Cold Cheek〟 か。懐かしいな」
「知ってるんですか? この曲」
渚の問いに烏山が頷く。
「前に〝BlueCar〟って曲教えてあげたでしょ。その曲と同じアーティストの歌だよ」
烏山がラジオから流れる曲に合わせて歌を口ずさむ。
♪ 〝On your cold cheek blown by the wind~〟 ♪
心地よい歌声に、渚がうっとりと呟いた。
「烏山先生、歌上手ですね。俺……酔いそうです」
「ええ!! 吐きそう? 吐きそうなの?」
「違う! そうじゃなくて!! 前見て下さい前! ハンドルしっかり握ってて下さいよ!」
大慌ての烏山に、渚もまた慌てて、休憩のためサービスエリアに立ち寄った頃には、辺りは暗くなってきていた。
サービスエリアは近年商業施設としてめざましい発展を遂げていて、ショッピングモールやフードスクエア的な側面が強化され、ただの休憩所というイメージから脱却していた。
渚は烏山に連れられてカフェテラスで少し早い夕飯をとり、小腹が空いたときのためにこのサービスエリア限定のベーカリーショップによる。
「渚君そんなにいっぱい食べるの?」
渚が買いこんだパンの量に烏山が苦笑する。
「これは編集長や明日真さん達へのお土産です」
ニコニコ微笑む渚に、烏山は何とも微妙な表情を浮かべて。
「ねぇそれよりさ、キーホルダー見に行こうよ。渚君とおそろいのキーホルダーが欲しいな」
(乙女か!!)
と思わず突っ込みそうになるのを我慢して、渚は烏山の後に続いた。
お土産コーナーの一角にひしめくキーホルダーの数は凄く多い。
そしてご当地とは関係ない物もあったりするのだ。
「ねぇ、渚君。これ見て。東京と青森のご当地キーホルダーだよ」
烏山が渚に指さして見せたのは、まりもをイメージしたキャラクターが、スカイツリーとリンゴの着ぐるみを着ていた。
「こんな所で買えちゃうんだ。全国どこでも買えたら、もうご当地限定じゃないよね」
これ買ってあげようか? と問われ、渚は丁重にお断りした。
(だって――もっこりしてるまりもだぞ?)
「烏山先生。もう少し読者のためにもイメージを大事にして下さいね」
「イメージ? 恋人の前では関係ないでしょ?」
くくくっと笑う烏山は渚の手を掴むと、店内を歩き回った。
戸惑う渚の手を握ると、烏山はにやりと意地悪く微笑んで。
店の外で手を解放され、渚はようやくホッとする。
緊張しすぎで、汗をかいてしまった。
しっとりと濡れた手に、烏山が紙袋の中から小さなキーホルダーを二つ取り出す。
「一個は渚君の。もう一個は俺のね。渚君の車の鍵に付けて置いてよ。俺も付けるからさ」
手の上には、小さなカラスの付いたキーホルダーがあった。
どこにでも売ってるようなありふれた物だけれど。
早速レクサスのキーに取り付けた烏山が、自慢げに見せる。
「ありがとうございます」
渚が礼を言うと、嬉しそうに笑う烏山の髪が風に揺れた。
「風吹いてきたね。身体が冷える前に、車に戻ろうか」
身を竦める烏山に渚は「何かあったかい物買ってきます」と走り出す。
照れくさくて、少しクールダウンしたかったのだ。
ホットコーヒーを両手に車に戻ると、先に車に戻っていた烏山は、暖房を付けて待っていた。
「烏山先生どうぞ」
缶コーヒーを手渡す渚の手に、烏山が触れる。
その手の冷たさに、烏山が眉を寄せた。
「渚君、さ」
驚く間もなく、伸ばされた手が、渚の頬を両手で包み込む。
「冷たい……なんでこんなに冷えるまで黙っていたの?」
痛ましいものを見るようなそんな目で、じっと見つめられると渚は身動きが取れなくなる。
烏山は渚を解放した途端、車を人気のない場所へと移動する。
ガクンと音を立てて、渚の座る座席が真後ろに倒された。
「うわっ」
突然のことに驚く渚の上に、運転席から覆い被さるように移動してきた烏山が体重をかける。
身動きが取れなくなった渚の口を、かが荒々しく塞いだ。
「う……ん」
小さな呻き声を上げながらも、烏山に答えるように渚もまた烏山の背に腕を回す。
烏山の唇が離れ、酸欠状態の魚のように胸を上下させる渚の首筋に、烏山が再び唇を寄せ甘噛みをする。
性急な烏山の手は、渚の首元のネクタイを外し、シャツのボタンを外していく。
開けられた肌に烏山の手が触れると、その冷たさに渚は小さな悲鳴を上げた。
「ひゃっ、烏山先生の手冷たい!」
「温めてよ。俺の事も渚が温めてくれるんでしょ?」
二人だけの、濃密な交わりの時だけ口にする『渚』の名に、渚の身体はビクリと震え出す。
身体の中に灯った欲に目を背けようと、渚は烏山の下で身をよじった。
「駄目ですよ。だって……スーツが汚れる」
「いいじゃない? スーツの一着ぐらい」
「駄目だって! だってこのスーツは……烏山先生がはじめて買ってくれた」
(大事なスーツだから!)
と、泣きそうな顔で訴える渚に、烏山は困ったと言いたげな表情を浮かべて。
「大事にしてくれているのは凄く嬉しいけど、今は渚を温めたいの。また新しいスーツ買ってあげるから」
少しばかり強引な渚の恋人は、有無を言わさず渚の下穿きの中に手を伸ばした。
「やっ。離せっ」
「暴れないの。渚のここ、大っきくなってるね。嬉しい」
烏山は掴み上げた渚の雄を刺激する。
「やだ! 車汚れるっ」
「も~う。色気ないんだから」
「ううううう~~~~~」
ボロボロ涙を零す渚の頬に、烏山がそっと啄むようなキスをする。
「ゴム付けてあげるから、泣かないの。俺もゴムするから、ね」
烏山はダッシュボードを開けると、中から小さな箱を取り出す。
手早くゴムを渚の雄に被せる様を、渚はじっと見つめていた。
「何よ? そんなに見ないで」
烏山も前をくつろげると、既に固くなっていた自身のそれをゴムで多う。
「寒いから服着たままエッチしようね」
いつもなら念入りに渚の身体をほぐすかも、限界だったのだろう。
「ああっ。ひっ……」
「クッ」
早急に身体を開かれ、押し込められた熱杭に、渚の身体がガクガクと震え、悲鳴を上げる。
「大丈夫? もう少しだけ我慢してね」
幼子をあやすように囁かれる烏山の声に、渚は必死に頷いた。
ようやく身体が溶け合い、互いに強ばりがなくなった頃、烏山が動き出す。
ゆるゆるとした律動が激しくなる頃には、身体は熱を帯び、そして。
甘い夜は深けていった。
早朝車の助手席で目を覚ました渚は、ぼんやりとした眼差しで車を走らせる烏山の横顔を見つめた。
「ん? 起きた?」
渚が目を覚ましたことに気がついた烏山が、笑みを浮かべる。
「もう少し寝てて良いよ。もうすぐ高速降りるから、そしたら国道を真っ直ぐだよね」
はにかんだ笑みを浮かべる烏山の頬に、うっすらと赤みがさす。
烏山も照れくさいのだろう。
渚は寝たふりをして、目を閉じる。
なんだか気持ちがふわふわして、落ち着かなかった。
シルバーグレイのレクサスは、高速を降りるとナビの指示どおり国道を東に向かって走り続ける。
国道の終点に目的地である競輪場があって、渚は烏山と共にレースを観戦した。
「熱い男達の戦い。手強いライバル。勝つのは俺だ! って、迫力がありましたね!」
「そうだねぇ、自転車も良いでしょ? 渚君」
「はい。烏山先生の手で、どんな作品になるのか、担当としてわくわくしますよ!」
目を輝かせる渚の腕を烏山がそっと掴む。
「渚君、さ。次は実家行かない? 教えてよ」
「は? 駄目ですよ~、実家なんて誰もいないし」
あははと笑う渚に、烏山が真剣な顔をする。
「俺。ちゃんとご挨拶したいんだ。渚君は俺が大事にしますって。ご両親の前で」
「へ?」
「駄目? こう見えて本気だぁよ?」
いつになく真剣な烏山に、渚はみるみる頬を染めて。
「うへぇっ」
言葉にならない声を上げ、卒倒した渚を烏山が大慌てで抱き上げた。
『bicycle~恋の駆け引き~』愛と友情、そして偽り。男達の戦場は、純粋な若者の心を蝕んでいく。熱い自転車レースに隠された禁断の世界とは? 今貴方は目撃する――
鬼才烏山影人の描くBLワールド待望の第二弾! 巧妙な心理戦に隠された真実の愛が今花開く。
リーフ出版BLコミックス最新号!
インターネット通販サイトに告知された作品のチェックをしていた渚は、烏山の声にタブレットから目を離した。
「ねぇ、渚く~ん。今度の週末、渚君の実家行こうよ。競輪場の取材ついでに。この前は結局行けなかったんだしさ~」
PCのモニターを気怠げに見つめる烏山が口を開く。
「駄目です。烏山先生に取材に行く余裕なんてありません」
「えぇ~取材しないと漫画描けない。もうやめる~」
だらりと椅子に寄りかかった烏山に、渚は発破をかける。
「この連載が無事完結したら、実家にご招待しても良いですよ?」
「ほんと? やるやる。完結させる!」
俄然やる気になった烏山が、PCに向かう。
『渚の実家』は、もうしばらく烏山のカンフル剤として使えそうだった。
この連載が終わったら――
二人で両親に、報告するのも悪くない。
その時を思って、渚の頬はバラ色に染まった。
【完】
ともだちにシェアしよう!

