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03.「参理が俺のになったから、約束どおり他の女とは全部切るよ」

 その日の放課後、俺たちは呼ばれていた事務所に集合し、 「セックスできました♡」  と報告した。  ものすごく恥ずかしかったけど、(アス)はにこにこしてた。  どちらかというと運営前ではいつもクールにしてるアスなのに、俺に抱きつきはしゃいでた。  俺は居たたまれなくて顔を赤くしうつむいてたけど、 「これで落ち着いてくれるよね?」  マネージャーの言った意味が分からなくて首を傾げた。 「参理(マィリ)が俺のになったから、約束どおり他の女とは全部切るよ」  アスはしれっと言ったけど、 「どう言うこと!?」  って俺が声を上げたら、気まずそうに目をそらされた。 「言ってなかったの?」  マネージャーに責められるよう言われたアスが、 「うるせー」  ってラフに突っぱねるのを見て愕然とする。  そのあと全てはアスと運営が一緒に仕組んだことだと、俺は知ることとなる。  素行不良(ヤリチン)アイドルだけどうちの絶対的センターなアスを落ち着かせるため、BL営業の延長線上のフリして運営命令で俺にセックスを了承させる計画だった。  俺はアスが女を取っ替え引っ替えしてることも知らずに憧れてたし、処女まで捧げてしまったってこと。  信じられない!! 許せない!! ってブチ切れ地団駄踏んでた俺を哀れっぽく見る社長とマネージャーの前で、アスは悪びれることもなくニヤニヤしてる。  許せない!! 許せない……けど、きっと俺は許してしまうとアスは思ってる。  気づかれてる。  だって俺の身体は既にアスの快楽を知ってしまったし、俺の快感はそのカタチに書き換えられてしまっていた。  もうディルドには戻れない。  ましてやちんちんだけのオナニーになんて戻れるはずもないから、女の子とのセックスを成立させられる自信もない。  性志向も性感帯もメスにされ、本物の男の娘になってしまった俺だけど、アス以外の男の人とセックスする選択肢なんてないんだ。  だって俺がいちばん美しくて強くてカッコいいと思ってるアスに、敵う男なんてそうそう居ない。 「参理(マィリ)はね、もう悪い男に引っかかったと思って諦めて」  社長の言葉に、俺はうなずく。  うなずくしかない。  このままアスの思い通りになるのは悔しいけれど。  でも……だけど……もしアスがまた素行不良(ヤリチン)戻るのだけは嫌!!  俺だけのアスが良い!! 「他のメンバーやファンの前では慎みなよ」  マネージャーに言われ、 「アーイ」  アスは不真面目な返事をする。  アスってこんな軽薄な感じだっけ?  もしかして年下の俺の前では取り繕ってた!?  チラッと見たらアスも俺を見返し、素顔のままでとてもキレイな笑みを浮かべ‪――‬いつものように俺を見惚れさせた。  それから、インスタにアップされた(アス)×参理(マィリ)のラブラブツーショット写真の背景に『ローションらしきボトル』と『コンドームの箱らしきもの』が写り込んでいて話題になるのは……また後の話。  その頃には不良と呼ばれたアスのこと何となく察し始めていた俺からしたら、「それって絶対アスの確信犯!」だと思った。  ネットの特定班の考察はたぶん全部当たっててその特定能力は凄かったのだけど、結局確定するには曖昧でアスマィ(マィアス)オタクたちの中では伝説の一部となったらしい。

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