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第81話
「母上、サクに本気でこれを着せるおつもりですか?」
「そうよ」
「そうよって……母上、サクは男です」
「半分は、でしょう。絶対に似合うと思うの」
淡いピンク色の宝石を散りばめた華やかなドレスをこの日のためにお義母さまがはりきって用意してくれた。それはそれですごく嬉しいんだけど。
「お気持ちだけありがたくいただきます」
「さては私がいないところでサクに着せて楽しむつもりなんでしょう。セド、サクは私の娘なのよ。私の楽しみを奪わないでほしいわ」
「奪うつもりはありませんが、サクは俺とアルの妻です」
目を潤ませるお義母さん。
「嘘泣きはお止めください」
「嘘泣きじゃないわよ。エリ、セドが酷いのよ」
ちょうどエリさまが部屋に入ってきた。
「私のユフに着せたら可愛いかも」
ドレスを見るなりうっとりとして眼を細めるエリさま。
「あの、兄さん」
セドさまの表情がひきつっていた。
「冗談だよ、冗談」
笑って誤魔化すエリさま。
「本当に仲の良いご家族だね。羨ましいな。私はサクとユフから与えてもらう愛しか知らない。親兄弟から愛情というものを受けた記憶がないから、どうしていいか分からない」
アルさまが寂しそうに本音を漏らした。
「サクも貴方も私たちの家族なのよ。嫌だ、しつこいっていうくらい、たくさん愛してあげるから覚悟しててね」
お義母さまが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
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