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③
視線が合って、あっという間に二人の唇が重なる。深く口付けられて、すぐに朔の息が上がってしまう。とても心地よくて、朔はとろんと瞳を蕩けさせ侑星のキスを受け入れた。
「ん、ん……はぁ……」
そっと侑星の顔が離れていく、と思ったら、朔はソファーの上に押し倒された。
「この二ケ月、俺がどれだけの理性を振り絞って我慢してたか......朔にはじっくりと教える必要がありそうだな」
男の顔になった幼馴染に、さっきとは違う甘い涙で瞳が潤む。
「いっぱい......教えて?」
不安が跡形もなく消え去り、喜びでいっぱいになる。朔は誘うように自分から侑星の首に腕を回して引き寄せた。
* * *
「んっ......あぁ......ゆうせぇ......」
自分の声とは思えない程の甘い声が、次から次に零れ落ちる。
「朔......さく......」
恥ずかしくて堪らないのに、名前を呼ぶ侑星の声が甘くて、与えられる快感が強くて、零れる声を我慢できない。侑星の指で後ろを解され開かれ、体の隅々にキスの雨が降ってくる。最初は強張っていた体も、侑星のキスと優しい愛撫に、朔はあっという間に溶かされていった。
今やとろとろになった朔の体は、早くというように侑星のことを求めていた。
「あぁん......、ゆーせっ、そこだめぇ......」
「ここ? 好きだろ? さっきから俺の指きゅうきゅうに締め付けてる」
ナカの感じるところを何度もすり上げられ。一際大きく朔は嬌声を上げた。快感で震える手で、後ろを弄る侑星の手を掴む。
「あ......ゆうちゃん......」
求めるように見上げると、侑星が大きく息を飲んだ。
「この状況でその呼び方堪んねぇ......朔......もう、いいか?」
熱い塊が後ろに押し付けられて、期待するようにちゅうとそこが侑星のモノに吸い付く。それに侑星が興奮に顔を歪めた。
「かわいすぎ......ここが返事してくれてる」
熱い吐息交じりにそう零すと、侑星がグッと体を進めた。
「あっ、あ、んぅ......んーー」
「っ......さく......」
腹の中が侑星でいっぱいになった感覚に襲われる。熱くて苦しくて、そしてとても幸せだった。
心配そうに侑星が朔を見つめる。瞳に欲情を浮かべながらも、朔を気づかうその視線に、朔はふわっと侑星に向かって微笑んだ。
「いっぱいして? ゆうちゃんの好きなだけ......」
「さくっ!」
侑星に向かって腕を広げる。すぐに侑星が朔をギュッと抱きしめてくれた。それと同時に、侑星が腰を動かしだした。
「あぁっ、ん、んっぁ、ゆうちゃっ......」
感じるところを侑星の昂りがなぞって、信じられないぐらいの快感が体を包んだ。
「朔......すきだ! あいしてる......」
耳元で侑星が何度も愛の言葉を囁く。その度に、目が眩むほどの愛しさと幸福感が朔の体を駆け抜けた。
「あっ......ゆうちゃん......ぼくっ、もう......」
「ん、一緒に......」
答えた侑星にキスをされる。好きな人と繋がりながら、キスをするのがこんなに気持ちよくて幸せだということを朔は今日初めて知った。
「んんっ、ん、あぁぁ――――」
「......っ、さく......」
そして二人は同時に精を吐き出した。
固く手を繋ぎ合いながら。
* * *
「んふふ~さく~~」
新調したソファーに座り、朔は後ろから侑星に抱きしめられていた。侑星は甘え切ったように朔の首筋に顔を埋めている。そんな侑星が可愛くて、読んでいた本から顔を上げ侑星の方を見る。目が合って侑星が嬉しそうに瞳を細めた。
「このソファーさ、実は俺もこれがいいな~って思ってたんだ。洗濯機と冷蔵庫の時もそうだったし、好みまで一緒って俺と朔は運命だな」
侑星が上機嫌に笑う。それに朔の顔にも笑顔が浮かんだ。
「ほんとだね」
「さく~~」
抱きしめる腕に手を重ね頷くと、さらに侑星の笑みは深くなった。
(なんて、ほんとは渡されたカタログの中から、侑星が好きそうなのを選んだんだけど)
だてに付き合いは長くない。侑星の好みはすべて把握している朔にとってはそんなこと朝飯前だ。侑星が朔の欲しいものがいいように、侑星の欲しいものが朔の欲しいものだから。
侑星は朔の願いを何でも叶えてくれる。昔からずっと朔のことを想ってくれて、何よりも大事に大切にしてくれる。そしてとてもとても幸せにしてくれるのだ。
そんな侑星が朔は大好きで。だけど、侑星が朔を想ってくれるのと同じぐらい、いやそれ以上に朔だって侑星を幸せにしたい。
だって。
「なぁ朔、さっきから何の本読んでんだ」
「んー料理のレシピ本」
「何? 急に料理にでも目覚めたのか?」
不思議そうに侑星が朔を覗き込む。
「いや......そういうわけじゃないけど......」
朔は手に持っていた料理本をパラパラとめくる。
「美味しいもの作れるようになったら侑星が喜んでくれるかなって」
「え……」
朔は侑星を見つめるとにこっと微笑んだ。
「僕の趣味も、侑星を喜ばせたり幸せにすることだから」
「..................」
侑星はピタリと動きを止め、そして次の瞬間、顔中に幸せそうな笑顔を浮かべた。
「さくーーーーー‼ 大好きだ‼」
「うん、僕も大好き」
心も体も一つになった二人の未来は、これからもずっと幸せに続いていく。
~完~
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