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第25話 顔が赤いのは酒のせい(side保)

「先輩」 「んー?」 「保先輩、まだケーキとか食べてませんよ」 「んー……」 やば、寝そうになった。 暗い視界が更に翳った気がして、目を開ける。 「うわ」 「起きてましたか、保先輩」 目の前に修平の顔がどアップで現れ、俺はビビる。 更に俺の手に何やら硬いものが当たっている気がするのだが、修平は退く様子がなかった。 「先輩、お口開けて」 「ん?」 「はい」 言われた通りパカッと開いた俺の口に、たっぷりの生クリームが入ってくる。 「んま」 「保先輩がコンビニで一番に買ったケーキじゃないですか。二人で食べましょう」 「俺は修平に買ったのにー」 「こういうのは、分け合った方が美味しいですよ」 「……ん。ありがと」 修平は、一本のフォークでそのケーキを自分と俺とで交互に口に運び、あっという間にペロッと食べ終えた。 「んまかったー」 「ですね。御馳走様でした」 修平が俺の上から離れて行って、圧迫感からは開放された筈なのに、何故か少し寂しく感じた。 俺は体育座りをして、両腕に顔を埋める。 今だったら、酔った勢いで聞けるだろうか? 「……あのさー」 「はい」 「修平は、しないの?」 ケーキの入っていた空き箱をゴミ箱に入れた修平は、ピタリと動きを止める。 「……何をですか?」 「えっと、その……ナニー……」 「え?」 修平に聞き返されてしまい、俺は顔を上げ、やけっぱちで叫んだ。 「だ、だから、ァナニーだよ!!」 「……え?」 ちょっと待ってくれ。 なんで修平が、「何聞かれてるんだかわからない」って顔するんだ。 「お、お前が言ったんだろ? 前立腺刺激した方が気持ち良くなるって。でも、一人じゃ流石に勇気が出ないって」 「……ああ!」 修平はやっと理解したのか、怪訝そうだった表情を明るくした。 「その、修平も元気になってるのに、俺が何もしないのは悪いかなって……」 「あはは、バレましたか」 いやバレるだろ、そのデカさ。 ケーキ食べてた時の俺の手に、やたら硬くて熱いモノが当たってたし。 「いや、やってみたんですけど、俺には合わなくて」 「そーなんだ」 俺は気持ち良かったけどなぁ、と、夕方の行為を思い出せば、尻がヒクリと反応した。 「保先輩は、合ってましたね」 「……う、ん」 尻を掘られて快感を得るなんて、恥ずかしい。 でも事実だから、正直に頷いた。 缶チューハイの残りを飲んで、顔の赤味を隠す。 「で。今日は俺ばっかり気持ち良くして貰っちゃったから、お前にもしようかなって」 考えて見れば、俺は三回も抜いたけど、修平は一回も抜いてない。 酔ってる今しか、こんなこと聞けないし、あんなこと出来ない。 酔っ払いの戯言だと思って、笑い飛ばしてくれれば、それでもいい。 少なくとも、俺から聞いたことで罪悪感だけは消える。 徐ろに修平が俺の隣に座り、俺はビクッと肩を揺らした。 「……それは、俺のオナニーに先輩が手伝ってくれる、という理解でいいんですか?」 「うん」 修平の顔は見れなかった、けど。 修平の周りの空気が変わった、気がした。

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