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プロローグ
僕には好きな人がいる。
でもその人は、大好きなお姉ちゃんの恋人になった。
二人は僕より三つ年上で同い年だから、きっと話も合うんだろう。
狭い団地の襖一枚を通して聞こえてくるのは、僕には分からない職場での出来事とか、人間関係の愚痴とか、無口な恋人にお姉ちゃんが一方的に話してる明るい声。
夜が深くなると、僕は安いイヤホンをして、メラトニン分泌を促すらしい安眠BGMをお供に眠りにつく。
漏れ聞こえてくるそれをずっと聞いていられるほど、メンタルが強くないからだ。
お姉ちゃんには幸せでいてほしいけれど、少しだけ重たい僕の心を守るためには自衛しなくちゃならない。
何たって、僕にとっては二人とも大事で、大好きな人。
これから先、いつか二人のことを心から祝福できる日がくるまで、あんまり捗る気配の無い気持ちの整理をがんばる。
毎日毎日、盗み撮りした好きな人をスマホの壁紙に設定しようとしてやめる僕には、なかなか難しい事なのかもしれないけれど。
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