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はじめましての誤解から4

「おいしい! なにこれ、おいしいんだけど」  蕎麦を食べるなりイジュンは騒いだ。 「そんなに騒ぐなって」 「騒いだって仕方ないでしょ。こんなにおいしい蕎麦、韓国で食べられないよ」 「まぁ、蕎麦は元々日本の料理だし、この店は特に蕎麦おいしいから」 「それにティギムもおいしい。油っこくない」 「そのティギムって天ぷらのことだろ。そんなに油っこいの?」 「だって油で揚げてるんだもん。普通は油っこくなるだろ」 「古い油を使ったらそうだけど、新しい油ならそんなふうにならないはずだけど、違ったっけ?」 「新しい油?」 「そう」  俺がそういうとイジュンは目を大きくして驚いていた。そんなに驚くようなこと言ったかな? 「そうか。油か! 君は頭がいいね。公認会計士の試験、今度こそ受かるよ」  韓国の頭のいい大学出てる人と比べたら俺の学校なんて全然だ。だけど、古い油のことを知らなかったのかな? 「じゃあ韓国は古い油を使っているっていうことか。うん、頷けるな」 「そうなの?」 「大体、韓国人はそんなことを気にしない」 「でも味が変わってくるのに」 「だから、そんなこと気にしないんだよ。それに油をそんなに変えていたら経費がかかる」  経費……。確かにしょっちゅう油を変えるとそうなるけど、それこそ味が落ちたらお客さんこなくなるだろうに。俺がそういうとイジュンは笑った。 「言っただろう。韓国人は気にしないって。油で揚げるものはそんなものだと思っていればなんの問題もない」 「え……」  確かにそうだけど。でも、どうせ食べるならおいしいものを食べたいのに。韓国人は気にしないっていうことか。日本人はそういうところ気にするよなと思う。 「韓国と日本は似ている面も多いけど、差違がある。そういうところが面白いね」  差違がある……。そうなのか。韓国へ行ったことがないからわからないけど。 「韓国と日本って似てるところあるんだ」 「似てるところは多いと思う。でも、やっぱり民族が違うし国が違うからね。当然違う。その違いは面白いよ。明日海は韓国へは来たことないの?」 「ない。というか海外自体行ったことない。友だちでは行っているやついるけど、勉強で忙しいから」 「そうか。じゃあ明日海が韓国へ来たら俺が案内するよ」 「うん。そのときがあったらお願い」 「でも、やっぱり差違があるのは面白いね。だけど、このティギムはほんとに美味しい。韓国でもこんなおいしいティギムが食べられたらいいのに。明日海、韓国で日本料理屋をやったら絶対に人気の店になれるよ。大学の勉強も活かせる」  韓国で日本料理屋か。そりゃ俺が作ったら日本人の作る味にはなるけれど。なんて天ぷらの話しをしているのに、イジュンはすごい勢いで食べていく。ほんとに相当お腹がすいていたみたいだ。 「これだけで足りる……わけないよな」 「うん。足りない。でも大丈夫だ。あの通りでおいしいものをいっぱい食べるから」  イジュンはこれだけでは物足りないっていうけど、俺はそんなに食べれない。案内と通訳に徹するしかなさそうだ。 「なんで食べなかったの?」 「ホテルを出たときは食べようと思ってたんだ。でも、迷子にはなるし、浅草はおもしろいし、そんなことしてたらこんな時間になっちゃったんだ」 「今どき迷子になる人なんているの?」 「だってNaverマップが使えない」  その言葉を聞いたとき、俺は止まった。だってそうだろ。googleマップがあるじゃないか。まさか韓国人のスマホはgoogleが使えないのか? そんなことないだろう。それをイジュンに言うと、天ぷら蕎麦を食べたときと同じように目を大きくした。 「そうだ。googleがあった」 「っていうか、世界的に見て使われているのはgoogleマップの方が多いと思うよ」 「そうか。確かにNaverよりgoogleの方が規模が大きいね。俺はなんて馬鹿なんだ」 「日本に来てから今まではどうしてたの?」 「日本には昨日来たばかりだから」  googleマップなんて普通に思いつくと思うし、それこそガイドブックとかに載ってないのかな? 知らないけど。でも、頭のいいところを出ているにも関わらず、以外と抜けているところもあるみたいだ。そんなイジュンがなんだか可愛く感じた。  

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