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コンビニの灯りと傘の下で3

「韓国ってどんなところ?」  俺がそう訊くとイジュンはうーんと唸った。難しい質問をしただろうか? でも、少し考えてから「せっかちで騒がしいところ」と言った。 「韓国人はせっかちなんだよ。なんでもパリパリって言う。だからバスは乗客が乗ったらすぐに発車するし、降りるならバスが止まる前に降り口に行ってないと白い目でみられるし、完全に降りきってなくても走りだそうとするよ」 「え、危ないだろ、それ。怪我したらどうするんだ?」 「どうするんだろうね。まぁそしたら訴訟起こされるんじゃないかな? 韓国はすぐに訴訟起こすよ」  イジュンの言葉を聞いて俺はびっくりした。そんなに簡単に訴訟を起こすなんて日本では考えられない。 「それに、車が走っていればクラクションをバンバン鳴らしてる」 「え? なんで?」 「せっかちだからだよ。自分だけは先に行こうとするの。だからクラクションを鳴らしまくる。そこへ韓国人の大きな声だから、通りは煩いよ。通りに面した部屋には住まない方がいい」  そう言えば、日本にいてクラクションなんて聞かないなと思い出す。そうだよ、車にはクラクションっていうものがあった。それに日本人は外では煩くしない。人に迷惑をかけてしまうから。そう聞くと日本と韓国は真逆なのかもしれない。 「でも、市場とかは面白いし、人情もある。最近は薄れてきてるけど、それでも人情はあるって言えるかな。でも、日本に来て、日本人の方が人情あるかなって思ったからな。どうなんだろう」 「兵役はどうなの?」 「家族のこととか国のことを考える時間にはなったよ」 「でも、厳しいんだろう?」 「そうだね、先輩がとにかく厳しい。でも、昔はもっと厳しかったって聞く。携帯も昔は禁止だったけど、今は決められた時間内なら使える。食事もマシになったって聞いたな。昔は士気がだだ下がりのひどい食事だったって言うけど。兵役期間も陸軍は1年半って短くなったし」 「そうなんだ? なんで?」 「親が煩いからじゃないかな?」  いわゆるクレーマーだろうか。日本でも最近は学校に対してクレームをつける保護者が増えて、学校側はピリピリしているって聞くもんな。韓国はそれが軍隊にまでいってるんだな。 「でも、スマホが使えるのはありがたいよ。外と気軽に連絡取れるから。昔は簡単に連絡取れなくて、兵役中に彼女と別れたりとかあったっていうからね」 「イジュンはどうだったの?」 「俺は軍隊に入る前に別れた。軍隊に行くからって」 「え? 待っててくれなかったの?」 「待っててくれなかったね」  軍隊に行くからって簡単に別れるというのが俺には信じられなかった。確かに軍隊に入ったら簡単には会えなくなったりするんだろうけど、連絡が取れるなら1年半ぐらい待てなかったのだろうか。そんなに簡単に別れられるっていうことは、相手はイジュンのことを本気で好きだったわけじゃなかったんだな。なんだか、ちょっとイジュンが可哀想に思えた。 「待っててくれなかったのは辛かったね」 「まぁ、大学生の恋愛なんてそんなものなのかなって思ったよ。俺も待っててくれとは言えなかったし。本気で好きだったら言えたのかもしれないけど。恋愛って今までまともにしたことない。大学入るまでは大学進学に向けて勉強三昧だったし、大学時代も勉強してたし。大学卒業したら兵役があったから。誰かを好きになる余裕はなかったよ。明日海は? 優しいから彼女とかいるんだろう?」 「今はいない。っていうか俺モテないし」  俺がそう言うとイジュンはびっくりしたようだ。 「なんで? そんなに綺麗な顔してて」 「綺麗言うな。なんか、自分より綺麗なのがイヤって言われたことがある」 「あー、そうきたか。それは仕方ないよね」 「なにが仕方ないだよ。母さんに似たからってこんな女顔に生まれてさ、不本意だよ」  そう。そんなんだから今までまともに恋愛をしたことがない。そんなところはイジュンと似ているかもしれないと俺は思った。

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