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すれ違いの再会2

 今日は明日海がソウルに来る日だ。フライトは昼間。到着がちょうどお昼どきになるので、とりあえずホテルへ直行して荷物を置いてから、どこかで食事でもしよう。以前は明日海が東京を案内してくれたから、今度は俺がソウルを案内する番だ。もっともソウルは東京ほど見るところはないような気がしなくもないけど、市場巡りも入れるとそこそこかもしれない。市場ごとに特色があって面白い。明日海の乗った飛行機が到着するまであと少し。俺はそわそわしながら明日海を待っていた。 「イジュン?」  誰かに名前を呼ばれ、振り返るとそこには従姉妹のソヨンがいた。ソヨンは俺の2歳下で、子供の頃からよく一緒に遊んでいた。大人になってからもソヨンはたまにうちへ来るので、ちょくちょく会っている。 「こんなところでなにしてるの?」 「今日、日本から恋人が来るから迎えに来たんだよ。ソヨンは?」 「私は友だちがオーストラリアから帰国するから迎えに来たの。偶然ね。それより、恋人ってこの間の東京旅行でガイドしてくれた人でしょう。気になる。一緒に待ちましょう」 「ああ」 「どんな人なの?」 「色が白くて綺麗な人。性格はちょっとツンデレだけど優しい」 「優しいのかー。でも、綺麗って男の人でしょ?」 「そうだよ。でも綺麗なんだ。初めて見たときは女性と間違えた」  ソヨンにそんな話しをしていると、浅草で初めて明日海を見かけたときのことを思い出した。ほんとに色が白くて綺麗で女性だと思ったんだ。 「そんなに女顔なの?」 「そうだね。でも、キリッとした顔してるよ」 「イジュンってそんな顔の人が好きだった? 大学のときに付き合ってた子は女の子っぽい子だったけど。どちらかといえば可愛い系で綺麗系じゃなかったと思うんだけど」 「あのときは告白されたから付き合っただけで……」 「うわ、最低。でも、どんな人なのか見てみたい」 「見世物じゃないんだぞ」 「いいじゃない、一目見るくらい。ケチー」  そんな話しをしている場合じゃない。明日海の乗った飛行機はもう着いた頃だ。金浦空港は|仁川《インチョン》空港ほど広くないので、ここにいても明日海は見つけてくれるだろうし、俺も見つけられる自信がある。  スマホで時間を確認すると、もう出てきていてもいい時間だ。じゃあもうすぐ会えるんだ。そう思うと自動ドアから目が離せなくなった。 「来たら紹介してよね」 「明日海はあげないよ」 「大丈夫よ、綺麗系は私のタイプじゃないから。大体、私より綺麗だったらショックだし。ただ会ってみたいだけ」 「わかったよ」  ソヨンと話しながらも視線は外さない。でも、5分、10分と経っても明日海は出てこない。どうしたんだろう。入国審査が混みあっているんだろうか。 「もう東京からの便は着いたんじゃない?」 「ああ。でも、いない」 「金浦空港は広くないから見失うことはないと思うけど。電話してみたら?」  そうだ。電話すればいいだけだ。そう思って電話をかけるけれど、コール音が聞こえるだけで明日海は出ない。 「え? 来てない、とか? いや、絶対来ているはずだ。来ないなんて連絡は受けてないし」 「出ないの? 入国審査もさすがに終わってると思うわよ。だって、もう日本人いなくなったもの。みんな出たってことでしょう? 入国審査で捕まってるとか?」 「海外旅行初めてだからそれはないと思うよ」  どういうことだ? なんで明日海がいない? でも、来ないという連絡がない以上、韓国には来ているはずだ。どこかですれ違ってしまったんだろう。それにしては電話に出ないのが気になるけれど、絶対に会えるのはホテルだ。 「ソヨン。悪いけど、紹介はできない」 「え?」 「ホテルへ行ってみる。すれ違っちゃってもホテルに行けば絶対に会えるはずだから」 「そうね。じゃあ行った方がいいわよ。そのうち会わせてね」 「ああ。じゃあな」  ソヨンと別れてタクシーに乗る。バスや電車もあるけれど、バスは途中混むことがあるし、電車は乗り継ぎがある。一番早く着くのはタクシーだ。明日海ともタクシーでホテルまで行くつもりだったから、それが1人に変わっただけだ。  でもなんですれ違った? 俺がソヨンと話していたのはあるかもしれないけれど、明日海が俺に気づかないはずがないし、俺が見つからなかったら電話でもかかってくるだろう。でも、俺のスマホは不在着信も未読メッセージもない。どういうことだろう。  なにがあったのかはわからない。でも、ホテルに行けば絶対に会える。まだ着いていなくたって、いずれホテルには行くのだから。

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