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未来を探す歩幅5

 新村を後にして梨大へと向かう。女子大だけど、付属の語学堂は男性もいるらしい。それでもメインとなる大学生は全て女性なわけだから、街も女性好みになるだろう。女性が主流となる街に行くのは、男として少し気恥ずかしいけれど、遊びに行くわけじゃない。お店の店舗候補地を下見に行くんだ。いわば仕事だ。 「イジュンは行ったことあるんだろう?」 「数回ね。大学生の頃付き合っていた彼女に連れられて行った。食事とショッピング。お店がどこも女性向けで可愛い作りなんだよ。カフェなんかも新村よりも可愛らしかったりお洒落だったりするんだ。女性には楽しいだろうけど、男はちょっと目立つ」 「そうなんだ。まぁクレープって女性が好きなものだから女性がメインの街にはいいのかもしれないね。甘いのが好きな男性は切り捨てることになっちゃうけど」 「まぁ、とにかく行ってみよう」  新村から歩くこと10分ちょっと。ほんとに近い。だけど面白かったのが、街並みが梨大に近づけば近づくほど華やかになっていってることだった。色で言えばグラデーション。そして着いた梨大は女子大の街だけあって、服屋も靴屋も全て女性向けばかり。アクセサリーショップやコスメ店もあって、女性には楽しいだろうなと思った。そして表通りのカフェを外から覗いて見ると、やはりお客さんは女性ばかり。語学堂の男性は肩身が狭いのではないか。それか語学堂も結局、男性は少ないのかもしれない。何ヶ月かを過ごすのに、やはり女子大に通うのはキツいのかもしれない。 「ね? 女性向けの街でしょう?」 「うん。新村よりも可愛くてお洒落だね」 「そう。だからここにお店を開くなら、とことん可愛くお洒落にしないと埋もれちゃう」 「そうだね。路地裏も歩いてみたい」  路地裏に行けばお店も雰囲気が変わるかと思ったけれど、カフェもレストランも表通りと変わらず可愛くてお洒落だった。 「路地裏も同じだね。でも、飲食店は路地裏に集まってるような感じだね」 「そうだね。表通りにもカフェはあるけど、少ないね。ショップの方が多い感じだ」 「新村から梨大にくる子もいるよね?」 「いるね。少なくとも俺の付き合ってた子は来てたから」 「そしたら、あえて表通りに出さないで、新村からこっちにくる路地にオープンするのもありかもね」 「そうか。そうしたらどちらの大学の子も狙えるか」 「うん。男性はごめんなさいになっちゃうけど」 「それだよなー。でも、クレープって元々可愛い食べ物だから、食べるのは基本女性だよね」  甘いのが好きな男性もいるけれど、クレープという食べ物自体が女性向けの食べ物な気がする。それが証拠に、日本でもクレープ屋に並んでいる男は基本、彼女と並んでいる。男だけで並んでいるのは少ない。浅草でクレープを買ったときも男だけで並んでいるのは俺だけだった。だから、男を切り捨ててもいいのかもしれない。とにかく可愛くして女性受けすることに徹底しても新村から来る女の子を呼び込めるのなら、それほどダメージにはならないはずだ。 「ここって観光客来るのかな?」 「どうだろう? パッと見た感じ、観光客は少しはいるみたいだね。語学堂の子とは少し雰囲気が違う。|サジュカフェ《占い》もあるから、旅行客も来るんじゃないかな」 「新村は観光客いる?」 「いるのはいる。でも、ここよりは少し少ないかもしれない」  新村は男性を取り込めるけれど、観光客はあまり取り込めないか。その点、梨大は男性を切り捨てるけれど大学生の子はもちろん、観光客も取り込める。お店としては梨大の方がいいのかもしれない。   「そうしたら新村より、ここの方がいいかもしれないね。どこかカフェでも入って話そう」 「それはいいけど、ここだと男2人は浮くと思うよ。あ、明日海なら大丈夫か」 「黙れ! 喋ったら声で男だってわかるだろ」 「ごめん。ごめん。ちょっとふざけただけ。じゃあ|汝矣島《よいど》へ行こう」 「よいど?」 「そう。韓国のウォール街。だけど、遊覧船乗り場があるんだ。今日は1日お店のことで歩いたから、少しは観光しよう。綺麗だって言うよ。俺も乗ったことはないけど」 「あ、そう言えば遊覧船載ってたかもしれない」  そうだ。そう言えば遊覧船が綺麗だって載った。お店のことで頭いっぱいで忘れてた。 「今日はお店のことはここまでにして、あとは観光しよう」 「うん。ありがとう。あとは明日話しを纏めよう」  そう言って俺たちは梨大を後にして、汝矣島へと向かった。

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