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プロローグ〜残影〜

   秋の夕暮れ  黄金色の陽が入りこむリビング。  二人の男は眠っているようだった。  兄とその親友。  兄はソファーで仰向けに寝転んで目を閉じている。そして、その親友はソファーの前で膝を折り、兄の胸に顔を(うず)めている。彼は兄の手に自分の手を重ね合わせていた。  指を絡めて。  愛おしげに。  大事なものを離すまいと。  ――僕にはそう見えた。    誰もいないリビング。  それでも夕暮れ時には否応なしに思い浮かんでくる。  美しく何処か哀しい光景だった。      

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