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第23話 一週間
その日の夜、カナタは僕に触れてこなかった。
僕と一緒に寝るのは変わらないが、何もしてこない。
明日も明後日も学校があるからだろうか、それとも違う理由があるのか。
あまりの別人ぶりの僕は内心振り回されていた。
いやカナタは普段と変わらないことをしているだけだ。
朝食の用意をし、帰ってきた学校の話をして夕食を食べる。そんな当たり前の日常を過ごしていた。
「進路なんだけどさ、先生にもハンター止められたんだよな」
夕食の席で、カナタは不満そうに告げた。
「それはそうだろうな」
「そうなんだよなー。来週火曜日から期末試験だから、帰り早いよ。昼メシは勝手に食うから。あと三者面談の日程なんだけど――」
なんていう、いつもと変わらない会話を交わす。
そして夜には一緒に寝るだけだ。抱きつきもしてこなければ、触れもしない。
カナタは夜のことを口にしないし、だから僕も触れない。
表面上、何も変わらない時間が流れていた。
その週末、六月二十九日金曜日。
仕事からの帰り道、人気のない夕暮れの町を歩いていると、目の前に立ちふさがる男たちがいた。
二十歳は超えているであろう、異形の青年が二人、僕を不思議なものをみる目で見つめている。
「こいつか?」
「ええ、間違いないですよ。絶滅危惧種の旧人類」
白髪の男の問いに、綺麗な顔をした黒髪の男が妖艶な笑みを浮かべて答える。
ああ、そういうことか。
どうやら彼らはどこかで僕の噂を聞きつけたらしい。
こんな場面は一年に一度は必ずあった。
相手がひとりならまだ逃げられるだろうけれど、背後にも立たれているようで逃げ場がない。
「本当に人間なのか……?」
不審げに白髪の男がつぶやく。
「ええ。よく見れば異形とは違いますよ。耳も、姿形も整いすぎてる」
白髪の男の言う通り、それが異形と僕の決定的な違いだった。
背後から気配が近づき、腕を掴まれる。
「ヤればわかるでしょ? そんなの」
僕の腕をつかんだ異形は。笑いを含んだ声で言った。
夕暮れの中、人など来ないであろう廃工場に僕は連れ込まれ、乱暴に服を脱がされる。
抵抗するつもりなど毛頭ないが、男たちは僕を後ろ手に縛りあげた。
後ろから貫かれ、僕の口の中にもペニスが出し入れされる。
仕事帰りであるから、僕のそこは難なく男たちのペニスを受け入れた。
「慣れてる感じするけど……中キツっ」
うっとりとした声が背中に降ってくる。
「高級娼夫に旧人類がいる、と聞いたことありますから、もしかしたら彼なのかもしれませんね。舌使いも上手いし」
僕の口の中を蹂躙する黒髪の男が言い、奥までペニスをねじ込んでくる。
息苦しさに涙がでてくるが、男たちがそんな事、気にとめるわけがなかった。
響く水音に僕の諦めの想いがどんどん大きくなっていく。
「へえ、じゃあ……二本、入るんじゃねえの」
面白そうに言われた言葉に、僕の背筋が凍る。
たとえ傷ついたとしてもどうせ治るが、心は確実に壊れていくのに。
そんなこと知りもしない異形たちは僕の身体を蹂躙し続けた。
どれほどの時間、陵辱が続いただろうか。
精液まみれにされて打ち捨てられた僕は、ゆっくりと身体を起こす。
工場にはすでに誰もいない。
縛られた痕が消え始めている手首を見つめて、僕は息をついた。
「畜生……」
そんな呟きは、静けさの中に虚しく消えていった。
ふらふらと歩き、どうにかでた水で軽く身体を洗い、僕は日が暮れた町を歩きなんとか家にたどり着く。
できればカナタと鉢合わせたくなかったが、そんな事はもちろん不可能だった。
玄関ドアを開くなり、カナタが部屋から出てくる。
「おかえり、音耶。帰り遅いから心ぱ……」
そこで言葉が途切れたことで、カナタが察したことに気がついてしまう。
「ただいま……シャワー浴びる」
それだけ告げて風呂場へ向かおうとする僕に、カナタの哀しげな声がかかった。
「……レイプ、されたの?」
できればカナタにそんなこと、気が付かれたくもないし触れても欲しくない。
だから僕は何も答えず廊下を行こうとすると、カナタが僕の腕を掴んだ。
「精液の匂いがすごい。いつもこんな匂いしないのに」
やはり匂いで気が付かれるか。だから顔を合わせたくなかったのに。
そんな、必死な様子のカナタの方をゆっくりと振り返り、僕は淡々と告げた。
「大丈夫だから、シャワー、浴びさせて」
「音耶……」
カナタの手の力がすっと抜け、僕は彼の手を払い風呂場へと入っていった。
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