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第25話 将来

 その日から、僕らは時々セックスをするようになった。  カナタに求められたり、僕から求めたり。  カナタは不安を埋めるように。僕は、そんなカナタに応えるように身体を開いて受け入れた。  そんな状況でもカナタは昼になれば普段と変わらない年頃の少年になり、僕は保護者の顔を持ち続けた。   「音耶……大好き」  繰り返されるカナタから僕に向けられる言葉。  その言葉を僕は素直に喜んでいいのか、受け入れていいのかわからないまま時間が過ぎていく。  僕はカナタよりも長く生きるし……これ以上歳をとることもできない。  けれどカナタは違う。  カナタは成長し、歳をとりおいていく。  僕を置き去りにして。  そのことがわかっているから、好き、と繰り返されるたびに僕の心にひびが入るような気がした。  そして迎えた十二月。  学校から帰ってきたカナタは、笑顔で僕に封筒を出してきた。 「大学推薦、合格したよ」 「おめでとう、カナタ」  内心ほっとして、僕は笑顔で告げる。  するとカナタは誇らしげな顔になり、僕に封筒を差し出した。 「これ、入学案内。でもちょっと悩んでるんだよね」  と言い、彼は苦笑を浮かべる。 「カナタ」  思わず咎めるような声がでてしまい、一瞬僕は自己嫌悪に陥ってしまう。  だけどカナタは気にする様子もなく、封筒から書類を出しながら言った。 「ハンター試験の合格発表ももうすぐでしょ? そしたらそっちの研修もあるわけだよ。俺はハンターになりたいし……」 「ハンター研修は仕事しながらでも通えるようになってるんだから、学校に通いながらでも行けるだろう」  ハンターに合格したら即現場に行けるわけじゃない。  ハンターには武器の携帯が認められているため、その武器の扱いや法律関係、海物の生態について学ぶことになる。  その講習自体は車の免許みたいに自分でカリキュラムを組み、実地と座学を受ける形になるので、急がなくてはいけないわけじゃない。  それにハンター試験合格から一年の間に講習を受ければいいだけなので、学校や仕事をしながら通う者も多い。  その講習を終えると晴れてハンター免許が交付される仕組みだ。  僕の言葉に、カナタは不満げな顔で僕を見つめる。 「でも……その間音耶はどうするの? 来年からハンターの仕事、再開するんでしょ? ひとりで仕事するの?」 「カナタが気にすることじゃないよ。君は自分の将来のことを考えるんだ」 「だから俺は音耶と仕事したいの」  この話になるといつも平行線になってしまう。  僕はずっとひとりでハンターの仕事をしてきたから、べつに大丈夫なのに。  そもそも僕は死ねない。いくら怪我をしても大丈夫なのだから。  けれどそんな事実を伏せ、僕はカナタに強い口調で続けた。 「僕は、カナタに大学通ってほしいよ。べつに、大学の勉強、興味がないわけじゃないだろう?」  そう問いかけると、しぶしぶ、という感じでカナタは頷く。 「まあ……そうだけど……」  カナタが合格した学科は機械工学だ。  どの学科にするか話した時、本人が言いだした。 「資源不足のなかでも人ってさ、環境に適応して色んな機械作り出してるじゃん? ソーラーカーとかも町の工場によって性能違ったりして。そういうのかっこいいなあって思うんだよね」  それで学科を決めたわけだし、できればそのまま通ってほしいと思う。 「勉強して無駄になることはないよ。機械いじれるなら、ハンターが使う機械、壊れても自分で直したり、自分で作ることもできるんだから」  そう僕が告げると、カナタの表情がパッと明るくなった。 「そっか、そうだね。そうしらた俺、音耶の役にずっとなれるかな?」  無垢な笑顔を浮かべるカナタを見ているとわずかに胸が痛む。  どうもこの子は、僕を基準に物事を決めようとする傾向がある。  それではよくないと思うけれど、いったいどうやって修正したらいいのか。僕にはわからなかった。 「僕の役に……そうだね。それもあるし、きっとカナタの人生の役にも立つから」  必死に考えて想いを紡ぐと、カナタは頷き言った。 「わかった。大学通うから。その代わり、ハンターもやらせてね」  必死な様子で言われ、僕は諦めに似た気持ちで頷く。 「合格したらね」  僕が答えると、カナタは笑顔で頷き、両手を上にあげる。  その背中には、カナタの感情が昂った時に現れる、黒い翼が見えていた。

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