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第20話

「……え?」 「今のままじゃダメだ。  お前には、まだ自分の未来を作る時間がある。  それを全部投げ出して俺の隣に来ても、  きっと後で苦しくなる」 「……でも」 「“でも”は言うな。  俺もお前が好きだよ。  だけど、お前がちゃんと前に進んでから、  その手を取らせてくれ」  ——  彩芽の目から、  ぽろりと涙がこぼれた。 「……卒業したら、本当に?」 「ああ」 「俺のこと、待ってくれる?」 「待つ。何年でも」  その言葉に、  彼の顔がふっと緩んだ。  泣き笑いのような顔。  まっすぐな心だけがそこにあった。  —— 「……約束、ですよ」 「約束だ」  差し出された指に、自分の指を絡める。  その瞬間、  どちらの指先も微かに震えていた。 「……頑張ります、総さん」 「頑張れ。  お前の言葉で、お前の人生を描け」  彩芽は静かにうなずき、  小さな笑みを浮かべた。  その笑顔が、  曇り空の向こうで光って見えた。  

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