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短編
「……父上、今、何とおっしゃいましたか?」
「お前の仕出かした事は、全て私の耳に入った。我が家の恥さらしめ……お前は勘当だ。さっさと荷物を纏めて、どこへなりとも行くが良い」
「何かの間違いでは? 私は、この家の跡取りとして真面目に……」
「あんな事を仕出かしておきながら、跡取りだと!? 跡取りは、お前の弟に決めた。……私に斬られる前に、立ち去れ!!」
厳格で、真面目。
間違いを許さない父が、怒りに顔を赤くして吠える。
私は、父の隣でおろおろとしたまま、仲裁も出来ずに結局黙ったままの母を見た。
母なら真実を理解しているだろうに私を庇う事もなく、可愛がっている弟をぎゅう、と抱き締めて嫌な現実から目を背けようとしている。
そして弟は、窮地に立たされた私を見ながら、声こそ上げないものの、笑いが止まらない様子だった。
父に事情を説明しようとして──やめた。
父は、私を信じなかったのだ。
なんだか急に、私の中の熱が冷めていく。
今まで頑張ってきた事は何だったのだろう。
要領が良く、お調子者で誰からも好かれやすい弟が、家の外で好き勝手する度、影に日向に動きまわって父の耳に入らないようにしたのも。
跡取りとして羽目を外した行動を一切取らず、父が望む通りの成績や評価を受けるべく、凡人であるところを必死で勉強して、努力をして得てきた事も。
全て、こんな結末を迎える為だったのだろうか?
領主の息子だと言って街の娘達と散々楽しみ、果てには何人も孕ませたのは、私ではない。
私がしたのは、私の名を騙ってそんな事を仕出かした弟の変わりに、謝罪をして慰謝料を払い、それを父に内緒で処理した事だ。
私の名義の口座から大金が流れている事が決め手となり、父の中で娘達を孕ませたのは私、という事で決着がついたらしい。
私が代わりに慰謝料を支払ったのが悪かったのだろうか?
弟は私が問い詰めればだらだらと言い訳ばかりして面倒だと言い切り、娘達の訴えを一切聞こうともしなかった。
父は、同族嫌悪とでも言うべきなのか、私の事は跡取りとして認めてはいたものの、好きではなかった。
父を笑わせ、仕方ないなぁと思わせる甘え上手な弟が好きだった。
私は私なりのやり方で父に好かれ様とはしたが、父と同じで真面目しか取り柄がなく、殆んど笑う事のない私を父が好きになる事はなかった。
弟は、日々を面白おかしく生きる、というモットーの下に生きている。
恐らくお金と女と酒が途切れなければ、我が家が潰れようが気にしないであろう。
「なんだ、その目は。言う事がないのなら、さっさと出ていけ」
愚かだ、と思う。
父も、母も、弟も、そして自分も。
「わかりました」
私が守るべき、家族はもういない。
それは、なんと──自由な事なんだ、と思った。
***
「おい、お前一緒にどうだ?」
「私は一人で飲みたいんだ、他を当たってくれ」
私が断ると、相手はチッと舌打ちをして他の席にいく。
人生で初めて足を踏み入れた酒場で飲んでいると、やたら男達に声を掛けられた。
外観がこざっぱりしていて質が悪くなさそうだからこの店に入ってみたのに、何故こうも話しかけられるんだか理解出来ずに首をひねる。
こういう話は弟に聞けば一発でわかるのだろうな、と考えて頭を振った。
今日は、私の新しい門出の日だ。
とことん酔い潰れるまで、飲んでみよう。
酒には飲まれるな、という父の言葉通りに、客にすすめられた酒以外はまともに飲んだ事すらなかったのだ。
勘当され、明日からは働き口を探さなければならない身の上。
今日だけはそれを酔いで流して、また日が変わったら、友人を訪ねてみてみよう。
良くも悪くも友人達が多い弟と比べ、面白味のない私は友人と呼べる友人は非常に少ない。
たった一人、私が無条件で頼れる幼なじみがいるにはいるが、彼が結婚してからは奥さんに悪いだろうと、此方からのコンタクトは控えている。
持ち前の真面目さでアカデミーにいた頃に恩を売っておいた旧友達がいるにはいるから、そちらを頼ろうと考えた。
「おい、お前はいくらだ?」
「……は?」
良い気分で飲んでいたのに、また変な男に声を掛けられた。
いくら? 何だ? 雇ってくれる……訳ないよな。
私の事情を、目の前の男が知る筈もない。
「私は売り物ではない。ただ、雇ってくれるなら、明日また話を聞きに行こう」
男は、厳つい顔をきょとんとしたさせた後、テーブルを叩いて大笑いした。
「そうか、そうか。じゃあ、明日俺に雇って貰いたければ、ここに連絡寄越せよ」
何やら連絡先を渡され、戸惑いながらも曖昧に頷く。
「お前みたいな可愛い子ちゃんは、ここに長居はしねぇ方が良いぞ? とって食われても知らねぇかんな」
よく分からないが、私を弱い女と同等の扱い……つまり、馬鹿にしている事だけは伝わり、イラっとした。
普段より、怒りの沸点がだいぶ低い。
恐らくかなり酒が回っているのだろうと、自分を分析する。
「忠告、わざわざどうも」
それだけ言って、再び酒を呷る。
そして、その酒を浴びる様に飲み続け……いつしか意識は途切れた。
***
「うぅ……」
頭が、痛い。
吐き気もする、と思い、無意識にトイレか洗面器を探す。
そして、気付いた。
──ここは、何処だ?
眉間にシワを寄せながら、そっと片目を薄く開ける。
しかし、薄暗い場所に寝ていたようで、目を開けても余り情報が入って来なかった。
仕方なく、吐き気を耐えながら上半身を起こす。
「……なんだ? 何処だ、ここ……!?」
私がいる場所は、洗面器が一つだけついた、いわば牢屋みたいなところだった。
急激に酔いが冷め、辺りを見回す。
レンガ造りの小さな部屋に一人で寝かされていたらしい。
ベッドすらない部屋。
そして……首には首輪。
それは、長い鎖で繋がられており、牢屋の柵の間を通って見えない先まで繋がっている。
「なんの冗談だ……?」
そして着ていた筈の服も剥ぎ取られ、持っていた筈のリュックも手元から消えている。
この状況は、何故起こったのか。
怒りと羞恥と後悔と、その他諸々の感情はひとまずおいて、極めて冷静になろうと努めた。
昨日の飲み屋から、記憶がない。
昔、幼なじみが入っていくのを見掛けた飲み屋だったから安全だと思い込んでいたが、全く安全ではなかったらしい。
素っ裸で首輪で繋がられるなんて、考えられる事はただ一つだ。
──人身売買。
とはいえ、この国では奴隷制度が見直され、五十年以上前に法律で人身売買は禁止されている。
貧困時代が続いた当時は、子供を奴隷商に売る親は少なくなかった。
男は、まともな食事を与えられないまま昼夜問わず力仕事をやらされたり、貴族から暴力を振るわれて散々身体をいたぶられたり、とにかく悲惨な末路を辿る事が多かったと聞く。
当然、これは違法な訳で……ぶるりと身を震わせたところへ、牢屋の外からガシャンガシャン、と金属音が響いた。
ギイイ、と音がして牢屋の柵の外に光が漏れる。
思わず柵の近くに寄ろうとしたが、今の自分の姿を思い出して思い直し、牢屋の隅に丸まって顔が見えないように縮こまった。
ずる、ずる、と片足を引きずりながら歩く足音と、カツン、カツンと響く靴音。
その音を聞くだけでも、自信家で揺るぎない人柄が伺えそうだ。
一人だけそんな靴音をさせる人物を知っていたが、こんな場所にあいつがいる訳がない。
そもそも、こんな場所にいるところを知り合いに見られる事自体が恥で、むしろ顔見知りがいない方がずっと良い。
──そう、思った私を、絶望が襲う。
二つの靴音は、私の牢屋の前で止まった。
「昨日仕入れた上物 はこいつでさぁ……そりゃもう、綺麗な顔してますぜ。それにしても、情報が早いですなぁ。これからたっぷり調教してから、競売にかけようとしてま」
ゴスッ、と鈍い音がして、恐らく人間が倒れる音。
そして、懐かしい声が耳に入ってきた。
「その必要はない。……おい、アラン。こんなところで何してんだ、さっさとここから出るぞ」
私は弾かれたように顔をあげる。
「ギャスパー……なんで、ここに……」
「お前が捕まったって情報が入ったからな。よりによってあの飲み屋に入るなんて、本っ当~に何も知らないボンボンだよなぁ、お前。俺がお前を買ってやったから、安心してこきつかわれろ」
そこには、懐かしい幼なじみのギャスパーが、相も変わらず偉そうに腕組みをして、立っていた。
***
ギャスパーに連れて行かれた屋敷の、やたら豪華な部屋に通され首を傾げる。
まるで主人の部屋なのではないかと錯覚しそうになる客間に通してくれたのは、まぁ有り難いと感謝しよう。
しかし、何故こんな部屋に通しておいてくれながら、首輪も外してくれないわ、ギャスパーが羽織っていたコート一枚のまま、私を素っ裸で放置しているのかがわからない。
ただ、商売も繁盛していて、かなり忙しいギャスパーの事だ。
一応買われた身らしいし、自分から服を寄越せと言うのも憚られる。
そのうち思い出してくれるだろう、と考えた。
それにしても、首輪付きの素っ裸で牢屋に入れられているのを知り合いに見られるなんて、拷問に近い。
ギャスパーが私を買ってくれたのなら、我が身一つしかないが、どんな仕事を言われても引き受けよう……ただし、人身売買されかかっていた事だけは、内緒にしてもらおう。
部屋に通された時、案内してくれた可愛いメイドの子が「お風呂は自由にお使い下さい。旦那様からの伝言です」と教えてくれた。
ありがとうと御礼を言いながら、実家を追い出された事で良い事の一つに、恋愛や結婚が自由に出来るようになった事だな、と思う。
こんな可愛い娘 と、いつか、恋愛して、相思相愛になって、キスとかして──妄想が膨らんでしまいそうで、それ以上は自粛する。
とりあえずやる事がなくて暇だし、昨日実家を出てから入浴はしておらず、裸で床に寝ていたのだから汚れているだろう。
私は遠慮なく風呂を使わせて貰った。
その日の夜、ギャスパーが私に宛がわれた部屋を訪ねてきた。
「これからの為に、さっさと仕事をしてきた」
というギャスパーの顔には疲労の色が強く出ている。
ギャスパーの持ってきた酒を交わしながら、私達は近況を語り合う。
奥さんとは上手くいっていると思っていたのに別居中で、養子を跡取りの子供として引き取り乳母が育てているらしい。
「ギャスパー、私が勘当された事は知ってるか?」
恥を忍んで聞くと、「勿論」と答えが返ってくる。
「悪いが私は、今は無一文に近いんだ。助けてくれた返済金だが、働いて身体で返すしか方法がない。だから遠慮なく私に仕事を振ってくれ」
真面目に言うと、ギャスパーは笑って短い髪をかきあげる。
「ああ、お前にしか出来ない仕事を、してもらうつもりだ。安心して奉仕してくれ」
私は、ギャスパーに能力を買われたのだと思って、喜んだ。
そして、酔いの回った頭でこう答えた。
「喜んで、君の力になれる様に頑張るよ。私は君のもので、君の為のこの身体だ」
「そうか。じゃあ、早速仕事だ、アラン」
彫りの深いギャスパーが、ニヤリと笑う。
酒が入っているからか、男の癖にやたら色っぽいな、なんて思っていたら。
「では早速、俺のコートを返して貰おうか。脱げよ、アラン」
瞳に、獲物を捕らえる時の猛禽類の鋭さを伴わせ、ギャスパーは私に命令した。
***
「や、めろ……っっ! 何考えてっ……はぅ、くっ……!」
自分がされている事が信じられなかった。
何故、ギャスパーはこんな事をするのだろうか、私はいつの間にか彼に恨みでも買っていたのだろうかと戸惑う。
「……綺麗だ、アラン。こんな日が来るとは思わなかった……本当に、駄目モトでやつをけしかけた甲斐があったな」
ベトベトした液体を、下半身に塗られて気持ち悪い。
ギャスパーは私の後ろから覆い被さり、勃起した私の分身を扱きながら、お尻の穴にぬるぬるした指を出し入れしていた。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……!!
「な、んでこんな事する……っ、んだ!!」
悔しくて、涙が滲む。
「……お前は、本当にお綺麗だな。汚いものなんか知らない、無垢なままだ。いつだって真面目で、一生懸命で、上手くいかないで空回って、素直に悔しがって」
「ひぃっ……」
いきり勃ち、今にも発射しそうな欲望の根元をぎゅむ、と掴まれた痛さで目がチカチカする。
「俺がお前に抱いていた邪な想いにも全く気付かないで、勝手に俺が恋愛結婚したと思い込んで、余計な気を回して距離を取って」
ギャスパーの指が後孔に出し入れされるたび、にちゃにちゃ、といやらしい音が響く。
なんで男の私がこんな目にあっているんだか、皆目見当もつかない。
パニックに陥っている時に指が抜かれ安堵した瞬間、圧迫感を伴って再度指が挿入された。
どうやら、指を増やされたらしい。
「何度、お前を押し倒してこの白い尻 に俺のチンポを捩じ込みたいと考えたかわからない。離れていても、考えるのはお前を犯す事だけだったよ、アラン」
「も、やめ……っ、ゆ、許して……っっ」
私が懇願しても、ギャスパーは私の耳に舌先をねじ入れる。
「……駄目だよ、アラン。そんな事言ったら、逆効果だ……」
くちゅりくちゅりと音で犯す様に耳をなぶり、耳たぶを食 まれる。
「お前が懇願して、欲しがる様になるまで貪りつくしたくなる……俺は、お前が好きなんだよ、アラン」
最後、普段自信に満ち溢れたギャスパーが、泣くように呟くものだから。
やっと、私はギャスパーが同性愛者だった事を、理解した。
「いやいや、これを君に返したら……脱いだら私は素っ裸なんだよギャスパー」
先程、ギャスパーにコートの返却を求められた私は、諦めて彼にこう返した。
「わかってる。お前の裸が見たいんだよ」
「……」
ちょっと待ってくれ、と思う。
幼なじみとは言え、風呂に入るでもなしに、男に自分の裸を見せる趣味は流石にない。
「……わかった、私だけではなく、君も脱ぐなら」
断るだろうと思ったのだ。
ふざけて悪かった、と謝罪してくれるのを期待した。
「なんだ、そんな事か。いつでもいいぞ」
「えっ? ……ちょっと待っ……」
ギャスパーはそう言って、私の制止も聞かずに自ら服を脱ぐ。
下ばきすら脱ぎ、私の逸物より大きなペニスは天を向いていた。
「ほら、早く」
「あ、あぁ……」
何故ペニスが勃起している上に先走りまでしているのか不思議に思いながら、あとに引けなくなった私は、ソロソロとギャスパーから借りていたコートを脱いだ。
「……想像通りだ。綺麗な身体だな」
ギャスパーにうっとりと言われて首を捻る。
ギャスパーの方が、筋肉がついていてよっぽど男らしい体型だ。
もしかして、彼は彼で、本当はひょろりとした体型が好みで、そうなりたかったのかと思う。
「お前が言ったんだ、アラン。お前は俺のもので、俺の為の身体だと」
確かに、私がギャスパーの分の仕事もこなすつもりで、そう言った。
毎日忙しい彼が、少しでも楽になるならと。
「アラン、ベッドにうつ伏せて」
「? こうかな?」
「そう。そのまま」
ガシャン、ガシャン、金属音がして慌てて視線を手元に下げると。
「……手錠?」
更に、ガシャン、ガシャンと音がする。
下を見れば、足枷までされていた。
体勢を変えたりは出来る鎖の長さがあるが、ベッドからは降りられない。
「……ギャスパー?」
「俺が求める度に、その身体を差し出せ。……それが、お前の仕事だ」
ギャスパーはそう言って、意味を理解出来ない私に「初めてだろうからな、ローションはたっぷりあるから安心しろ」と言い、ありったけの液体を私のペニスとお尻に塗りこみはじめた。
***
それから、どれだけ身体を弄られただろう。
私のペニスがギャスパーの手淫でイってしまったのは、五回。
その間、彼がイく事はなく、ひたすらお尻の穴をほじられた。
二本の指は、三本になり、先程は四本入れられた。
途中途中で入り口が広がるように何かの器具で散々拡張され、ついにギャスパーの肉棒が捩じ込まれた。
「も、無理、ぃ……裂け、るよ……っっ」
「ゆっくりやるから、大丈夫だ。さっきは四本の指を咥え込んでたからな、力を抜いて」
「……痛いぃ……っ!」
「大丈夫、今、一番直径のある亀頭がすっぽり入ったからな。……アランのケツまんこ、あたたかくて、このままずっとこうしてたいな」
冗談ではない。
こちらは、明らかな異物感をどうしてよいのかわからず、ただひたすら耐えているのだ。
「アラン、選べよ。ゆっくりじっくり掘られて優しく合体するのと、一気に貫かれて激しく合体するのと、どっちが良い?」
「……どっちも、嫌だ……抜いて、くれ……」
「んー? 抜いて下さい、だろ? お前は俺に買われたんだよ、わかってる?」
ギャスパーの台詞に、心が凍る。
「……抜いて、下さ……ひぃっ!!」
思い切り、ギャスパーのペニスが突っ込まれた。
ローションが潤滑剤として正しく機能したらしく、ギャスパーのペニスの根元まで、最奥までずっぷりと。
「アランがお願いするの遅いから、つい俺が決めちゃったよ」
「いや、やめ……っっ抜いて! 抜いて下さい!!」
「はは、アラン最高だよ。……抜いて下さいって台詞、聞くと埋めたくなっちゃうんだよなー、不思議だな」
そう言いながら、ギャスパーは腰を前後に激しく振る。
ぱちゅ! ぱちゅ! ばちゅん!! ばちゅん!!
痛みが引かず、内臓を抉られる様な感覚に悲鳴をあげた。
手錠と足枷が、ガチャガチャと無情な音をたてた。
「ひぃ!! ん、ふぅ、はぁ、あああ!!」
「アランのケツまんこ、すげー気持ちい……」
「ゃあ! 抜い……ぃああ!!」
腰を振りながら、ギャスパーは私の肉棒を擦り出した。
「いやぁ!! ゃめ、やめろぉおお!!」
「やめろ、と言われると、余計酷くしたくなるなぁ」
「ぁあ、ゆ、ゆっくり、して、下さい……」
痛みで、涙がパタパタ、とシーツに溢れる。
「素直なアランも、好きだ。……どんなアランでも、好きだ。いつか、俺を見たら欲情するような淫乱になっても、愛してるからな」
ギャスパーの告白が、脳を揺さぶる。
そのままギャスパーは、日が明けるまで……明けてからも、私を犯し続け。
白濁液まみれになった私達は、翌日風呂でそれを洗い流しながらも、また繋がった。
***
それから、一年後。
「アラン、ただいま」
「お帰り、ギャスパー」
帰ってきた最愛の相方に、キスをおくる。
それは直ぐに、深くなってお返しがきた。
「ちょ、ちょっと待って……先に、ギャスパーがいなかった時の決算報告をしてから……」
私が慌てて止めても、その手を握りしめて、ギャスパーはこちらを熱のこもった瞳で見据えた。
「それは後でいい。お前に任せているから、問題ない。それよりも、三日も空けてた主人に言う事はないのか?」
「もぅ……わかったよ」
私は、ギャスパーが喜ぶ様に、恥ずかしい下着を露出させながら後ろ手に自らのアナルを押し広げて、熱をはらんだギャスパーの下半身に擦り付けながら言う。
「……ギャスパーの……ご主人様の、おちんちんが、今すぐ欲しいです……私の、いやらしい、欲張りなお尻に乱暴に突っ込んで、めちゃくちゃに犯して下さい……」
最後、恥ずかしさで尻すぼみになりながら言ったが、それでもご主人様は許してくれた。
「よく言えました」
そう誉めて、私のアナルを塞いでいたアナルボールを、一気に引っ張って下さる。
「あひぃいいい!!」
「なんだ、抜いただけでイったのか」
そう言いながら、そのままペニスを突き入れ、激しく腰を振って下さった。
「ぁん! ぁん!! あぁ、そこ、そこ、気持ち良いですぅ!!」
毎日前立腺を開発され、アナルを可愛がって頂いた私は、ご主人様のペニスでお尻から前立腺をぐりぐりと刺激して頂かないとダメなところまで墜とされた。
「そう言えば、お前の実家が没落したから、俺が領土を奪 っといたけど。少し見に行くか?」
ご主人様にそう言われて、私は首をゆるく横に振った。
「も、もぅ、良いのぉ! ご主人様が、私を可愛がって下さるだけで、幸せぇ!!」
私が獣のように叫べば、ご主人様は鏡越しににこりと微笑みかけて下さる。
「……そうか。俺も、お前が……お前が、俺のもとに墜ちてきてくれて、本当に幸せだ」
そのまま、後ろを向いた私と荒々しいキスを交わす。
ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ! ずちゅ!!
「ぁあん!! イく! イっちゃううう!!」
「一緒に……っ!!」
ご主人様と私は、同時に果てた後、やっと執務室からベッドへと移動し、それからも長く甘い夜を過ごした。
同性の婚姻を認めていないこの国で、私達は結婚が出来る訳ではない。
私の立ち位置は、ギャスパーの愛人だ。
正しく、愛する人。
私は会った事はないが、跡取りである養子にも私の存在は伝えたらしい。
私は一生、理想の結婚は出来ないけれど。
「……アラン、愛してるよ」
「……私も、愛してる」
理想の恋愛は、いつまでも続く。
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