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スピンオフ 音原美弦の受難⑤
5 見られた僕
美弦がぐるぐると布団の中で考えていると、ベッドがぎしりと軋んだ。ん?と鳴の方を見れば、鳴がベッドの布団をはぐって横たわり美弦の横に並んでいる。綺麗な顔がすぐ近くまで迫ってきて美弦はどぎまぎした。
(マジほんとかっこいい‥顔だけはめっちゃいいんだよなあ。音原の遺伝子なんで僕にだけ仕事しないんだろう‥姉ちゃんも母さんも父さんも綺麗系の顔なのに、僕だけこんなぼやぼや顔‥)
そんな考えても仕方のないことを考えている美弦の身体を、鳴のたくましい両腕が包み込んできた。
「美弦」
「へあっ?」
突然の鳴の甘い声に驚いて、変な声が出た。くくっと鳴が喉奥で笑ったのがわかって何となくイラっとする。が、その後すぐに鳴の熱い唇が降ってきてまた驚いた。
「ふ、っ、んんっ、」
(あ、きもちいい‥イケメンはキスもうまくないとだめなのか‥僕無理じゃん‥ていうか僕こんなキス、女子とやるとか無理だよぉ‥)
くちびるをれろりと舌先でたどられるだけでぞくぞくする。舌が咥内に入ってきて上顎をなぞればもっとぞくっとして陰茎に熱が溜まるのを感じた。今日はもう都合五回は射精しているというのに元気なのは、いくら運動が苦手な美弦とは言えまだ十代だからだろうか。
鳴はぐっと膝を美弦の脚の間に割り込ませてきた。鳴の太腿で股間を擦り上げられるとまたかあっと下半身に熱が溜まるのがわかった。
「ちょ、鳴兄、あ、脚‥」
「勃ってんな、美弦」
鳴に指摘され、美弦はかあっと顔を赤くした。改めて指摘されると恥ずかしい。しかも今度はベッドの上だというのも相まってかなり恥ずかしい。
「もっかい、しようぜ」
「えっ、無理!」
こんなに身体中が軋んでるのにもう無理だ。正直今勃起しているちんこだって痛い。多分美弦の一日の許容射精回数(そんなものがあるのかどうかは知らないが)はとっくに超えていると思う。オメガバースのアルファとオメガじゃあるまいし、凡人の美弦のキャパはとっくに容量オーバーだ。
美弦の拒否の声を聞いて、鳴はぐぐっと眉間に皺を寄せ不機嫌な顔になった。そんな顔でもイケている。くそう、イケメンめ。平凡顔は常に人を害さないふんわり笑顔を心がけねばならないというのに。
「何だと、お前」
「え、だって、けほっ、からだ、いたいって、ぐふ、いったよねぼく?」
少し大きい声を出すとまだ喉奥が痛くて咳が出る。咳き込みながら話す美弦を見て、鳴の眉間の皺がなくなった。
「‥‥特にどこが痛いんだ」
「ええ‥‥」
だから全部だって言ったじゃん、と美弦は思ったが、ここは断固拒否の姿勢を貫くためにも断りやすい箇所をしっかりと言うべきだ!と考え直した。
「お、おしり‥」
ぼそぼそと囁くような美弦の小声を聞いて、鳴は少し目を大きく開いた。背中に回した鳴の腕にぐっと力がこもる。
美弦の後頭部に掌を当てて自分の首筋に押しつけた鳴は、小声で囁いた。
「見せろよ、美弦」
‥‥‥見せろ‥?
「え、なにを?」
「お前のアナル」
「うえっ!?」
鳴は上半身を起こし美弦の両足首をひっつかんでぐいっと上にあげた。跳ね飛ばされた布団もなくなって、美弦は真っ裸のまま下半身を鳴の前に晒す形になる。
「や、やだ鳴兄、ひゃっ」
美弦の抗議の声などどこ吹く風で、鳴は自分の膝を美弦の尻の下にいれて乗り上がらせ、足を開いて下半身をじっと凝視した。
「ちんこの陰でアナル見えねえな‥」
そう言うと左手だけで美弦の脚をもって開いたまま、右手でぐっと美弦の尻を持ち上げてから陰嚢の下に手を入れてアナルと会陰が見えるようにした。
「‥あ~‥ちょっと赤くなってんかな‥でも、すっげえひくひくしてるぞ美弦。フチが赤くなってて、エロ‥」
鳴はそう言ってゆっくりと上半身を倒し、ちゅっと美弦のアナルに口づけた。
「ぎゃっ、や、やめてよ、鳴兄、き、汚いからっ」
「さっき俺がきれーに拭いてやったから大丈夫だって」
鳴は全く意に介さない様子で雑な返事をすると、再び美弦のアナルに口づけ、尖らせた舌を穴のナカにねじ込もうとしてくる。
またあの、ぞわぞわとした快楽が下半身に溜まってくるのを感じて、美弦は身を捩った。
「ああっ、もう、だめえ、やめてよぉぉ」
「‥‥」
鳴は返事もせず、美弦の菊孔にぐいぐいと舌を挿し込んでいく。そして中をぐるりと舐めまわすようにして愛撫してきた。
アナル入り口の肉の刺激だけでも感じてしまう美弦は、じわじわとした快感に背中をしならせた。
(ああ、だめ、きもちいくてどうでもよくなっちゃうぅぅ‥)
そんなところを舐められるなんて、新條たちにセーフセックスを説いた立場として情けない。
でも、たまらなくきもちいい。
「あん、あ、だめぇ、イク、イクからぁっ」
その美弦の声を聞いた鳴は、ちゅぽっという音とともに舌を引き抜いてアナルの表面を指でなぞった。いつの間にか鳴の横にはあのローションボトルが置いてあって、それの注ぎ口をアナルにあてがわれる。
ぶちゅうっという、ローションを入れられる音がした。腸内に冷たいローションが注ぎ込まれて思わず声が出た。
「ひゃあっ」
「わり、冷たかったな」
鳴はそう言って大きく広げた美弦の太腿の内側にちゅっとキスをした。普段粘膜が触れるようなことのないところへの刺激に、またぞくっとする。
(‥‥僕‥ちょろくない‥?あれ僕ってビッチ資質ある‥?やだよぉそんなの‥)
鳴はローションボトルに蓋をしてぽいっと放った。そして美弦のアナルに指を挿し込んでぐちょぐちょと抜き差しを始めた。
ぐるりとアナルの内側を回される。それがイイのだとすっかり鳴にバレてしまっているようだ。
「美弦‥これきもちいいだろ」
「あっ、あ、あ、~~っ」
悔しいが本当に自分はちょろいようだ。‥たまらなくきもちいい。喘ぐと喉の奥がガサガサして痛いのだが声を上げずにはいられない。
「う、ゔ~~っ」
「この‥奥‥‥」
じゅぶぶ、と柔いアナルに鳴の指が沈んでいく。鳴の太い節くれだった指が腸内を擦るのでさえきもちいい。鳴は左手で美弦の陰茎をやわやわと緩く擦っている。そうしながら、アナルの中の指を動かし、腹側にくっと曲げた。
「あああああ!」
少し膨らんでいるそのしこりを、鳴の指の腹が強く押し擦る。それだけで視界がちかちかするような強い快楽が脳を直撃する。
「は、は、は、めい、やめ」
「お~ここだよ、美弦、お前の前立腺。ちんこ刺激してやると見つけやすいんだよな‥」
(何でそんなこと知ってるんだよぉぉぉ、あああああ、だめだめだめきもぢい”い”~~~)
はくはくと声も出せずに口を開けたまま悦 がっている美弦の姿に、鳴は満足した様子でにやっと笑った。
「よしよし、ここでメスイキしような美弦」
「んんん~~っ!」
鳴はもう一本、指を増やして二本のゆびで少しふっくらとしているそのしこりを挟むようにしてぐりぐりと擦り上げた。
さっきはじわじわせり上がってくる快感の波を、美弦が追いかけているようだったのに、今度は容赦ない快楽が嵐のように美弦の身体を叩きつけてくる。脳が溶けそうな快楽が途切れなくもたらされ、美弦は喉の痛さも忘れて叫び絶頂した。
「ああ、あ、あ、あ、あ、いいぃぃ~っ、いくいくいくぅ~~!」
びくっびくっと身体が大きく痙攣した後、がくりと力が抜ける。身体全体がふわふわしていてきもちいいのが止まらない。
「ふ、あ、ああ」
「メスイキ、できなかったな~まだちんこに残ってたか」
鳴は不敵にそう言うとふるふると震えて蜜を垂らしている陰茎をぴん、とはじいた。
「んあ~~~!」
それだけで痛みにも似た快楽が脳を灼く。
美弦は意図せずぼろぼろと涙がこぼれているのがわかった。もうイキすぎて辛い。本格的に泣けてきて、鼻水が出てくる。
しゃくり上げながら鳴に訴えた。
「鳴兄、酷いよぉ‥僕、もう無理って言ったのに‥ううう」
また喉ががっさがさになっていて少し話しただけでかなり痛む。こふこふと咳き込んでいると、また水のペットボトルを持ってきて口移しに水を飲ませてくれた。
(ううう‥正直普通にペットボトルからごくごく飲みたいのになあ‥)
美弦はそう思ったが、長年の習い性で鳴のすることには異を唱えられないようにされている。黙って口移しされるまま生ぬるい水を飲んだ。
「‥‥美弦」
「なに?」
鳴はペットボトルをベッドわきに置くと、また美弦の横に寝転がってぎゅっと美弦の身体を抱き込んできた。鳴の広い胸に美弦の小柄な体はすっぽりと包まれてしまう。
鳴は、美弦の耳の横で囁くように話した。
「おまえ、いつもこんな風にケツいじってオナニーしてんの?」
そう訊くとついでのように美弦の耳殻を甘噛みしてくる。先ほどイッたばかりの身体はそんな弱い刺激でもびくびくと反応して、下半身がきゅう、となったような気がした。
(イケメンの上にイケボ‥!くそ~耳から犯されるぅ~)
ぼーっとしている美弦に、少し苛立たし気な鳴の声がかかる。
「おい、美弦答えろよ」
「へっ、いや、あの、ううん今日が初めて‥本当だから!」
あのブツを手に入れて随分悩んだ挙句の決行日がたまたま今日で、さらにたまたま鳴がやってきたなんて、偶然も重なりすぎて怖い。
(いやいや、なんで僕焦ってんだよ、別に鳴兄にアナニー初めてじゃないって思われようが構わないじゃん‥)
美弦がそんなことを考えていると、鳴の大きな手が美弦の頭をぐしゃりと撫でた。
「ん、そっか」
そして美弦の耳のすぐ横にちゅっと音を立ててキスをした。
「もう自分ですんなよ」
「‥‥‥え、なんで?」
なんでオナニーの頻度まで滅多に日本にいない鳴兄に口を出されなくちゃならないんだ。
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