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ロッドウルム編  警戒中

「んー? 畑や別宅にいるよ。敷地内に四つの畑と三つの家があるから。そのどこかにいるでしょ」 「「……」」  お金って、持ってる人は持ってるよな。  可愛斗が服の裾を引っ張ってくる。 「ほとり。宇宙生物ってなんだよ」 「え? あ、そうか……」  信じるかは分からない。でもここまで巻き込んでしまった以上、可愛斗にも説明しておく必要がある。円盤が不時着してきたあたりから話してみよう。 「……」  可愛斗は話を聞いている、というよりも、真剣に話しているほとり可愛いなーという顔だったが、最後まで口を挟まずにいてくれた。  しばしの静寂を経て、 「なんだ。このイケメンヤクザ、人間じゃなかったのか」 「……え」  後ろで見守っていた卿次も驚くほど、可愛斗の反応はあっさりしたものだった。  俺も目をぱちくりさせてしまう。 「おっお前のことだから、もっと弾けたリアクションをすると思ったのに……。熱でもあるのか?」 「ねーよ。こいつが火星人だろうが未確認生物だろうが。俺の預金残高に影響がないならどうでもいい」  きりりとしたキメ顔だ。  頑張ってバイトしている可愛斗にとっては、大事な基準はそこらしい。 「それにこいつどう見てもほとりの味方じゃん。お前に危害加えないなら放置でいいしな」 「可愛斗……」  なんでオメーも俺を中心に世界回してんだよ。  ツッコみたかったが、味方でいてくれるのは心強い。お礼に頭をわしゃわしゃしておこう。 「くすぐってぇって!」  嬉しそうにじゃれてくる大型犬をもっふもふしていると、赤髪が歩いてくる。  俺たちは即座に縮こまった。 「ちょいちょい。もー何もしないって。警戒解いてよ」 「あなたが危険な人だということに変わりないです」 「うっそ! いやあの……コーヒーを飲んでほしいだけなんだよ! 冷めちゃうから。夏でもホットはうまいよ?」  可愛斗はがるるっと唸る。 「ヤバい薬でも入ってんだろ!」 「うーん……。まあ、薬で言うこと聞かせるのは得意技だけどね。足を洗ったよ」 「足を洗った割にマフィアスーツなのは何でですか?」 「俺のスーツに変な名前つけないで。あんまり服装変わってたら、俺と認識できないかなーって気を遣ったんだけど。スーツだと堅苦しいイメージを与えちゃうかな? 着替えてくるよ。はい、ちょっと出て出て。着替えるから」  ボタンを外すも蛇さんは出て行かず。むしろシャツの中に潜り込んでしまった。 「そいつも宇宙生物かよ」 「そうだよー。君は?」 「人間に決まってんだろ! っけんな! 赤毛!」 「名前を聞いたんだよ」  可愛斗と卿次さんが自己紹介しているのを尻目に、ミチの手を握る。 「ルンバさん。ミチの容態はどう?」 『人間で例えるなら、スタンガンで気絶させられたようなものです。ミチ様は電気に弱いので、もうしばらくは眠り続けます』 「そっ、かー……」 「ほーとーりーくん。そのお掃除ロボットも宇宙生物でしょ。どんな生き物なのか教えてよ」

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