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短編
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
秋晴れの爽やかな朝、私が出勤前の挨拶を交わすのは愛する妻──ではなく、同居している弟だ。
弟は、定職に就いていない。
それは、時代的にもあり得る事なのだろうが、将来の稼ぎは大丈夫なのだろうかと兄として心配してしまう。
昔から穏やかで、天使のように可愛らしかった弟は絵を描くことが好きで諍いが苦手だった。しかし、中学の時の転校をきっかけに苛めにあい、引きこもりになってしまったのだ。
以来、弟は高卒程度認定試験は受けて高卒と同等の資格はあるものの、外に出る事はあまりなかった。
しかし、弟はニートという訳ではない。
好きなデジタルイラストを描いたりデジタル漫画を描いて小銭を稼いだりはしている様で、家に生活費を払う余裕はないもののお小遣いをねだる事はなく、自分自身の身の回りを整える程度のお金は稼いでいる様だった。
弟の引きこもりは、部屋の中ではない。
普通に食事は食卓でするし、リビングで寛いだり楽しく会話もしたりする。部屋ではなく家の中に籠ってはいるが、顔を見られる分両親も安心するのか、無理に弟に対して「外に出て働け」とは言わなかった。
昔は天使のようだった弟は、気付けば私の身長を追い越して無駄にデカい図体になった。
声もバリトンボイスになり、恐らく中学時代の苛めっ子達が今の弟を見ても誰もわからないだろうと思われる。
それでも優しく穏やかな笑顔は変わらずで、「治 ちゃん」と懐いて背中から抱き付いてくるのは暑苦しくとも、可愛いものだった。
二歳年上の私が今の職場での入社が決まった時、弟は自分がお祝いしたいと言って、高級レストランでお祝いしてくれた。
ボサボサだった髪や服をすっきりとさせて、家族分の食事代三十万をさらりと支払うイケメン弟の姿に、私よりも両親が感動して涙を流していた。
「すげーカッコいいじゃん。いつもそうしてれば良いのに……誰でもお前に惚れそうだな」
私が誉めれば、弟は照れまくっていたが、私の言う事を聞いて以来身だしなみもしっかりする様になった。
そうしたお祝いや新しいパソコンなどの高額な買い物をしている弟の仕事はそれなりに軌道に乗ったようだが、秘密主義で家族の誰にもペンネームや作品名を教えてくれなかった。
私達家族も、無理に聞き出す事は当然していなかった。
それから四年程経ち、私が長く付き合っていた彼女と別れたタイミングで定年退職を迎えた両親は、自分達の故郷に帰ると言い出した。
「本当は治紀 が結婚式挙げてから帰ろうと思ってたんだけどねー、予定がなくなったからさー」
「……悪かったよ」
彼女が浮気したので、振ったのは俺からだった。
「あんな女に治ちゃんは勿体ないから、良かったよ」
穏やかで人を悪く言わない弟が結構辛辣な事を言うので驚く。
イケメンが表情を消して静かに怒っている姿は、弟なのに何故か怖かった。
両親が故郷に引っ越した後、私と弟も私の職場の近くに引っ越して二人暮らしを始めた。
生活費は私が三分のニを払う代わりに、家事は全て弟がやってくれた。仕事で疲れて帰ると、「マッサージしてあげるよ」なんて言われる快適な生活だ。
そんな、幸せながらも「この生活に慣れたら婚期逃しそうな気がする」毎日を送っていたある日、郵便受けにひとつの封筒が投函されていた。
宛名が、『瀧口様方、瀧 希子様』になっている。
確かにうちは瀧口だが、私は治紀 だし弟は広紀 だ。首を捻って差出人を見ると、聞いた事のない会社の名前。
瀧 希子……?
女性っぽい。
中を勝手に見るのも気が引けるし、どうしたものか。
首を傾げながら帰宅すれば、弟がでっかいワンコの様に駆け寄ってくる。
「治ちゃん、お疲れ様~。夕飯先にする? 風呂も沸いて……」
そう言いながら、私が抱えていた封筒に視線を止めて、広紀はそれを引ったくる様に奪った。
「広紀? それ、宛名が……」
「……中、見た?」
「いや、見てないが、それ宛名が……」
「ごめん、これ俺の。今日は夕飯炊き込みご飯だよ~」
「サンキュ。夕飯先に食べるよ」
「了解」
弟は何事もなかった様に私室に戻り、リビングに戻って夕飯の準備をしてくれた。私もその日は、好物の炊き込みご飯を前にすっかり封筒の事は忘れてしまった。
***
私の仕事はイベント関連会社だ。
感染症で一時期非常に厳しくなった業界だが、一時のネットイベント開催時期を経て、逆にやはり実物を見て触れるイベントの需要が再び高まったかもしれない。
その日は、有名な巨大イベント会場の設備を事前チェックしに行ったのだが、たまたま同人即売会が開催されていた。
私の会社で同人即売会は手掛けた事がないので逆に気になり、お昼休憩の最中にちょろっと見て回る事にした。
入場だけで五百円、他にカタログを購入するなら二千円らしい。
記念に可愛いキャラクターが描かれたカタログを購入し、開いてみる。
分厚い冊子にところ狭しと枡で区切られたイラストが並んでいた。
カタログを見てもよくわからなかったので、ブースの使い方を見学する。
成る程、行列が出来るような人達の場所はしっかり考えられて並んでいる様だ。
ラーメン屋の行列より余程長くて、目眩がする。
「キコ様の新作最高だったよ~」
例に並びながら地べたに座っている女性達を見て、これが当たり前なのだろうかと驚いた。
「神だよ神~。キコ様の作品は攻めと受けが絶対ブレないから、安心してお買い上げできるよね」
「弟と兄の近親サイコー!絶対ショタ描かないのがまた良い!」
ちらりと彼女達に視線を走らせると、全員が同じ薄っぺらい漫画を抱えている。その表紙が見えた時、私は「ん?」と首を捻った。
『弟のエロエロマッサージで悶える兄~乳首がこんなに敏感だなんて~』
『瀧 希子』
……あれ? あの名前、何処かで見た様な……
「キコ様って何歳位なんだろうねー?」
「売り子に任せて本人絶対いないからね。情報皆無なのもまた尊さアップだわ~」
「希子」は「キコ」と読むらしい。
興奮した様子で語り合う彼女達から離れて、私は午後の仕事に向かった。
***
帰宅後、普通に夕飯食べて。風呂入って。
ただ、普段よりはボーッとしていて、弟から何回か「大丈夫? 仕事で何かあった?」と聞かれた気はする。
部屋に入り、パソコンを立ち上げ、『瀧 希子』を検索する。するとそこにはいかがわしい男性同士の恋愛を取り上げた表紙がズラリと並んだ。
『弟に狙われた兄~そこに注射はしないでッ!~』
『弟とのトロトロドライブ~気付けば車内セックス~』
『痴漢にあったと思ったら……よく知る弟の掌でした』
『彼女と別れました、弟に拾われました』
『そんなに無防備に寝てると、弟に襲われるよ?』
どれもが男性の、しかも弟が兄を襲う内容の様だ。
ダウンロードでも購入出来るみたいなので、ひとつ買ってみる。
「……何だ、これ……!!」
赤面しながら、口を押さえる。
兄が、弟のペニスを突っ込まれて、アンアン言わされて、最後は快楽に流される……という話だった。
今日見た女性達は、こんなハードなエロ漫画の話を普通にしていたのか……! と衝撃を受けつつ、気になって他の作品も購入する。
やっている事は同じだが、今度は兄が裸エプロンをしていた。
次の作品は、兄は催眠を掛けられていた。
次の作品は、兄が知らない間に、兄のパンツに弟が精液をぶっかけ、見つかってしまう話。
どの作品も、弟が狂いそうな程に兄を愛しているのが伝わってくる。
触りたいのに触れない葛藤や、自分程兄を愛している人はいないという自負。
兄を誰かに渡してたまるかという独占欲と、一方で兄をがんじがらめにして壊してしまいたいという破壊衝動。
気付けば、読みながら私は自分のペニスを扱いていた。
弟に愛され、犯され、快楽に堕ちる兄に自分を投影させながら、激しくシコった。
三回発射した後、ドアがコンコンとノックされてビクッとする。
……ドアの鍵、閉めてたっけ?
そんな事を考えた瞬間にドアが開いて、私はその答えを知った。
「治ちゃん、今日具合でも……」
部屋の中に足を踏み入れた広紀は、ピタリと止まった。
パソコンデスクには、兄弟が繋がっている漫画。
床に転がるティッシュ。
果てた後の濃厚な匂い。
「……広紀、違くて……」
なんの言い訳も思いつかないまま慌てて口を開けば、広紀は昔と変わらない綺麗な笑顔を私に向ける。
「何が違うの? 一人でオナってたの? いつでも手伝ってあげるのに」
笑顔のまま、弟が私ににじりよる。
ついとパソコンの画面を指差し「……治ちゃん、こういう願望あったの?」と聞いてきた。
「いや、違、」
う、と言う前に、私は広紀にキスされていた。
唇を合わせるやつじゃなくて、舌を絡ませあう、深いキス。
「んん………っ、は、ぁ……ん……」
息が出来ずに苦しくて、椅子から転げ落ちそうになりながら顔を逸らす。
「治ちゃん、ベッドいこ」
「広紀……っ!」
まさかだった。
私をひょいと担ぎ上げ、弟はベッドに移動する。
「違う、やめろ、広紀!」
私は抵抗していたが、弟が私のパジャマをいとも簡単に脱がせていった。
漫画に描かれた弟の様に、その眼はギラギラとしている。
「あっ……!」
あっさりと広紀にペニスを握られ、身体に緊張が走った。
「広紀、ごめん。違うんだ、ごめん……!!」
私は涙を流しながら、兄弟モノの同人漫画をオカズに自慰をしてしまった事を懺悔したが、弟はけろりとして言った。
「なんで謝るの? 僕の作品を見て治ちゃんがヌいてるなんて、ご褒美でしかないんだけど?」
「……僕の作品……?」
「あれっ? もしかして、気付いてなかった? 瀧 希子は僕がBL作品を描く時のペンネーム」
「えっ? そうだったのか?」
それを知って、作品を読んだ私は理解した。
弟の兄に対する劣情、想いを伝えられない辛さ、身体が切り裂かれそうな慟哭。
「……広紀……」
「そんな顔、治ちゃんはしないで良いのに」
全然、気がつかなかった。
もしかして、漫画に描かれていたように……私のベッドの匂いを嗅いで弟は自慰をしたのだろうか?
洗濯の最中に私が脱いだ下着の匂いを嗅いだのだろうか?
マッサージの最中に、私の全身を愛撫する妄想をしたのだろうか?
誕生日ケーキの生クリームを身体につけて、舐め回したいと思ったのだろうか?
「……すまない。全然気付かなくて……」
「普通、気付かないでしょ」
兄弟だし、同性だし、と弟が呟く。
「……治ちゃんが傷付くかもしれないから、漫画を描いて欲望を満たして何とか感情を殺してたんだけど……」
「……」
「治ちゃんが、僕の描いた作品でオナってたんだもん。もう、ダメでしょ。我慢出来ないでしょ」
「広紀……」
どうしよう。どうしたらいい?
弟が、ゆっくり私に跨がってくる。
わざと下半身を揺らしてペニス同士を擦り合わせながら、シャツを脱いだ。
家にこもっているのに、逞しい筋肉が現れてドキリとする。
「……治ちゃん、僕のスイッチを入れた責任……とって?」
弟は、天使の微笑みを浮かべた。
***
「治ちゃんのおっぱい、ずっと舐めたかった……」
「ううっ……」
弟に両手首を顔の横で押さえつけられたまま、舌を伸ばしてチロチロと乳首を舐められる。
彼女にもそんな事された事がなくて、恥ずかしすぎて視線を外す。
「可愛い。もう勃ったよ、治ちゃんのおっぱい♪」
立ち上がった小さなそれを、弟は丁寧に唇で優しく噛んで、口内でコロコロと転がした。
「ふふ、治ちゃんのおちんちんが反応してる」
「そんな事……っ、ひぁっ!!」
反論したら、両手首を頭の上でひとつに括られ、空いた片方の手でペニスを握られた。
「何回オナった後なの? まだまだ凄い元気だね」
「ぁう……っ、やめ、離してくれ……っ」
「うん、わかった」
私が懇願すると広紀はあっさりと手を離し、頼んだ筈の私が一瞬呆けた。
「僕はね、女みたいに治ちゃんのペニスだけ満足させたい訳じゃないの。愛してるから、もっと深くイき狂わせたい。メス堕ちさせたいんだ」
「え?」
「言うよりやった方が早いよ。……ああ、こんな事が起きるなら、バイブとかローションとか色々買っておくんだった……」
準備が足りない、という弟に、「じゃあ今日しなくても良いんじゃ」と言ったがスルーされる。
「今日は唾液と指で拡張頑張るよ。風呂場に場所移せばボディソープもあるしね」
「ちょっと……!」
広紀はそう言いながら、私の腰を折り曲げ下半身を天井に向けさせた。弟の目の前に自分のお尻がきて、羞恥に顔が熱くなる。
「治ちゃんの初アナル、頂きます」
「やめろぉ……っっ!!」
広紀は躊躇なく、排泄器官である筈のそこを舐め回し、指でほじくり続けた。
「あっ♡ ああっっ♡♡」
しばらくすると、お尻がむずむずし出して、変な痺れが広がっていく。
「治ちゃん、ヤバいよ。お尻弄られて、タマがきゅうきゅうなって、おちんぽが感じて勝手に勃起してる」
「やぁ♡♡」
わかっていたけど、知られたくなかった。
「可愛いおちんぽ。触って欲しくてうずうずしてるね」
そう言いながらも、広紀は尻穴の拡張に勤しんだ。涎を直接垂らされ、指が何度も後孔に出入りを繰り返しながらより深いところまで進んでいく。
「あっ♡ あっ♡♡」
私が喘ぐしか出来ないでいると、広紀は「そろそろ場所をお風呂場に移そうか」と言って私を大事そうにお姫様抱っこし、そのままお風呂場へ直行した。
「治ちゃん、湯船のふちに手をついて。お尻こっち向けて」
「……ん」
散々嫌だと言っておきながら、快感への期待が高まってしまった私は弟の望んだ通りの体勢をとった。本来なら今すぐこの行為はやめるべきだ。それは当然、頭ではわかってる。
わかってるんだけど……!
「治ちゃんのお尻、凄い誘ってる」
ヒクヒクと蠢く菊門に満足しながら、広紀はボディソープで滑りを良くした指を挿入してきた。
「んはぁっ♡♡」
私の身体はおかしくなり、お尻の穴を拡げられる事に快感を感じ始める。
ぢゅぼ! ぢゅぼ! ぢゅぷ!!
「治ちゃんの身体、いやらし……っ」
「ぁあん♡ ぁんっ♡ イイっ……!!♡」
指が気持ち良いところに当たり、そこで悦楽を感じた私は、腰を押し付けてその感覚を存分に味わおうとする。
なんだ、これ。
射精 すのとは全く違う、重く響くような快感。
「治ちゃんエッロ……腰動いてるよ?」
「……なんかっ♡ ソコ、凄くて……ッッ♡♡」
「僕の指エネマグラ替わりって……治ちゃん素質あるよ♪」
「エネ……マグラ? んくぅ♡♡」
「治ちゃん、もう僕の受け入れられそうな位、拡がってるよ……いれちゃう? いれちゃう?」
いれちゃう、の意味は流石に私にも分かる。最後に残った理性を総動員して、首を振った。
「だ、ダメ。私達、は、兄♡ 弟♡♡ だしぃ、ひぃっ……!!♡♡」
断りを入れている最中に、じゅぶじゅぶと激しく性感帯を指で突かれて腰が砕ける。
「こんな事やってる時点で、治ちゃんは弟にお尻を弄くられて自ら腰を振っちゃうメス犬でしょう?」
「あぁ♡ んくぅ……♡♡」
弟に卑猥な言葉を投げつけられたのに、私の身体にゾクゾクとした快感が走り、その言葉に喜んでいる事を理解してしまった。
そして、その私の反応は、広紀にも伝わってしまった様で。
「ほら、治ちゃん。今なら許してあげるから、おねだりして?」
私の耳元で、広紀が囁く。
おねだり……その言葉を聞いて、パソコンで見ていた同人漫画に描かれた兄の台詞を思い出す。
「……わ、私の穴で良ければ……広紀のおちんぽ、奥まで入れて欲し……んはぁああっ♡♡」
「治ちゃんっ!!」
指を一気に引き抜かれ、圧倒的な太さと熱さと固さを兼ね揃えたペニスがメリメリと侵入してくる。
「治ちゃん! 治ちゃん……!! 好き! 好きい……ッッ!!」
「~~っ、は、ぁう♡♡」
スライドしながら、器用に突き進んでくる広紀のペニス。
肛門の入り口が、何度も捲り上がり、何度も押し込まれた。
ずちっ! ずちっ! ばちゅん!!
「ぁん! あはぁ……ッッ♡♡」
「……全部、入っ……た……」
私のアナルは広紀のペニスにしっかりと奥まで貫かれ、肌がぴったりと重なり合う。
そこからジクジクした痛みと、それ以上にジリジリとした快感を感じた。
「……夢、みたいだ」
嬉しそうに浸る広紀を、私は急かす。
多分、このおちんぽでさっきの場所を突かれたら気持ちが良い筈。
それは、未知の享楽だ。
「動いて……♡ お願い、あそこ突いてぇ……♡!」
「治ちゃん……了解。いくらでも、犯してあげる」
そこからは、激しかった。
何度も体位を替え、貪るようなキスを交わしながら、お互いを高めあっていく。
「治ちゃん、初めてなんて思えないよ……っっ! こんなに! 吸い付いて! なんて淫乱な兄なんだろうね?」
「いゃ♡♡ 違う♡♡」
「違う!? さっきから腰振って、僕のちんこでイきまくってるのに?」
「ふああ……っっ♡♡ イく♡ またイっちゃう♡♡」
「なんなのこのオスマンコ最高なんだけど。もっと早く……繋がれば良かった……!」
ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ、ずちゅん!
ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ぐりぐりぐり……
「ソコ♡♡ ぐりぐり好きぃ♡♡ も、イくぅ……!!」
「うん、沢山イって、好きだよ治ちゃん」
「ぁあ♡ ああああーーッッ♡♡」
お尻とペニスで達して、同時に広紀の精液がアナルに放たれたのを感じた。そのまま深い深い快感に溺れる。
息もつけない程、どろどろに溶かされた私は、理解していた。
もう、普通の兄弟に戻れる訳がないという事を。
***
弟は変わらず、「瀧 希子」という名前で同人漫画作家をしている。
よりリアルな描写が増えたと更に人気が出たみたいだ。
「治ちゃん、エネマグラの様子見せてくれる?」
天使の微笑みを浮かべ、広紀が私を覗き見た。
今は弟×ノンケ兄の調教物を連載中で、私はそれに協力している。
「仕方ないな」
「うん、ベッドの上で、足開いてお尻を軽く突き出して」
「そんなシーン、本当に入れるのか?」
「見てから決めるよ」
「全く……」
私はぶつぶつ言いながら、シャツとパンツを脱ぎ、裸になる。
「エライ、貞操帯もきちんとつけてるね」
「鍵は広紀が持ってるんだから、勝手に外せないだろう?」
「今日は外すよ。後で尿道責めしてあげようと思って」
私の尻穴は、期待に疼いてエネマグラを抱き締める。
「……仕方ない、な……♡♡」
広紀の瞳に写った私は、期待に満ちた顔をしているのだった。
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