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短編

「次は誰ですか、ベイセル様」 「いや、ロジオン。今はまだ時ではない。少し休暇を入れてくれ」 「……畏まりました」 私の前から、黒ずくめの男が消える。 この世に消える魔法なんてない筈だが、どういう原理だといつも思う。 まぁ、持って生まれた身体能力が私とは違うのだろう。 ……ちょっとしか羨ましいとは思わない、その分頭脳で勝てば良いのだから。 そう考えて、はたと我に返る。 ……勝てば良い? そもそも、ロジオンは私と主従関係にある。 というより、こちらがドン引きする程傾倒されている気がする。 死ねと言えば本当に死にそうな程に慕われてしまった気がする。 だから、勝つも負けるもないのだ。 我々は一心同体で、私が勝てばロジオンも勝ち、私が負ければロジオンも負けなのだ。 私は一人納得しながら、うんうんと頷いた。 そうだ。 だから、ロジオンの力は私のもの。 いつかはロジオンを手放す時が来るが、それまでは私のものだ、誰が何と言おうと。 我々ホルムベリ伯爵家は元々、そこまで力のある貴族ではなかった。 私が跡を継いでからホルムベリ家はトントン拍子に何もかもが上手くいくようになっている。 流石私。 妹達二人は我が家よりも権力のある家柄に嫁がせられたし、弟は騎士団でそれなりのポジションを掴んでいる。 後は、私だ。 後継者たるもの、そろそろ嫁を迎えてしっかりと領土を守らねばならない。 私は引き出しにしまっておいた釣書を取り出してテーブルの上に並べた。 叔母の紹介で、選りすぐりの三名だ。 「誰と会うか……」 それぞれ違う意味で魅力的な女性達。 また、それぞれ別の意味でマイナス面もあった。 私がじっくりと紹介文を読もうとした瞬間に、「誰のお相手ですか?」と聞かれて肩が跳ねる。 「ロ、ロジオン……!気配もなく後ろに立つな!」 「失礼致しました」 先程姿を消したと思った黒ずくめの男が、私の背後に立っていた。 私よりも背が高いのに、どうしてこんなに近くにいるのに気付けないのか不思議でならない。 「休めと言っただろう?」 「まさに休憩中でございます」 「……」 ならば彼の好きにさせようと、呆れながらもロジオンを向かいのソファに座らせた。 何故彼は休憩中まで上司の傍にいたいと思うのだろう?  謎すぎる。 王族や公爵に呼ばれたとしても、必要最低限しか接触しないぞ、私は。 そんな事を考えながら、お茶を出す。 部下を労うのも大事な仕事だ。 「どの女性が一番魅力的だと思う? ロジオン」 「……弟君のお相手ですか?」 「いや、私の相手だ」 「どれも相応しいとは思えません」 「……」 即答された。 いやいや、むしろ私が釣り合わない程の面子が揃っていると思うのだが? ちょっと半眼になりつつ、「何故そう思う?」と聞いてみる。 「どの女もベイセル様の美しさには敵いませんし、また非力でベイセル様を守れません。実家に甘やかされて育った令嬢達で、直ぐ泣いてベイセル様を困らせるでしょう。家柄的に散財されるのは目に見えてますし、折角ベイセル様が建て直した……」 「待て」 私が一言発すると、ロジオンはぴたりと口をつぐむ。 犬っころの様だ。 「私は妻に、守られる事は想定していないのだが。男である私が守るべきだし、そもそもロジオンが口にした事を全てクリア出来るご令嬢なんていやしないだろう」 「その通りです」 「……ロジオンは、私に独り身を貫けと言うのか?それは勿体無いだろう?」 少なくとも、私が何処かのパーティーに出席すれば、私の回りに垣根が出来る程ご令嬢が群がる。 しかし、私は家名のために女遊びをするでもなく、ひたすら勤勉に領土を潤す為にせっせと働いてきたのだ。 そう考えて、ふと思った。 そうだ、目の前のロジオンも私と一緒にずっと働いてきた。 であれば、ロジオンを今の環境から解放してやるのが、先であるべきかもしれない。 ロジオンを本人の希望とはいえ下僕のように働かせておいて、私だけが家庭を持つのが許せないというのもわかる気がする。 私達は、一心同体だといつも言っているのに。 「以前、嫁はいらないと言ってたじゃないですか」 「嫁はいらない、な。ロジオン、お前も一緒に嫁を貰わないか? そして、もう少し……お前に真っ当な役職を与えよう」 良い案だと自画自賛する。 ロジオンは、私にとって便利屋のような仕事を全てこなしてくれた。 私が力をつける為に、何でもしたのだ。 だが、私にはもう十分過ぎる程、周囲の環境が整った。 私もロジオンもそろそろ家庭を持って、それを守る為に生きていくべきだ。 「……私を捨てる気ですか?」 私の素晴らしい提案に、ロジオンはまさかの抵抗をみせた。 「まさか。ロジオンには、手を汚す様な仕事ばかり押し付けてきたから……そろそろ、闇の仕事じゃなくてまともな仕事を任せようかと思ってな」 「妻を迎える為に、私を切り捨てるのですか?」 「そうではない。確かに、今みたいにしょっちゅう顔を合わせる訳にはいかなくなるかもしれないが、切り捨てる訳では……」 慌てて私は弁解した。 ロジオンは俯き、表情を固くする。 何やら彼の中で大いなる誤解が生まれたようだ。 「私は、ロジオンに……もっと自由に生きて欲しいと思っている」 「……自由、ですか?」 ロジオンが顔をあげたので、私は少し安心して気分良く話す。 「そうだ。今までお前は、全て私の顔色を窺いながら生きてきただろう?」 「ベイセル様は、私の全てです」 即答するロジオンに、私は天を仰いだ。 私が悪かったのだろうか……そんなに厳しくしたつもりはないのだが、どうしてこう育ってしまったのだ。 ロジオンは元々、孤児だった。 私が十歳の頃、父と一緒に領土を視察していた時、土砂崩れに巻き込まれて私だけが川に流されたのだが、それを助けてくれたのがロジオンだった。 ロジオンには、名前も、戸籍もなかった。 年齢も知らなかった。 同い年位だと思った私は非常にショックを受け、父にロジオンを使用人として雇い入れる様にお願いした。 最初渋っていた父も、試しに雇用してみればロジオンの能力が高い事に気付き、結局ロジオンは私と主従関係はあるものの友人の様にも育ったのだ。 ロジオンは、ホルムベリ伯爵家の使用人をしながら私と共にすくすくと育った。 身体も必要以上に育ったが、私に対する忠誠心が異常に育った。 私に利用価値がないと判断される事を恐れ、私の役に立つと思う事は先回りしてやる男になった。 私も最初はそれがとても楽だったし、一方的に崇められるのは悪い気がしなくてロジオンの歪みを矯正する事なく来てしまったのだが、それがこうして今の事態を招いている。 「ロジオンは、ロジオンの心の向くままに、本当にしたい事をしても良いし、それを私に窺いたてる必要はない」 長年の、ある意味懺悔も込めてロジオンに伝える。 でないと、私の嫁候補が墓場に行きかねない。 皇太子でもあるまいに……ロジオンの能力はそれを可能にする。 「……私の、心の向くままに、ですか?」 「ああ。今まで拘束し過ぎて悪かった。私はロジオンを自由にしたい」 「……本当に、良いのですか?」 初めてロジオンから前向きな言葉が返ってきて、私の心は弾んだ。 「ああ、勿論だ。私はロジオンを全面的に応援しよう」 この時、私は「法を犯さないのであれば」と付け足すべきだった。 よく考えれば、闇の仕事を請け負っていたロジオンに、善悪の判断がしっかり出来る訳がなかったのだ。 トン、と首の後ろに衝撃を感じたと思った瞬間、私は意識を手放した。 *** 「ベイセル様っ♡ 愛してますっ……♡♡」 「んん"──っっ!! ん"! ん"!!」 私の身体は縄でがんじがらめにされ、アヌスにはロジオンの固く熱いペニスがぬちぬちと出入りしていた。 ロジオンは、気を失った私を拐って何処か知らない場所に監禁した。 何故急にそんな暴挙に出るのかと思ったが、「ベイセル様が誰かと結婚するなんて許せません。私のモノにします」と言われて血の気が引いた。 まさか、ロジオンの盲目的な忠誠心が恋心から来るものだとは全く思っていなかったのだ。 「わ、私はこんな顔をしていても、男だぞ!?」 同性を愛する人達を差別するつもりはないが、私は違う。 私の相手にロジオンという選択肢はなかった。 私と同じく顔はかなり男前だが、私は男でなく女を所望する。 「存じ上げています、そんな事……何度ベイセル様のペニスを咥えて射精させたいと願ったか。艶めかしいベイセル様の身体を舐め回したいと考えたか。ベイセル様を想像しながら自慰した回数は数えきれませんし、ベイセル様の後ろのすぼまりに舌や指や……私のペニスを突き入れたいと、何度妄想した事か……!!」 ロジオンは、うっとりと陶酔した顔で私を見た。 ぞくりと背筋に寒気が走る。 狂気にも似た感情がロジオンから伝わってきたからだ。 「ロジオン、私はそんなつもりじゃ……」 「私は私の心に従うまでです。ベイセル様がおっしゃった通りに」 「ロジオン……っっ!! な、何をするっ……!!」 ロジオンは、極端な男だった。 あっという間に丸裸にされた私を自分の好きな様に縛り上げて、ベッドに転がす。 足を閉じる事が叶わず、身をよじってもうつ伏せにはなれなかった。性器が外気に触れて、縮こまる。 猿轡をされたのは、私が大声を上げない様にかと思ったが、どうやらそうではなく「ベイセル様の緊縛は、猿轡をしてこそ完成ですね」と言っていたから多分やりたくてやった事なのだろう。 「ほら、見て下さい。ベイセル様の裸を見ただけで、私のペニスがこんなになっています」 私は、目の前で服を脱ぎ捨てたロジオンの急所を見て青ざめた。 元気過ぎるペニスが、天井に向けてそそりたっている。 太く、ビクンビクンと脈うち、今にも発射しそうだ。 それを自ら握りしめたロジオンは視線をこちらに向けたまま扱き出す。 「ベイセル様……っ!」 「う"う"……」 ロジオンは、裸で縛られた私を視姦したまま、手の動きを早くする。 ジュッジュッ、と先走りで滑りを良くしたロジオンの掌が、大きなペニスを更に大きくさせた。 「う"、ん"ーっ!!」 「ベイセル様……こんなところまで、ピンク色で綺麗なのですね……」 すっと私の下半身に顔を寄せたロジオンは、手の動きを止める事なく舌先を伸ばしていきなり肛門の入り口を舐め出した。 「ん"ん"ーーっっ!!」 身動きの取れない私は、喉から声を出してロジオンを止めようと必死になる。 「ああ、ベイセル様の蕾が、ぴくぴく反応してますね♡ 可愛いです♡♡ 沢山犯して、誰にも見せられない淫水焼けしたアヌスにして差し上げますからね♡♡」 そう言いながら、ロジオンはつぷりと舌の先端を私の後孔に差し入れた。 じゅるじゅる……ちゅぼっ! 「ん"っ!ん"っ!!」 気絶も出来ずに、私の身体はロジオンにされるがまま、弄ばれた。 動くと縄が食い込んで、それすらロジオンが興奮する要因のひとつになってしまう。 涙が滲んでもロジオンは喜び、睨んでも喜んだ。 打つ手がなくて途方に暮れるが、ロジオンは待ったなしだ。 遠慮の欠片すらない。 「ベイセル様のお尻の穴には私の舌が一番のりですよね? 二番目は指で、三番目はペニスです♡♡」 嬉しそうに言いながら、私の尻穴を舌でほじくり返す。 「う"う"っ!! んんん"ーっ!!」 やめろ、と叫んだ時、ロジオンの顔がやっとお尻から離れていった。 ホッとしたのも束の間。 「私のザーメンでたっぷり濡らしましょうね……♡ く、ぁあっ……!!」 どぷ、どぷ、と私の排泄器とその周りに大量の液体が降りかけられた。 「ベイセル様のアヌスが♡ 私の子種にまみれてますよ♡♡!!」 ずちっ! ずちっ! 「~~ッッ!!」 私が何かを言う前に、舌より細長いモノが私の後孔に差し入れられた。 ロジオンの放った臭い液体が潤滑剤がわりになり、それはスムーズに出入りを繰り返す。 「ん"ーーっっ!!」 「ベイセル様、わかりますか? 今、ベイセル様の蕾は私の指を美味しそうにもぐもぐと咥えてますよ♡♡」 ずちゅ! ずっちゅ、ずちゅん!! 私は涙を流しながら、必死で首を振る。しかし、ロジオンの狂気は全く歯止めが効かなかった。 「一本は余裕ですね……では、二本にしましょう♡」 ぐちょ、ぐちょ、ぐちょ、ぐちゅん……ぐちぐちぃ…… 「ああ、ベイセル様のアヌスが可愛く抵抗しています♡♡ ダメです、そんなに可愛く抵抗されたら……早く突っ込みたくて堪りません♡」 「~~!! う"ん"ん"!!」 ぢゅぷ、ぢゅぷ、ぢゅぷん!! 私は渾身の力で身体を捩ったが、ロジオンの目には「ベイセル様が身体を揺らす度にペニスも揺れて、構って欲しそうですね♡」とご褒美にしか写らないようだった。 しばらく指が無理矢理入ってくる感触を我慢していたが、「ベイセル様♡ そろそろ私の肉棒で、お尻を拡張していきましょう♡」と言われて血の気が引く。 私の顔は、涙と汗と鼻水と涎でどろどろだった。 縛られた身体を折り曲げられ、お尻が天井を向いた。 「ん"! ん"!! んう"!!」 私の目の前、涙で滲んだ向こうに、赤黒い凶器が後孔にあてられた。 そしてそのまま、ずぷずぷとめり込んで行く。 痛い。 「ん"ん"ーーッッ!!」 「痛いですか? 初めてですからね……でも私は、ベイセル様のアヌスに私以外の物の侵入を許したくありません。時間はたっぷりあるので、私のペニスにぴったりフィットするまで、ゆっくりゆっくり馴染ませましょうね」 そう言ってニッコリ笑うロジオンは、今までで一番の笑顔を見せた。 *** それから、時間の経過がわからなくなるまで犯され続けた。 食事や風呂の時間ですらもロジオンのペニスに貫かれ、私は排泄の時間以外全てロジオンに管理された。 「ベイセル様♡ 私にこれだけ犯され、広がったままの恥ずかしいアヌスでお嫁さんを迎えるつもりですか?」 ロジオンは、嫉妬心を顕にして私に問いかける。 始めの頃は睨み付けて首を縦に降る元気のあった私だが、もうそろそろ根負けしそうだ。 私は視線を反らして呟く。 「……後継、問題、が……」 呻く元気もなくなった私はやっと猿轡を外されていた。 まさかこんなに空気が美味しいと思う日はなかった。 下半身は散々繋げているのに、それまでロジオンからキスされた事はなかったが、猿轡を外すと同時に口内を貪られ、ロジオンの舌を噛む勇気のない私は諦め半分でされるがままだ。 「大丈夫です。ベイセル様の妹君には男児が何人もいらっしゃいますし、弟君が妻帯すればまた変わりましょう」 「……嫡男としての……務めは……」 「ベイセル様はホルムベリ伯爵家をしっかり繁栄させ、領土はひとまず安泰です。これ以上を望む者がいるなら、私が排除致しましょう」 今まで沢山の政敵を葬ってきたロジオンが言うと、洒落にならない。 勿論洒落で言っている訳ではないのがわかるので、乾いた笑いしか出ないが。 「ベイセル様。どうか、私と生涯を共にして下さい。愛しています」 「……」 どうにも返事が出来ないでいると、ロジオンが表情を失くして腰を引いた。 「ぁうっ……」 ずるり、と身体に馴染んでいた圧迫感が急になくなり、私の尻は条件反射の様にひくひくと反応した。 「ほら、ベイセル様。私がこうして抜こうとすれば、貴方のアヌスは可愛らしくすがりついてくるようになりました。……まだ戻れると、お思いですか?」 じゅぶん!! 「ひぁ……ッッ!!」 そのまま激しく腰を叩きつけられ、私とロジオンの身体の間にいるペニスは擦られて硬度を増す。 ぢゅぼ!! ぢゅぷ、ぢゅぶ、ぢゅっぽ!! 「ぁ、ぁんっ! ぁあッッ!!」 「お尻を犯されて達する様になりましたよね、ベイセル様?」 前立腺の裏側を何度もロジオンのペニスでノックされ、私は深くイキ狂う。 「ひん♡ そこ♡ もうやめ……ッッ♡♡」 「そんなトロ顔でアクメ晒しておいてやめろなんて、ベイセル様は何時から嘘つきになったのですか?」 残念です……と私の耳に囁きながら、ロジオンはそこを舐めしゃぶる。 ぞくぞくぞく、と背筋がひきつるような快感が走り、私のペニスは触られてもいないのに射精(たっ)した。 「ほら、ベイセル様はもう、私に尻穴を犯されて達してしまうド変態になったのですよ?♡」 「ァッッ♡ アアッッ♡♡」 「認めて楽になりましょう、ベイセル様♡?」 ばちゅんばちゅんと激しい交わりは一向に終わる気配がなく、私の後孔はロジオンのペニスを喜んで受け入れていた。 「気持ち、ぃ……っ♡」 「……ッッ、ベイセル、様……!」 一度認めると、後は本当に楽だった。 「もっと突いて……っ♡! ロジオン♡♡」 私がねだれば、ロジオンは沢山の愛を注ぐ。 快感を貪る私達。 いつしか私はロジオンに自分のアヌスを広げながら、媚びる。 「ロジオンのぶっといので、私の奥をグリグリ掻き回して欲しい……♡」 「ベイセル様……今日もたっぷり種付け交尾しましょうね♡」 ロジオンに陥落された私は結局嫁を迎える事はなかった。 そして腰がくだけるまで、声が枯れるまで、毎日甘い夜を過ごしている。 孤児を拾ったら、想像以上に育ってしまった。 ――狂気にも似た、愛が。

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