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第4話 御伽話のような幸せ

「はは。抱いてやったぞ。どうだ。わたしは死んでいるか?」 「……いえ生きています」 俺は宰相に手篭めにされていた。 宰相が不器用なセックスをすることだけはわかって笑ってしまった。 何の幸いかその晩も次の日もその次の日も宰相は存命だった。 なにやら性魂の強い一族の直系らしい。 「お前にはわたしを腹上死させることはできないよ」 といつも言っていたが冗談だと思っていなしていた。しかしそういう血筋だったとは。 「そうならさっさと抱かれたかった」 と負け惜しみで洩らせば 「ではこれから毎晩抱き潰そう」 と寝所を共にさせられた。 今では親父からの古傷も宰相が異国から買い付けた秘薬を塗って治ってきたし、痣も薄くなってきた。 けれど宰相はいつも俺の傷跡を舐めてくれる。 俺はもう宰相にしか心を開かない飼い猫にされてしまった。 それと大陸の噂ではめっぽう婚姻に興味のない宰相には寵愛する一人の小姓がいると知れ渡っている。 山を越え海を越えその噂が己のことだということをこの飼い猫はまだ知らない。 飼い猫は飼い主の前でだけネコになる。 宰相は命尽きるまでこのネコを飼い慣らし同じ棺に入れたのだと云う。 「冥界の世界でもまたひとつになろう」 と耳の遠くなったネコに言い渡して清らかな黄泉の世界へと旅立ったと云う  『義勇後朝伝』

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