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第44話 初のファンミへGO

「みも先輩。今日も大荷物ですね」 「へっちゃらだよ! 今日は待ちに待った年に1回、抽選で当たった人だけのファンミーティングだからね」  あの日。星七くんの家でおうちデートをした翌週の7月20日の土曜日にMilky Wayのファンミーティングが開催された。 「それにしてもよくファンミーティングのチケット手に入ったね。ひなもファンクラブ入ったの?」  痛バを持ち替えて最終チェックにはいるみも先輩に質問されて、少しどきっとする。でも、ちゃんと答えは用意してある。  あの日、星七くんと2人でお家デートをした時にお願いされたんだ。 『ファンミーティング来てよ。俺、深月が来てくれたらもっと頑張れるから』  そう言ってうるうるな瞳でチケットを手渡されたのだ。  アイドルのお仕事をしている星七くんを見るのは2回目になる。初めてはあの日のドーム。みも先輩に連れて行ってもらった初ライブ参戦以来。  プライベートの星七くんの様子や雰囲気はなんとなくわかってきた。けど、お仕事してる時の様子も実は気になる。フェアリーブルームのコラボの時も、お仕事の様子を知れて嬉しかったし。  もっともっと、星七くんの色んな表情を知りたくて。  そう決意してから、もらったチケットを持って急遽、今日のファンミーティングにみも先輩と参戦することにしたのだ。  みも先輩は今日は全身ブラックコーデ。推しのあおとくんのイメージカラーを身にまとっている。スタイルがいいからモードな服も似合ってて素敵だなあ。  僕はさっきのみも先輩の質問に慎重に答えた。なるべく、さらっと。 「はい。ドームの日に僕もMilky wayのファンクラブに入りました。ファンミーティングはたまたま知り合いが当選して……でも、インフルになって行けなくなっちゃったみたいで僕が代わりに」  大丈夫。ちゃんと、星七くんと一緒に考えた経緯を言えた。みも先輩、信じてくれるかな? 「その知り合いさんも可哀想だね。年に1回の推しとの握手会やサイン会に参加出来ないなんて……。でも、ファンクラブに入ったって聞いて嬉しい。ひなが今日のファンミーティングに参加できるのもすごく嬉しいな」  心底嬉しそうな表情の先輩。  やっぱり優しいなあ。嘘つくの、申し訳ないな。  Milky wayのファンクラブには、星七くんとお家デートした日の夜に申し込みした。もっと彼氏のことを応援したいし、どんなお仕事してるのか知りたくて。  みも先輩にはアイドルの星七くんが彼氏だなんて絶対に言えないし、バレないようにしないと……!  ごくりと唾を飲み込み、意識を別の所へ逸らした。  みも先輩は今日はシックな装い。黒いブラウスに黒いスラックスに黒いブーツ。全身黒づくめだ。  僕は話を切り替えようと自分からアクションをとってみた。 「僕、あの日のライブ以来すっかりせなくんのファンになっちゃったので今日すごく楽しみなんです」 「お! やっぱ布教した甲斐があるね。織姫が増えるのは良いことだ!」  先輩の言う『織姫』は、Milky Way のファンの愛称。せなくんとあおとくんは『彦星』と親しまれている。  そんな仕掛けもすごく素敵だなって思った。  ファンミーティングが開催されるのは、500人限定のライブハウス。その前には参加者の整理番号を確認するスタッフの人達がいた。  開幕まであと30分。僕らも整理番号の書かれたチケットを片手に列に並ぶ。 「じゃあまた後で!」 「はいっ」  整理番号の離れているみも先輩と僕は一旦ここでお別れ。早番のみも先輩を見送ってから、遅番の僕は列の最後尾に並んだ。ちょうど500番目だった。  Milky Wayのファンクラブに入っていて、抽選で500人限定のファンミーティングだけど、人が多く思える。初ライブの日はドーム公演だったから3万人近くいたとみも先輩が教えてくれたけど。  きっと、せなくんとあおとくんのファンがこの中にいっぱいいるんだろうな。それにしても、女の子のファンが多いな。8割くらいかな。残り2割が男の子みたい。  今日はあまり目立たない無難な格好で来た。グレーのスラックスに、白のサマーニット。それとなんとなく伊達メガネ。黒い縁の丸メガネだ。ちょっとでもおしゃれに見せたくて、僕の健気なアピールなんだけど、いつもと雰囲気違うねって思ってもらえるかな。  あと、とっておきの銀色のリングを右手の人差し指に。普段、アクセサリーとか付けないから少し慣れない感覚。  でも、せなくんのメンバーカラーはシルバーだから、少しでも推しの色持っておきたくて。  実際、ファンの子達もメンバーカラーのグッズを痛バやバニティバッグに飾っている。推しぬいや推しのトレカをケースに入れて飾っている人も多い。  ヘアセットも皆ばっちり。お姫様系のゆるふわハーフツイン、ハーフアップに可愛いキラキラのヘアクリップ。リボンで編み下ろししている子もいる。きっと美容院でセットして来たんだろうな。気合いが伝わってくる。  僕もせっかくファンミーティングに来れたから、全力で楽しむぞ!  そしてこの日、僕は知ることになる。  プライベートの星七くんとアイドルのせなくんとの、決定的な違いを。

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