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第117話 恋人・婚約者 聖地

翌日は食堂でも教室でも変な噂を聞くことはなかったし、視線も多少は注目を浴びたがほとんどの奴が視線を逸らした。 あいつのおかげだな。 漸く平穏な生活を送ることが出来そうで落ち着ける。 昼食はティエンダとフロイントと共にして自然な流れで中庭に移動する。 中庭では婚約者、恋人達の聖地となっているので至るところでイチャつく姿が見られた。 膝の上に乗せたり、肩を寄せたり、手を繋いでいたりと以前とは違う光景だ。 偶然だが、他人のキスをする瞬間も目撃した。 学園が大分変わった。 以前まではどの婚約者達も過度な接触を禁止しているかのような付き合い方だ。 付き合いもなかったのかもしれない程、婚約者との関わりが見えなかった。 政略的なものが多い婚約者制度に期待はせず、一定の距離を保ち続ける当人達。 婚約解消・破棄等はしたくないが距離を縮める努力もしない。 きっと婚約者に本気になりあわてふためく姿は貴族から、はしたないと映るのを気にしてなんだろう。 例え婚約者でも「親しき仲にも礼儀あり」のように不作法は許されない。 そう思わせてしまう見本となっていたのが過去の俺と金髪だったのかもしれない。 二人は節度を重んじる清らか過ぎる関係。 それが貴族の婚約者としてのあり方…見本となり、他人に付け入る隙を与えていた。 過去の俺は例え金髪に愛人・妾が出来たとしても婚約解消されることはないと認識していたのだろう。 結婚ってもんに期待していないと言うか…国のことしか考えていなかったのかもしれない。 王子のパートナーとして誇りを持つも王子に対しては何の感情もない。 王子のことも「何処に興味を持てば良いのか分からない」って言いそうなくらい本当に興味がないんだろうな…。 もしかしたら王子の顔も分からないって事は…無いよな。 それはないか。 記憶力良いんだから婚約者に興味無くても顔は覚えているか。 そんな奴が記憶喪失って事になっている俺が、今では他人の目など気にせず婚約者とイチャつきまくり風紀の乱れを率先している。 周囲からみたら記憶喪失処じゃ無いよな…別人って思ったりしねぇのかな? 俺、別人だぜ? 今もエストレヤを膝の上に乗せて、抱きしめながら首に痕を残している。 「アティ…ふっ…くすぐったいよ。」 「ん~」 「ぁっん…だ…だめだよ。」 「ん~。」 「ボタン…外しちゃ…んっここ学園だよ?」 俺が何処までするのか不安なのか周囲にバレないよう小声で抗議するも、俺の手は止まらずエストレヤの制服のボタンを外し続けた。 隣にはティエンダとフロイントが甘い雰囲気を醸し出しつつ、いつ俺達に視線をやるとも分からないのに。 俺に跨がって座るエストレヤは後ろの奴らに見られることはないが隣に座るティエンダ達に見られないよう必死に俺のキスや噛み痕が残る胸を隠していた。 「ァッアティ…フロイント様達居るから…んっ」 「ん~」 このような甘い空間を作り出したのは俺だが周囲の雰囲気に当てられ、構わず俺はエストレヤの鎖骨にかぶり付いた。 「んっん…アティ…」 唇を離しエストレヤと向き合い、啄むように軽く唇が触れる。 「エストレヤ、続きは放課後にしようなっ。」 「…ぅん」 エストレヤは俺の「続きは放課後」という言葉に安心していた。 今は我慢して、エストレヤの制服のボタンを掛け直す。 「ふふっ」 俺、今幸せだな。

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