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【黒猫の独白】
※読まなくても問題のない、黒猫視点の小話です※
今回は随分と元のストーリーから外れたが、それなりに楽しいものを見れた、と黒猫は笑った。
配役を間違えると、こうして時々とんでもない話になってしまう。
それは黒猫にはマイナス点になることだったが、五十回中一回くらい、こうして面白い結果が得られればまあいいかと思うのだ。
それにしても……今回は自分がこの世界を司ると知ってなお、脅してくる人間がいるとは思わず久々にちびりそうになった。
まあ、ダリウスにとってはジョアンがいない世界なんて壊れてもいいものだったからこそ、脅すことができたのだけど。
「コノ私ガ、嘘ノ情報ヲ伝エルコトニナルナンテ」
下っ端とはいえ、確実に創造神失格である。
ジョアンに伝えた嘘情報は、処刑場での言葉だ。
元の世界に戻れるかどうかを問われて、「モウ戻レマセン」と答えたが、あれは嘘だ。
以前ダリウスに拘束された時、「異世界ノ誰カト結バレテモ戻レナクナリマス」と私が発言したことについて、それはもうしつこくしつこく尋ねられたのだ。
結ばれる、とは身体を交わせることではなく、誰かと相思相愛になること。
だからあの時点で、まだジョアンには元の世界に戻れる可能性はあった。
しかし、ダリウスに目を付けられた時点で、もう無理だと思った。
本来なら彼は、誰を害すこともなく、その辺に生えている雑草のように、いずれ悪意をもって踏みつけられて、誰に知られることもなく散っていくはずの存在だった。
それがどうだ。
たった一つの配役ミスが、この世界で波紋を広げ、あんな化け物を育ててしまった。
だから世界のストーリーを読み返した時、悪役令息の行為の数々が、ほぼあのダリウスの仕業だとわかった時には流石に驚いた。
「君ガコノ世界デ悪役令息ヲスル理由ッテナンナンダイ?」
つい好奇心で、黒猫は最後にそう尋ねた。
ダリウスは笑って言った。
「俺が悪役令息をする理由? そんなの決まってる――」
ダリウスは黒猫にした宣言通り、第一王子と第二王子を失墜させ、自分が王位を継承することに成功した。
それもこれも、ジョアンをこの世界に縛り、娶るためだ。
ジョアンを迎え入れても誰にも文句を言わせないため、伯爵家の処刑劇の功労者には、ジョアンの名を筆頭にあげている。
自らの身分を捨ててでも世に尽くしたジョアンが王妃となれば、平民に歓迎される夫夫となるだろう。
元々悪役令息の素質のないジョアンのことだ、そのうち貴族たちの誤解も解いて、ネルロのように総愛される受に……いや、それは血が流れるな。
ともかくここまでこの世界が変化したことは初めてで、今回はマイナスどころかプラスの評価が下された。
人選ミスをしたにしては、たまたまとはいえ上々の出来と言えよう。
ネルロがハッピーエンドを迎えたあとは特に用のない世界だが、またしばらくしたら様子を見にきてみよう。
黒猫はそう思いながら、真っ白な空間から次の世界のための悪役令息スカウトへと飛んだのだった。
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