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第17話
ギューイーン。
錆びれたライブハウスにギターの音が響く。
やっぱり、ここに居た。
ハルは悩んでいると、俺の母が経営していたライブハウスの跡地でギターを満足するまで鳴らすのだ。
駅からも遠い立地にあったライブハウスは、母の人柄でもっていたから、他の人が経営するようになった途端に潰れてしまった。
ハルと俺の思い出の詰まったこの場所がなくなったのが酷く悲しかったのを覚えいる。
ハルの音に俺が持ってきたスティックで適当な廃材を叩いて合わせる。
この音は、ハルとキヨを繋ぐためじゃない、ハルだけのための音だった。
「来たのかよ。」
悪態をつきながら、ハルは演奏を続ける。
ただハルは俺の音を聴いて、機嫌を良くしたのか、さっきよりも気持ちよさそうに音をだした。
その後、俺たちは何も言わずに明け方までセッションをした。
「なぁ、ハル。キヨは俺達とバンド続けたいらしい。俺もキヨと演奏したい。お前はどうなんだよ?」
俺は問いかける。
ハルはもう怒っていないことがわかったし、答えもわかる。
「俺もキヨとやりたい。」
その返事を待っていた。
2人を繋ぎ止めることができた。
俺はバンドを守れたのだ。
キヨをハルが呼び出した。
辞めさせらるじゃないかとビクビクしているキヨを安心させるために、口パクで大丈夫と伝えてやった。
すると、キヨは少し顔色が良くなった。
「キヨ、この前は言いすぎた。1年間、待ってる。俺たちはサポートメンバーを加えて活動は続ける。受験、終わったら帰って来い。」
「ありがとうございます。」
キヨが安心して、泣き出す。
普段、人を慰めないハルが慰めようとするもんだから、さらにキヨは泣き出してしまう。
そんな2人の姿は可笑しくてずっと見ていたいけれど収集がつかなくなるので、ハルを黙らせる。
キヨに水を飲ませて呼吸を落ち着かせた。
「キヨ、これからもよろしくな。受験、頑張れよ。」
そう俺がいうとキヨは嬉しそうな顔をした。
その笑顔が俺の胸に突き刺さる。
俺はキヨの才能をハルのために利用してるだけなのに。
罪悪感が胸を占める。
そんな俺の気持ちを知らないキヨは心からの感謝を俺に向ける。
「真也さん、本当にありがとうございます。」
キヨが今日、一番の笑顔を見せた。
キヨを騙している後ろめたさを誤魔化すみたいに俺はキヨの頭を撫でた。
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