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50.弟にしか見えない年下
「美味しいです♪伊吹さんありがとうございます♪」
「!!!」
甘い物苦手だって言ってた癖にそんな事嘘だって言わんばかりにニッコリ笑ってやがる!
てか早速ホットコーヒーをゴクゴク飲んで口の中を誤魔化してんじゃねぇか!
け、健気だ!
俺に好かれたいのか、俺からのあーんがそんなにして欲しかったのか、尚輝くんは本当に良い子ってか、良い弟分だ。
実は俺には弟が一人いる。でも、実の弟とは一個しか違わなくて、ガキの頃から友達みたいな感覚で育って来たからこんな風に可愛いなとか思った事は一度もない。
むしろ生意気で、中学に上がった途端一気に俺の身長を越えやがるし、成績も良いわ、運動も出来るわで、そんなんだから容姿は俺同様スペシャルだから、俺よりもモテやがる。
それからはただひたすらに兄を見下すような弟に俺は兄ならばと怒りを露わにする事なく耐えて生きて来た。
そんな弟にこんな感情が湧くか?無理だろ?
だから今、俺は尚輝くんに理想の弟像を思い浮かべて少し堪能してしまっていた。
「何かいいなぁ♪ちなみに尚輝くんには兄弟はいるの?」
「いいえ、一人っ子です。伊吹さんは?」
「弟が一人。大人になってからは会ってないけどね」
ほう、一人っ子か。それなら比べる兄はいないと言う事か。尚更いいじゃねぇか。
って、俺何言ってんだ。尚輝くんは金を払ってくれてる客なんだから、尚輝くんを満足させるように楽しませなきゃダメじゃん。俺が楽しんでどうすんだ。
ギリギリの所で俺は現実に戻る事に成功。
ふぅ危ない危ない。
弟とデートとか有り得ないもんな。
「弟さんがいらっしゃるんですね。伊吹さんに似てお綺麗な方ですか?」
「兄弟だから顔は似てるよ。他は全部あいつのが上だけど~、ほら俺ってこんなだから」
「そんな、伊吹さんは十分素敵な方ですよ。気に障るような事を言ってしまってすみません」
「はは、尚輝くんは本当に良い子だな~。尚輝くんみたいな子が弟だったら良かったのにな~」
「……俺は今のままがいいです。だって、弟だと伊吹さんの恋人にはなれないじゃないですか」
「ハッ!それはそうだけど……」
すっかり尚輝くんの事弟として見てたから、急に口説くような事言われて目が覚めたわ!
尚輝くんは俺の事を本気で好きなんだった。
それじゃあ尚輝くんの事を恋人として見てみよう。いつもデートでやってるから別に変じゃないよな。
でもそれは仕事だからだ。金を貰ってる以上は相手のしたい事とかを出来る限り受け入れてやる事にしてるし、じゃあもし尚輝くんが金を払っていなかったら?
仕事とか関係無しに出会っていて、こうして口説かれていたら?
隣にいる尚輝くんをジーッと見て考えてみる。
そんな俺に気付いた尚輝くんはニコッと微笑みかけた。
「うん、若いな」
「?いつもそう言いますけど伊吹さんも若いですよ?」
「あのね、若さが違うのよ。俺も自信はある方だけど、肌の艶とか違うんだわ、それと体力ね!尚輝くんはまだまだ現役だけど、もうこの歳になると衰える一方なんだから」
「もしかして伊吹さんは俺の事を子供だと思ってますか?」
「子供って程じゃないけど、かなり歳は離れてると思ってるよ。実際離れてるし」
「俺、成人してます!今年で21歳になります!俺は伊吹さんとそんなに変わらないと思ってますよ!」
少しムッとしてる尚輝くん。俺に対してこの態度は珍しい。本気で怒ってるんじゃなくて、茶化されて拗ねてるような可愛いやつ。
やっぱり年の離れた弟じゃん~♪
「悪かったって。尚輝くんは立派な大人の男だよな♪」
「本当に思ってます?」
「疑うね~。あはは、でもこっちの方が楽でいいかも~」
「そ、そうですか?あの、実は俺最近友達が出来まして、その人といると話しやすくて……」
「そうなんだぁ、いいね。どんな人ー?」
ここで尚輝くんは照れたように頬を赤めて教えてくれた。
へー、新しい友達が出来たんだ~。
学生っぽくていいじゃん。
何だかほんわかする話で俺までホッとして、表情を緩めて尚輝くんの話を真剣に聞いていた。
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