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第1話
「蓮人、遅いなぁ……」
スマホの画面を見つめて呟く。
画面に表示される時刻は23時15分。
「日付、変わっちゃうかな……」
今日は飲み会で遅くなるから先に寝とけと言われてる。
こんな風にスマホの時計を睨んでウジウジ考えるより、言いつけ守ってトットと寝てしまうに限るのに、なかなか寝室に行けずリビングで玄関のドアが開く音を聞き漏らさない様、テレビも点けず静かな空間に居る。
……我ながら重いな……。
蓮人とは付き合って1年経った。
恋愛で相思相愛になれるのは男女でも難しいのに、僕らは男同士だ。
好きになっても実らないと見てるだけで良いと思っていたのに、信じられない事に実ってしまった。
とても幸せに満ちている。
満ちているけど、この軌跡と言って良い恋愛は、軌跡な分、脆くて壊れやすそうで……。
叶わないと思っていた人が手に入ったけど、夢の様で、すぐに消えてしまいそうで……。
ただの飲み会。
場所もメンバーも全て安心出来る様に教えてくれてる。
縛りたくない。困らせたくない。友達を大事にして欲しい。
相手を思う気持ちはちゃんとある。
でも、一人にしないで。僕より友達が良いの?なんて嫌な事考えてしまう。
「ガチャガチャ」
静かな空間に、玄関の鍵が回る音が聞こえた。
僕は慌てて立ち上がる。
今更だけど寝室に行こうか、テレビを点けて一人の夜を楽しんでたフリをしようか……。
「まだ起きてたんだ」
結局、慌てただけで、動けず見つかってしまった。
「お、おかえり」
ぎこちない表情なのを自覚しながら声を掛ける。
リビングに入ってきた蓮人がギュッと僕を抱きしめる。
「今日はありがと!飲み会楽しめたよ。遅くなってごめんな!寂しかったよな。寝てていいって言っても眠れないよな」
背中を大きな手がポンポンと優しく慰めてくれる。
「ううん、大丈夫。先に寝ていいって言われてたのに起きててごめん」
「なんで謝るの?」
「……だって、厭味みたいじゃない?帰るまで待ってるみたいで……」
「いや、嬉しいよ」
「嬉しいって?」
「だってさ、飲み会は楽しかったよ!久々に会った奴らばかりだったから。
でもさ、俺が居ない間に伊織が他の奴と連絡取ってたり、俺が居ない方が気楽に過ごせるって思ってたら嫌だなって思ってたからさ、リビングで伊織の寂しそうな後ろ姿を見てちょっと嬉しかった。ごめんな!」
蓮人の言葉を聞いて胸が熱くなる。
蓮人も離れてる間、僕の事を考えてくれてた……?
僕の事、重いって思わない……?
僕もギュゥッ!と蓮人を抱きしめる。
「……ごめん、僕もそれ聞いて嬉しいって思っちゃった。気にせず楽しんでって言ったのにね」
「もうちょっと待っててくれる?アルコールの匂いとって寝たいから」
「分かった。まだお風呂のスイッチ入ってるから冷めてないと思うよ」
「分かった。ササっと洗って来るな」
笑顔で見送ってまた蓮人をソファーで待つ。
あれだけ暗かった気持ちが一気に浮上してた。
不安になってもいつもこうして安心させてくれる。
気持ちを溜めてしまう僕だけど、蓮人には吐き出せる。
これからもずっと不安と安心は繰り返しやって来るんだろうな。
でも不安になった分、その後の安心感は蓮人との絆が強くなったと思える。
自分の重さに嫌になる時もあるけど、こんな不安なら悪くない。
蓮人がその都度、僕に安心をくれるから。
お風呂から上がった蓮人が僕の隣に座って肩を抱く。
僕は首を傾け蓮人からする自分と同じシャンプーの香りを胸一杯に吸い込む。
あぁ……安心する。ずっとこのままで……。
〜END〜
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