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第1話

「ちょっと外でないか?」と凪 「はにゃっ?」 時間は午後10時。煌は、凪のそばの暖房のよく効くスペースを陣取り、うとうとしていた。それでも、煌はこの時間に、コンビニのコーヒーを凪と飲みによく出かける。 「いつもなんで、俺に付き合ってくれるの?」 「寒いけど、この時期の澄んだ空気が好きなんだ」 煌は、マフラーで口だけ隠して、星空を、あおいで見てる。 「あっ、なんとなくわかる!」と凪が言うと それを聞いてご機嫌で植え込みのフチを歩く煌。 踏み外して、アワアワしてるのを、体の両脇をガシッと掴んでささえる。煌と凪はフチの差で同じくらいの背の丈になった。 「凪目線がこれか!」 と煌はいつもより、口数が多い。  そのタイミングで、 「煌さんこれ」と煌に渡した。 凪が差し出したのは掌に乗るほどの小さなアルミ缶だった。 「ファンにたくさんもらってると思うけど」 フッ…と煌はニヒルに笑った。 そして、蓋をあけると、煌は切れ長の目をキラっとして見開いた。 そこにあったのは、食べるのを躊躇するほど見事に形作られた一輪のピンク薔薇チョコ。 幾重にも重なる花びらが美しく、凪が持つゴージャスな雰囲気、丹精なこだわりが、その小さなチョコに凝縮されているようだ。 感動して言葉が出ないが、喜んでいるのはわかる。 「…食べないぞ」 「食べてよ。」 「やだ!」 と言って走って、自宅に戻って行った。 結局、煌はそのチョコを口にすることはなかった。 代わりに彼は、リビングの一番目立つ棚に、宝物でも飾るかのようにその缶を置いた。 「ねえ、早く食べてよ。溶けちゃうし、味の保証はしないから」 凪が呆れたように声をかけるけど、煌はもう聞いていない。 「もったいない。これ、一生見とけるわ…」 棚の前に座り込み、丹精な薔薇チョコを眺めては、自分だけの特別なチョコに、ニマニマと口角を緩ませる。普段のポーカーフェイスのキマリ顔はどこへやら、今の煌は、ただひたすらに贈られた愛を噛みしめる一人の男だった。 その姿に、嬉しいながら、凪はまた画策したくなった。どうしても、味も喜んでもらいたい。 次の日に、まだ棚を見ては、うっとりしている、午後10時の煌。 「今日は、ウチでコーヒー飲もっ?飾る用とは別に、これ、食べられる用に作ったから」と、真っ白な陶器の縁にリボンの装飾がある皿を差し出した。 そこには、ココアパウダーを纏った、宝石のように美しいトリュフチョコが並んでいる。 今度は、皿を目の前に、瞳をキラキラさせているけど、目を細めている。 「また食べないのか?」 凪が指先で一個つまんで、煌の唇にぐいぐい寄せる。 また、食べないといいそうだったけど、観念してパクっと食べた。 「…っ!っんまい!」 口内で一瞬にして溶け出す最高級の口溶けに、煌の表情がとろける。 「天才すぎる…」 美味しいものの反応は、いつも素直すぎる煌。 とろけた顔で、凪の指の粉まで、ペロペロし始めた。初めは、ふざけて舐めていたが、だんだん鋭く誘う様な目つきに変わっていった。 「っ…煌さん、それ、挑発してるの?」 「これ、2人で食べよう…」 「なん…っ!!」 トリュフをつまんで、自分の口に入れると、凪に舐める様に促す。 凪が煌の口先のトリュフを、舐め始めると、うまく煌が2人で、共有できるように、舌を凪の舌と絡ませる。あまりの美味しさに、煌の中では、ナイスアイデアと思ってやり始めた割には、煌自身が照れ始めた。 「すごい、溶けぐあいだよな」と煌。 「そんなんで、許されると思ってるの?」 凪が、煌がうまいもん堪能の至福の荒ぶりで、1人置き去り状態に、きれはじめた。 「じゃあ…煌さん、調理していい?」 とキッチンの冷たいステンレスのシンクに、ヒョイッと乗せたーー。

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