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強面くんとぽやぽやくん

「男子仲良いね〜」 同じクラスの女子に声をかけられる。現在昼休みのちょっとした休憩時間である為俺は友達兼恋人の身体にうしろから抱きついている状態だ。 「……女子もよくくっついてんだろ。それと一緒」 「まぁね?あたし達も暇さえあればぎゅってするけどあんたらいつもじゃん」 「達、って言うかこいつが一方的に抱きついてる気もするけどな」 別のクラスメイトが現れる。こいつに関してはよく授業中に居眠りをするんだから人の事をとやかく言えないだろう。 「いいんだよ。俺の定位置なんだから」 「……って言ってるけど?抱きつかれて嫌じゃないん?」 俺達の視線は本を読みながら大人しく抱きしめられている彼へと向く。自分が声をかけられたと認識すると彼はのんびりとした声色で返事をした。 「お〜。いいよ、別に邪魔されてないし」 「ほら」 「ははっ!相変わらずマイペースだねぇ」 「いつもの光景すぎるか。次移動教室だから忘れないようにね〜」 「ん」 自然とクラスメイトが教室から離れていくがそれでも俺達はゆったりとした時間を過ごしていた。恋人である俺達はどちらともせかせかしていないというか、アウトドアな性格じゃないのがいい感じにマッチしていて無言ですら苦にならない。俺も元々口数がそこまで多いタイプじゃないしこいつものんびりした奴だから各々好きな事をしている。 「………」 (………本、飽きねぇのかな) 「今日なんかあったん」 「ん?なんかって」 「いやぁ。いつもよりムッとしてる気したから……気のせい?」 ………おお。ぽやっとしているがこいつは人の事をよく見ているらしい。目線は本に向いたままだが俺にかけてくれる言葉は暖かい。 「学校来る前さ」 「うん」 「なんか急いでる人が俺のうしろから走ってきたの」 「うん」 「すげー急いでんな、とか俺は余裕あるからまあいいかなんて思ってたんだけど足元見るとハンカチ落ちてて」 「あー。その人の?」 「そうそう。しかも綺麗に使いこなされてんのか新品か分かんねぇけどすごい地面に落ちてるのが勿体なくて。目の前でぽろっと落ちたのもあって反射的に拾ってさ」 「届けた?」 「それがその人急いでんのか気づかないまますげーダッシュで走っててさ。俺も俺で渡さないと、ってなって一緒にダッシュして」 「うん」 「微妙に追いつけなくて声かけたんだけどさ、その人第一声なんて言ったと思う?」 「え〜?わかんねぇ」 『………っあの。ハンカチ、』 『え?怖っ!』 「あ〜……。」 自覚があるが俺はいわゆる強面らしい。ぶっきらぼうというか仏頂面というか………。ともかく黙ってると顔が怖いだのなんだのとよく言われたものだ。 「お前顔もそうだけど身長もでかいからなぁ。多分怖かったんじゃね」 「分かるけどさあ。俺だって一応気をつけてはいるけどさすがにその時は届けるのに必死だったっつーか。第一声が怖いは不本意じゃね?」 きっと図体の大きい俺が必死に走ってくる様は傍から見たら怖いんだろうというのは分かる。だけど上手く切り替えられずこうして恋人からエネルギーを補給しているという訳だ。 「別に感謝されたくてやった訳じゃないからいいけど。なんかなぁってなっただけ」 「その人も悪気があった訳じゃないんだろうけどな」 「そーそー。だから今日も今日とてお前に抱きついてます」 「パワー溜まった?」 「ん。溜まった」 「よっしゃ〜」 身体は程よい肉付きをしていて抱き心地がいいしサラサラの髪からなんかいい匂いもする。もう少しだけ堪能しようと首元に顔を埋めるとほんのりと赤くなっているのに気づく。……首だけじゃない、耳も赤い。 「………お前は?パワー溜まった?」 「溜まったけど、……ちょっと恥ずかしいなって」 「やだ?」 「ううん。なんていうか、照れくさいっていうか」 「かわいい」 「………へへ」 ぽやぽやしているこいつが意外と照れ屋だというのは付き合ってから知った。いつもはのぺって表情筋が無くなっているが俺だけにはわりところころ色んな顔を見せてくれる。 「強面ではあるけど俺はお前の顔好きだなぁ。かっこいいじゃん」 「そうか?目つきも悪いから何もしてねぇのに怒ってるってよく勘違いされる」 「オーラじゃね?圧力あっていいと思うけど。俺なんかいつも眠そうって言われるし」 「お前はそのままでいいよ。かわいいから」 「やったぁ」 声がのんびりしているが心做しかマイナスイオンが出ている気がする。ぽやっとした空気についこちらも顔が緩んでいると頭に手をぽんと置かれる。 「……ま、俺はお前が優しい奴だって知ってるからさあ。いい事したじゃん」 「……おう。なんか犬みてぇだな俺」 「え〜?じゃあ俺は飼い主?」 「かもな」 ふふっ。とお互いに笑いあっていると予鈴のチャイムが鳴り俺達は少し急ぎながら次の授業の準備に取り掛かるのであった。

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