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俺を全部*

「はっ……はぁ……カース、大丈夫?」  リンデルは、肩で息を継ぎながら、体を縮めて蹲る男を覗き込む。 「あ……、ああ……。だい、じょう、ぶ…………だ……」  言葉と裏腹に、男はまだビクビクと痙攣を繰り返している。 「ごめん、俺……最後、もう止まんなくって……。痛くなかった……?」  心配そうに尋ねる青年の、金色の瞳が男を労わるように包み込む。 「だい、じょう……っっんっ」  はあっと熱い息を吐いて、男が目を細める。  滲んだ瞳からぽろりと涙が溢れたのを、青年が慰めるように舐め取った。  男の浅黒い肌は艶やかな朱に染まっている。  肩口で結ばれた髪は乱れ、解けた黒髪が汗の滲んだ顔や首元に張り付いている。  男の色気に、青年はごくりと喉を鳴らす。  その森と空の瞳が見たくて、青年は男の伏せられた睫毛にそっと口付けた。 「んっ……」  それだけの刺激で、男はびくり、と身を縮める。  男は知らなかった。想い合う者に貫かれる悦びを。  愛しい者に注がれる幸せと、そこからあふれる快感を。 「……まだ、カースの中、きゅうきゅうってなってるね」  青年は男の耳元に唇を寄せ、囁く。  柔らかな金の髪に頬を撫でられて、男が息を詰める。 「っ……」 「……もう一回、する?」  問われて、男が青年を見上げる。  目が合って、金色の瞳が嬉しそうに微笑む。  天使のような笑顔を見せながら、青年は男の中でじわりと熱を取り戻す。 「ぁ……っ」  男がそれに反応してくれたのが嬉しくて、青年はゆるりと腰を揺らした。 「んっ……ぁぁっ……っっ」  溢れた声に、男が慌てて口を覆う。 「ふふふ、カース、とってもえっちな顔してるね」  言われて、耳まで赤くした男が潤んだ瞳で睨む。  そんな姿すら愛しくて、青年は苦笑する。 「ごめんごめん。でも、俺カースのこんな顔が見られて、すごく……嬉しいよ……」  ふわりと微笑んだ青年に、男の棘が緩む。  そこを青年が突き上げる。 「ぅぁっ」  切なげに喘ぐ男を、リンデルは優しく撫でる。 「今度はもっと、いっぱい、してあげられるからね」  その言葉に男は息をのむ。  これ以上快感を与えられたら、頭がどうにかなってしまいそうだ。 「や……っリンデルっんっ、もう、い……っ、ああっ!」 「大丈夫だよ。夜明けまでは、まだまだあるからね」  男の心を知ってか知らずか、青年は答えると同時に緩く出し入れしていた腰を奥深くへ差し入れた。 「んっ、ぅんんんっ!」  ビクビクッと男の腰が跳ねる。  男の中がまた強く締まり、青年の口端に笑みが浮かぶ。 「また、イっちゃった……?」  優しく囁かれ、男は滲んだ瞳で見上げる。 「ぅ……っ、もう、やめ…………っあっ」 「ん? カース疲れちゃった? 俺が動くから、大丈夫だよ」  笑顔で告げて、リンデルは男の中を優しくかき混ぜる。 「んんっ、ん……っ、ふぅ……っぅ……」  ジンジンと頭が芯から溶けてしまいそうで、カースは口を押さえたまま涙を零す。 「カース……好きだよ……大好き……」  囁かれて、男が涙に濡れた瞳を上げる。  ちゅ。と音を立てて、リンデルは男の涙を吸う。 「んっ、ぅ、んんっ」  愛を注がれるほどに、体がより深く快感を得てしまう。  愛されていることそのものが感受性を高めているのか、優しくされればされるほどに男は追い詰められていた。 「んんんっっ、んんっ、ぁぁんんっ」  甘い声でよがる男が愛しくて、リンデルは男へと長い指を伸ばすと、男の肌に張り付いた黒髪を優しく梳かす。 「気持ちいい……? 嬉しいよ……。俺も、カースのナカ……、気持ちいい、よ……」  リンデルの柔らかな声が、熱を孕んで男の耳へ届く。  男は、自分の体で、青年が感じてくれている事が純粋に嬉しかった。  体だけでなく、心まで溶かされて、男は涙を溢して微笑む。 「……リン、デル……」 「カース……」  男がその手を青年へと伸ばす。  差し出された指先に口付けて、青年が掌へ愛しげに頬を寄せる。  男は青年の頭を大事そうに抱き寄せた。  封を解かれた男の口からは揺さぶられる度に嬌声が繰り返されていたが、その合間を縫うようにして青年の耳元へと必死の思いで告げる。 「俺を……っあっ、俺、を……全部……っんんっ」  リンデルが、男の言葉を聞こうと動きを止める。 「カース?」  男が、まだ上がったままの息の隙間から、懸命に伝える。 「俺を……全部、お前の、っ物に……っっ」 「うん……ありがとう……俺も全部、カースのものだよ」  その言葉に、カースの瞳が悲しげに揺れる。 「馬鹿……、お前は、……皆の、勇者様、だろ……?」  男はほんの少し淋しげに口元だけで笑ったが、青年は花のようにふわりと微笑んだ。 「だけど、勇者じゃない時の俺は、全部カースのものだよ」  男がその微笑みに目を奪われる。  この温かい、陽の光のような金色の青年が、その全てを捧げると……。  俺に……この俺に、全てを寄越すと……? 「……リンデル……」  カースが、受け取りきれない贈り物に、狼狽えるように視線を彷徨わせる。  そんな姿もまたいじらしくて、リンデルは男を抱きしめる。 「ふふ、カース、大好きっ」  抱かれた拍子にグッと奥を突かれて、男が声を漏らす。 「ぁんんっ!」 「もっともっと、俺ので気持ち良くなってね」 「ちょ、ま、リンデ……」  青年は無邪気に微笑むと男の内側を擦る。 「ふ、ぅ、ぁぁっ」  思わず目を瞑った男から零れた涙を、青年がぺろりと舐める。 「ん、これ、い、じょ……っっんんんっ!」  深く、浅く、ぐりぐりと掻き回すと、男のナカがまた熱くなる。  それに呼応するように、リンデルの息も荒くなってくる。 「ぅ、ふぅ、……っっくっ」  男は残念ながらまた手の甲で口元を押さえてしまったが、そこから漏れ出す声もまた、カースらしくて色っぽいとリンデルは思う。 「あっ、だ……っ、また……っ、ぅぁぁっ」  男の眉が切なげに寄せられる。 「んっんんんんんんんんんっっっ!!」  男の内側が、まるでリンデルの全てを吸い込むかのように蠢く。 「っ、はあっ、カース……気持ちい……よ……っっ」  頬を鮮やかに染めた青年は、ガクガクと震える男の両脚を両手でぐいと持ち上げると、男の中へ、さらに深く侵入する。 「ああっ、も、これいじょ……した、ら……あぁぁっっ」  まだぎゅうぎゅうと絡み付いてくるナカを、青年は更に突く。  男はポロポロと涙をこぼしていたが、その声は甘く蕩けるようだ。 「っ、ごめ、ん……っ。長過ぎ、た? 今、イク……ね……っ」  青年は一言謝罪すると、その終わりを告げる。  そして、一気に奥を突き上げる。 「ぁああああぁぁぁぁあっっっ!!」  男の長い声に、青年が煽られる。  男の内側は、何度も何度も青年を優しく締め付けてくる。 「ああ、とっても……っいい、気持ち……ん、あっ、あぁっ」 「くっ、ぅ、んんんっ」  熱い吐息を耳元にかけられて、男がまたその肩を震わせる。  激しく腰を打ち付けながら、リンデルが背をかがめて囁く。 「イクよ……っ」  耳に届いた言葉に、男の体がまるでそれを期待するかのようにカッと熱くなる。  自身の体がそれを待ち望んでいることに男は戸惑うも、次の瞬間、あまりの快楽に何も考えられなくなってしまう。 「あっ、ああっぁぁああああああああああっっっっんんんっっっ」  どくりと大きく膨らんだ青年のそれに中を擦り上げられ、ゾクゾクと絶え間なく立ち上る快感に、声が止まらない。  続いて青年も最奥を勢いよく突き、声を上げ達した。 「っあああああっっっ!!」  体内へと勢いよく吐き出される熱い熱い青年の精に、男が翻弄される。  チカチカと輝く星が目の前に飛び散り、視界は白く染まってゆくも、その中で快感だけが鮮明に男へと降り注ぐ。 「んんんんぁぁぁぁあぁぁぁぁぁんんんんっっっ!!」  男はビクビクビクンッと一際派手に痙攣して、それきり静かになった。  青年は、男が意識を飛ばしてしまったことを知り、肩で息をしつつ男の頬へそっと口付ける。 「ぅ……、ん……」  男は、意識を失ってもなお、まだ深い快感の渦に捉えられていた。 「……やりすぎちゃったかな……。ごめんね、カース……」  青年は申し訳なさそうに、けれどどこか嬉しそうに呟くと、未だ小さく痙攣を続けている男を優しく撫でる。 「夜明けまでに、起きてくれるかな……」

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