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告白*

「……嫌ではなさそうだね」  リンデルはどこか嬉しそうに笑うと、ロッソのそれを咥える。 「あ、んっ、……んんっ」  主人の口内に優しく収められて、ロッソはそこはかとない背徳感を伴う言い知れない喜びに震えていた。  嬉しすぎて、胸が苦しい。  ドクドクと脈を打つ鼓動が大き過ぎて、耳が壊れてしまいそうだ。  ロッソはいまだに分からなかった。  主人がどうして、こんなに取るに足らない私のことを、このように扱ってくださるのか。 「ぅ……く……、ぅあ……んっ……」  主人が、ロッソのものを咥えたままゆっくり頭を振る。 「……ふ、……ぅ、あ、ぁあ……んんっ」  その動きから伝わる主人の気持ちが嬉しくて、快感は何倍にも膨らんだ。 「あ、っいけませ、ん、んぅ、……この、ままでは……っっ」  喘ぐ息の隙間から、焦りを滲ませたロッソの声。  リンデルは、上目遣いにそんな従者の顔を覗く。  ロッソは追い詰められたような表情で、熱に浮かされ赤く染まっている。  リンデルは、動きを止めないままに、瞳で「いいよ」と伝えた。  長年、戦場では視線のみで会話をしてきた。二人にはそれで十分伝わった。  伝えられた気持ちに悦びが重なり、リンデルの口内で、それがドクリと脈打ち一際熱く硬くなる。 「あっ、ぁああっっんんんんんっっ!」  ロッソの切なげな声。  リンデルはそれを口内で受け止めるつもりでいたが、ロッソは必死で腰を引いた。  結果、リンデルは顔にそれを浴びてしまう。  金色の髪に、頬に、白濁した液体がぼたぼたと降り注ぐ。 「ゔぅ……」 「もっ、申し訳ありませんっっっ!!!」  流石に顔を顰める主人に、従者は大慌てで謝罪しつつ自身の寝巻きでそれを拭う。  はぁはぁとまだ荒い息を零しながら、時折肩を震わせながら、ロッソが自身の精を拭っている姿にリンデルは苦笑した。 「口に出してくれてよかったのに」 「そっ、そのようなこと、畏れ多くて……とても……できかねます……」  しょんぼりと答えるロッソがいじらしくて、リンデルはつい言ってしまう。 「顔にかける方が酷くない?」 「もっっっ、申し訳ございませんっっっ!!」 「ふふっ。冗談だよ」  悪戯っぽく笑いながら、リンデルはその長い指で吐精したばかりのロッソのそれを撫でる。 「っ……」  二度、三度と主人の指で愛しげに撫でられて、ロッソのそれはじわりと形を取り戻す。 「ロッソは元気だね」  ニコッと微笑んだリンデルが、不意にロッソの耳元に顔を寄せて、囁く。 「前の勇者さんとは、いつも何回くらいしてたの?」  ロッソが小さく肩を揺らして息を詰める。  それと同時に、ロッソの胸に疑問が蘇る。  ……どうして、主人は今日に限って、こんなにあの方を気にするのだろうか。  私が、あの方と関係を持っていた事を、主人は不快に思っていたのだろうか。  リンデルが顔を離すと、そこには黒い瞳に隠しきれない不安を浮かべたロッソがいた。 「主人様……」 「ああ。……ごめん。不安にさせちゃったね」  リンデルはどこか痛みを堪えるようにして苦笑する。 「ロッソがあんまり可愛いから、その……。ちょっとだけ、妬けちゃったんだ」  そう言って、少しバツが悪そうにリンデルは頭を掻いた。  ロッソが、思ってもみなかった言葉に目を丸くする。 「大人げなかったね。……ごめん」  しゅんと反省した様子で謝る主人を、ロッソはただ呆然と見つめた。 「…………」 「……ロッソ?」  反省とともに俯いていた主人は、全く反応のない従者の名を呼びながら、そろりと顔を上げる。 「……っ……!!」  途端、ロッソは両手で顔を覆って俯いた。  ロッソは酷く混乱していた。  どう……。  ……どういう、ことだろうか……。  妬いたと言うのは、まさか、嫉妬を、したということなのだろうか。  それは……どうして……。  ……まさか……? 「ロッソ……? だ、大丈夫……?」  主人が、黙ってしまった従者の肩をそっと撫でる。  リンデルの手の平で包んでしまえそうな小さな肩が、びくり。と揺れる。 「……ど……して……」  小さな小さな、掠れた声がぽつりと溢れる。 「うん?」  もしかして、あまりに情けなくて呆れられてしまっただろうか。とリンデルが若干額に汗を浮かべつつ、聞き取れなかった言葉を聞き返す。 「どうして……ですか……?」 「えっと……何が?」  微笑んで聞き返すも、リンデルの笑顔はほんの少し引き攣っている。 「どうして、主人様が、嫉妬を……なさるのですか……?」 「ええ……と……、どうして、と言われても……」  リンデルはつい先程までの、快感に溺れ、乱れる従者の姿を思い浮かべて、ごくりと唾を飲んだ。 「ロッソの気持ち良さそうな顔が、すごく……可愛くて。俺の知らないロッソのこんな顔を、前の勇者さんはいつも見てたのかなって、思ってしまって……」 「そ、そこではなくてっっ」  ロッソが慌てて両手をぶんぶんと振る。その頬がじわりと赤く染まる。 「それで、どうして主人様が嫉妬をなさるのですか?」 「ロッソを、独り占めしたくなっちゃったんだよ」 「!?」  少し情けない顔で、素直に苦笑するリンデルに、ロッソは目を見張る。 「そ……っ。ど……っ!?」 「それはどうしてって? うーん……。好きな人を、独り占めしたくなっちゃうのは、どうしてなんだろうね? 人を縛る権利なんて、誰も持っていないのにね……」  そう言って、リンデルはほんの少し淋しそうに苦笑した。 「……っ!!」  ロッソは顔を真っ赤にさせて、息を詰めている。 「…………ロッソ? 大丈夫?」  主人の問う声が、ロッソにはどこかとても遠くに聞こえる。  私の聞き間違いでなければ、主人は、私を独り占めしたいと言った。  そして独り占めしたくなるのは『好きな人』だと言った。  それは……。  それは、つまり……。  息を呑んで、ロッソは黒い瞳に隠しきれない期待を浮かべて、主人を見つめた。 「主人様は……、わ……私のことを、どう、お思いです……か?」  尋ねる小さな赤い唇が震えている。  そこでようやく、リンデルは気付いた。  いつもの、自分の言葉足らずに。 「えっ!? あ! 俺言ってなかったっけ!? ロッソに、好きだって……?」 「……っ」  黒い瞳がじわりと潤む。  それは喜びの、歓喜の涙だった。  いつもキッとつり上がった細い眉が、へにょっと八の字になったのを見て、リンデルは無性に嬉しくなった。  きっとまだまだ、ロッソにはこんな、見たことのない表情がたくさん隠されているのだろう。  それをこれから少しずつ、自分は見つけてゆけるのだと、リンデルは確信する。 「ロッソ、いつもありがとう。俺、ロッソが大好きだよ」  心を込めて、愛と感謝を込めて。  主人はたった一人の従者に気持ちを告げた。  ほろほろと涙をこぼしながらも、従者は真っ赤な顔で応える。 「……恐悦、至極に、存じます……」  告白の返事にしては、あまりに固いその言葉に、リンデルはほんの少し苦笑を浮かべて、けれどロッソらしいなと微笑んだ。  そして、この可愛らしい従者にもっと触れたいと願った。  零れる涙を唇ですくうように、リンデルは小さな頬に口付ける。  従者の細い背を支えながら、もう一度ゆっくりとベッドに押し倒すと、黒い瞳が期待に揺れた。  ああ。可愛いな。とリンデルは思う。  主人の長い指が胸をまさぐると、従者の唇から切なげな吐息が零れた。  リンデルは、自分よりもずっと薄い胸板の上で、鼓動に合わせて震えるその突起を指先で転がしながら、小さな唇にそっと口付ける。 「ん……」  鼻にかかるような甘えた声が、ロッソから漏れる。  リンデルが舌を挿し入れると、小さな舌が遠慮がちに触れてきた。  健気なその様子に、リンデルの内側が昂る。  そろそろ自分も、限界かも知れない。

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