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5.どういう事だ?
俺と伊吹さんは電車に乗って移動を始めた。
今日は伊吹さんと事前のやり取りで大きな公園がある街へ行こうと決めていた。
そこは駅近にお店が多く、ショッピングだけじゃなく、お腹が空けば困る事はない便利な街だった。
その街にある大きな公園では今、ひまわりがたくさん咲いていて見頃だと言う。
伊吹さんがお花に興味があるかは分からなかったけど、俺の憧れのデートだったから提案してみたら採用されたんだ。
「今日も暑いな~、尚輝くんは暑さには強いの?」
爽やかな笑顔でそう言う伊吹さんは、とても暑そうには見えなかった。
意外とカジュアルな格好が多い伊吹さんは、今日は白のTシャツに紺色の薄手のカーディガンを羽織り、黒いスキニーを履いていた。
伊吹さんは何を着ても似合うんだ。
対して俺は白のVネックに、七分袖の黒いジャケット、下は細身のジーンズ。
年上の伊吹さんに合わせてシンプルで大人っぽくを意識し、ネットで調べた俺なりのお洒落だ。
「暑いのは苦手ですね、寒い方が我慢出来ます」
「へー、俺どっちも嫌い♪」
へへと悪戯っ子のように笑う伊吹さんは天使のようだった。
どっちも嫌いとか伊吹さんらしいなと思う。
「もう夏だもんな~、大学生なら夏休みとか海行ったりすんの?バーベキューとか?」
「みんなはすると思います、俺はそういう経験はありませんが」
「誘われたりしないの?尚輝くんキリッとしてて男前だから女子からモテるんじゃない?」
「どうなんでしょう?俺自身の恋愛対象が同性なので、異性からモテるとか分かりません。モテるのは伊吹さんですよ、いつも予約がいっぱいじゃないですか」
人気No. 1だから伊吹さんの出勤時間はほぼ埋まるんだ。
だから、伊吹さんの土曜日の出勤情報が更新されるのを逐一チェックしていないと誰かに先を越されそうで毎回命懸けなんだ。
伊吹さんは俺とのデートが終わったらその日の夜に次の土曜日の出勤を確定させるから、俺は家に帰ったら予約が完了するまでは勉強をせずにスマホを握りっぱなしでいる。
その間に伊吹さんの他の出勤日の予約状況が見れるんだけど、いつもほとんど埋まっているんだ。
やっぱり凄い人気なんだなぁと感心しつつも、少しだけ嫉妬していたりもする。
「そうでもないよ?最近は前より予約減ってるし」
「そう言えば、出勤減らしました?前よりも時間も短くなってる気がします」
「あ、気付いた?実は今就活中なの♪」
「えっ!お店辞めるんですか!?」
これには驚いた!と言うかショックだよ!
推し、と言うよりも片想いの相手である伊吹さんが辞めてしまうなんて、俺はこれから何を楽しみに生きて行けばいいんだ!?
やっと見付けた理想の人なのに、もう会えなくなるなんて悲しいよ。
「仕事決まったらね。てか何でそんなガッカリしてんのよ、そこ喜ぶとこね?」
「た、確かに伊吹さんが他の人とデートしなくなるのは嬉しい事ですが、それって俺ともデートをして貰えなくなるって事ですよね?それは辛いです……」
「ん?尚輝くんとはデートするよ?今だってしてんじゃん」
「ど、どういう事ですか!?」
思わず大きな声で聞き返してしまった。
これには伊吹さんも驚いたのか、慌てて周りの目を気にし始めた。
でも、今伊吹さんが言った事は大きな声になってしまう程の事だったんだ。
今の仕事を辞めても俺とデートをしてくれるって、そんな夢のような事が可能なのか!?
「どういう事って、俺がどういう事って聞きたいんだけど?何でそんな驚くの?」
「だって、伊吹さんがお店を辞めても俺とデートをしてくれるって言うからっ」
「そりゃするでしょ、付き合ってんだし」
「!?!?」
ま、待って!
今何て言った!?
付き合ってる!?
嬉しいけど、初耳だよ!!
俺と伊吹さんはいつ付き合う事になったんだ!?
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