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14.マイナス思考とプラス思考
伊吹さんはジッと俺を見た後に、トンと俺の肩の辺りに倒れて頭を当てて来た。
「いいよ、尚輝くんがしたくなったらで。その代わりにさ……」
「何ですか?何でも言って下さい!」
まさかの答えに俺は食い付いた。
伊吹さんの顔は見えないけど、声色は明るく感じる。
とにかく嫌われなくて良かった!
「…………」
「伊吹さん?その代わりにって何ですか?」
「…………」
あれ?伊吹さんから返事が無い。
俺はまさかと思って伊吹さんの肩を掴んで離し、顔を見てみる。
そこには気持ち良さそうに目を閉じてる可愛い伊吹さんがいた。
これは寝てるのか?
飲み過ぎると寝ちゃうって言ってたけど、本当だったんだ。
「……可愛い♡」
さっきまで陽気に喋っていたのに、突然大人しくなって寝てしまうなんて、まるで子供みたいだなと思った。
このままだとちゃんと寝れないだろうから寝室に連れて行こうと思うんだけど、俺が寝室に入っていいものなのか。
前に来た時に寝室を見せてくれたから場所は分かる。
でも伊吹さんの寝室って思うと意識しちゃって悪いなって思っちゃうんだ。
俺はやっぱり伊吹さんを起こす事にした。
「伊吹さん、ここで寝たら風邪引きますよ」
「…………」
声を掛けたぐらいじゃ起きないのか。
それならばと肩を揺らしてみる。
それでもゆさゆさと揺れるだけで目は閉じたまま。
揺らした反動で伊吹さんの頭がカクンってなって、後ろに倒れそうになったから、慌てて両腕で支えた。
再び伊吹さんの体に触れて、その細い体にドキドキしてしまう。
冷蔵庫にも何も入って無かったけど、ちゃんと食べてるのかな?
デートの時は普通に食べてるのを見るけど、好き嫌い多いみたいだし、健康状態が心配だな。
一人暮らしだから手を抜いちゃうのも仕方ないけど、伊吹さんには健康でいてもらいたい。
今度ご飯を作ったら食べてくれるかな?
俺は実家暮らしだけど、父さんは仕事で忙しくて家にいなかったから、俺のご飯はいつもお手伝いさんが作ってくれてたんだ。
それをたまに手伝ったりしてたから簡単な物なら作れるけど……
勝手にそんな事しても気味悪いとか思われるかな。
料理は女性ってイメージが強いし、やっぱり俺みたいな男と可愛い女の子に作って貰うのとじゃ違うよな。
伊吹さんは喜んでくれないかも……
伊吹さんの寝顔を見ながらまたマイナスな事を考えていたと反省する。
ダメだな、こんなんじゃ愛想尽かされても仕方ないだろ。
俺は伊吹さんの彼氏なんだ!
いつまでも嫌われたらどうしようとか考えるのは良くないよな!
きっと伊吹さんは喜んでくれる!
無理矢理そう考えて、右腕で眠る伊吹さんを支えながら左手を伸ばして自分のバッグを取る。
中からスマホを出して早速レシピ検索だ!
「あ……」
やる気を出した所でスマホの画面に出ていた着信の通知を見て言葉を失う。
数時間前にあったものだけど、俺は伊吹さんとのデートの時はマナーモードにしているから気付かなかった。
着信の相手は大我くんからだった。
急に現実に戻されるような感覚だった。
伊吹さんと両想いだと言う事が分かり、自分の気持ちとの葛藤などもあったけど、こうして伊吹さんと上手くやっていけると思った矢先に、俺の今の悩みの一つである友達の大我くん。
そんな彼からの着信に思わず動揺してしまった。
大我くんも伊吹さんの事が好きだ。
それで俺と大我くんは仲良く二人で伊吹さんの事を愛そうと言っていた。
だけど、俺はこうして大我くんの居ない所で伊吹さんと付き合って抱き締め合ったりしてる。
こんなの友達を裏切ったようなものだ。
俺は心がキュッと痛み、伊吹さんを支える腕も震えていた。
俺はまたマイナスな事を……
伊吹さんの事は勿論大切だ。
だけど、俺に笑って良くしてくれる大我くんの事も大切な友達なんだ。
スマホを持っている左手を床に付けて俺はどうしたらいいのか分からず、ただボーッとしていた。
大我くんに伊吹さんとの事をちゃんと話さなくちゃ。
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