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五十三 絶世の弟は姉の悪夢

蒼炎鳥に乗って、高空で冷たい風を当てていても、幸一の顔の温度が上がる一方だ。 「先輩は何をするもりだ……いきなり口づけだなんて、もう子供じゃないし……そもそも、子供の時もされなかったのに……」 思わず手を額に触れて、あのふわっと暖かい感触がまだ残っている。 「その先輩とどこまで進んでいるの?手を繋げたことは?口づけは何回?一緒に夜を過ごした?」 ふいと、あの怨霊の変な質問を思い出した。 大人の情事について、幸一は分からないではない。 仙道の人間も人間だ。体と感情を持つ以上、情事の課題は避けられない。 勉強の一環として、専門な授業がある。実際に、情事を利用する禁断な修行法も存在する。 でも、修良の口づけは情事的な意味ではないと、幸一は分かっている。 (そうだ!これもあの幻の余韻だ!あの毒々しい怨霊め!よくも邪悪な思念を俺に残したな!) そう思うと、幸一は胡坐をかいて、瞑想で雑念を払おうとした。 「そもそも俺と先輩はそんな関係じゃないし、そうなろうとも思っていない!先輩は俺に幻を見分けさせるために、口づけをしたんだ。家族に祝福をするような口づけだけだ……」 「そう!家族が、姉が危険に遭遇している時に、俺はなにを考えているんだ!」 梁谷嶺に到着するまで、幸一はずっと瞑想の中だった。 幸雲を預けられたのは韓婉如の遠い親戚の叔父一家。 その叔父の話によると、大体一か月前の満月の夜に、幸雲は行方不明になった。 一生懸命探した結果、長年に梁谷嶺を拠点に据えている狼の妖怪に攫われたことが分かった。 それから法師を雇って、官府にも通報したが、救出に行った全員もその妖怪に破られた。 韓婉如はあちこち逃げ回っているので、連絡を取れるまでにかなり時間がかかった。 幸一は姉の平安を祈りながら、妖怪のいる山奥に突っ込んだ。 時間はもうすっかり夜になって、山道は真っ暗。 幸一は両目に光の術をかけて、前途を照らす。 「また狼の妖怪か。偶然なのか、それともあの時と同じ、乱心妖怪なのか……」 「救出しに来る人と戦っていたことは、姉はまだ生きている可能性が高い。いいえ、絶対生きている!」 姉が縁談破綻を自分ののせいにしたことにまだ不服だけど、到底、血の繋がっている姉弟で、幸一は本気で幸雲の安全を案じている。 「あった!そこだな!」 妖怪の住所はすぐ見つけた。 野良妖怪がよく住んでいる洞窟とかではなく、人間の建物のようなちゃんとした屋敷だった。 屋敷は月の光をよく浴びる山中の空地にある。人間の認識から見れば、かなり広くて、裕福そうな家だ。 屋敷の庭扉は閉まっていない。幸一は前庭に入って、建物の扉に向かって大声で叫んだ。 「玄幸雲を攫った妖怪はいるのか!死にたくなければすぐ彼女を返せ!」 妖怪の耳にちゃんと届くように、幸一は声の波動を風に乗せて、山中で響かせた。 「……」 屋敷からしばらく反応がなくて、幸一が突入しようと思うところ、扉が内側から開かれた。 「!」 人間の武人の服を着ているたくましい青年が出てきた。 その青年の髪は月光の下で銀色に輝く。目が赤い光が灯っていて、口から剥き出した犬歯が見える。 身の回りに凄まじい妖気さえなければ、ただの凶悪な人間に見えなくもない。 「お前か!玄幸雲を攫った狼妖怪!」 相手から強い攻撃性を感じたので、幸一は細剣を構えた。 「またお前らか。しつこい人間め。懲らしめがまだまだ足りないようだな」 青年は手を空気を空抓みしたら、雷の電光が現れ、真っ白な巨大斧ができた。 「今回こそ許さない!死ね!!」 青年は電光お纏う斧をふりかざして、問答無用に幸一かかってきた。 「それはこっちの台詞だ!!」 幸一は身軽さを生かして、斧の強い斬撃を交わし、横から細剣を青年の腰に刺す。 でも、青年の反応も遅くない。足元を翻し、斧を幸一に向かって横振りをした。 幸一は斧を避けたが、一筋の電光に足を打たれ、ピリッと痛みを感じた。 もう一方の足で幸一は高く飛んで、風の術を踏み、屋敷の頂上に降りた。 「どうした、卑怯な人間め!真っ向勝負する勇気もないのか!」 「お前と勝負する暇はない!」 幸一は細剣を宙に浮かせて、両手で胸の前に呪文を描いた。 すると、細剣と同じ形の氷柱が無数に現れ、雨のように妖怪の青年に降りかかる。 「フン、これしき!」 青年は斧を速やかに廻し、電光で氷柱を飛ばす。 その同時に、大地を強く蹴り、屋上へ突進。 幸一は一枚の羽を足元に落とし、怪我した足を支えて斜め上に浮き上がる。 「逃げられると思うか!!」 屋上に跳んだ青年は斧を大きく振り下ろした。 電光交じりの強い斬撃は幸一を切り裂く――― しかし、斬撃が通したところに、幸一の姿はなかった。 あるのは、真ん中から引き裂かれた一枚の白い羽だった。 「幻術か!」 騙されたと気付いた青年は急いで幸一の在り処を探したら、更に高いところからの異様な音を聞いた。 満月を背景に、幸一は術を唱えながら高く浮遊している。彼の前に、一つの水球がどんどん膨大になっている。 飛ばされた氷柱がいつの間にか水の形になり、あちこちから水球に集中しに行く。 青年の雷に飛ばされた氷柱は、つけられた電光も一緒に水球に投入した。 水と雷が絡み合う水球は、ちかちかと危険な炸裂音が立てている。 そろそろ十分な大きさになったと思って、幸一は呪文を止て、強い風で水球を青年の飛ばした。 「!!」 青年は斧をかざし、力技で迎え撃とうとしたら、水球で輝く電光の色が青色に変わって、もう自分の力ではないことに気付いた。 (避けるしかない!) 青年は回避しようと屋上を飛び降りたが、青色の電光が青年の白い電光に吸い取られたように青年が回避した軌道のままを走って、青年の背中に直撃した。 「がああああ!!」 青年がを前庭の地に叩きつけたら、幸一はさっそく術を変える。 「凍り付け!!」 水はまた氷となり、青年を地に固定した。 幸一は細剣を青年の頭と紙一枚離れた距離の地面に刺しこんで、脅迫した。 「命が惜しければ、玄幸雲を返せ!彼女は何処だ!」 動かなくなった青年は悔しそうに歯を食いしばって、死ぬ覚悟で叫んだ。 「死んでも返すもんか!幸雲は俺の大切な妻だ!!」 「な、なんだと!?っ!」 その時、一匹の子狼が幸一の懐から飛び出して、青年にしがみ付いた。 「白牙(はくが)ちゃん?!」 その子狼は白迅という妖怪からもらった法具で、幸一に「白牙」に命名された。 事情が妙だと感じて、幸一は戸惑ったら、屋敷のほうから女の悲鳴が上げられた。 「ら、雷鳴(らいめい)さん!!」 幸一は振り向いたら、六年ぶりの姉が玄関の前にいた。 「幸雲姉様……」 「雷鳴さん!!」 幸一を見ていないように、幸雲は真っすぐに青年に駆け付けた。 「雷鳴さん!しっかり!これは……氷!?冷たいっ!」 幸雲は氷を剥がそうと氷に触ったら、その冷たさに焼かれて、手を引いた。 「幸雲姉様、一体どういうことですか?この妖怪とは、一体どんな関係!?」 「!!」 幸雲はやっと幸一の存在に気づいた。 「あ、あなたは、もしかして……」 「俺だ、幸一だ!姉様を助けに来た!」 「幸一……?」 幸一の顔をはっきり認識したら、幸雲の目から焦点が失って、力を失たように地に倒れた。 「どうして……」 幸雲は全身が震えた。 「姉様……?」 幸雲は両手で顔を覆い、いきなり悲痛な叫びを上げた。 「どうしてまたあなたなの!?一体どこまで私の幸せを破壊するの!?!これはきっと悪夢です!!いやああああ!!!!」

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