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第1話

「……ふう、あと少しで今日のノルマは終わりかな」  ザクザクと土を掘り返して出てきた淡い緑色の草を摘み取りながら、ようやくE級に上がったばかりの僕ーーシュガーは額の汗を拭った。今日は特に予定もなかったので、ギルドで依頼されたナオリ(ソウ)の採取をしに、シーズニング迷宮に来ていたのだ。この薬草はポーションの材料になる上に見つけやすいので、初心者向けの依頼として人気がある。  周囲にはうすぼんやりとした青白い光が漂っている。これは光虫という迷宮特有の虫が発するもので、そのおかげで洞窟の中でも視界はある程度確保できている。壁際には光苔が自生して、これもまた淡い光を放つため、これらの生物のおかげで迷宮の浅い場所はスキル【夜目】を持っていなくても、明かりを用意していなくても歩けるのがありがたい。  ここシーズニング迷宮は全部で三十階層あるダンジョンで、深くなればなるほど難易度は跳ね上がる。ただ、五階層までは浅層域と呼ばれ、出てくる魔物もスライムやケイブバットなどといった比較的弱いものばかり。そのおかげでソロE級である僕のような駆け出しでも入ることが許されている。もっとも、油断は禁物なんだけどね。  と、不意に頭上で小さな羽音が聞こえた。見上げると天井にケイブバットが逆さまにぶら下がり、今にも僕を襲おうとしていた。  腰のナイフを抜き、飛びかかってきたケイブバットを切りつける。攻撃を何度も繰り返し、皮膜を傷つけられたケイブバットはようやく地面に落ちて動かなくなった。時間はかかったが怪我もなく、なんとか倒すことができた。最初なんて核を壊せば簡単に倒せるスライムですら倒すことができず、先導してくれた指導役の高位冒険者さんに苦笑いされていたのに。魔物との戦闘にも少しずつ慣れつつある自分を実感しながら、僕は再び薬草探しに戻った。 「あ、こっちにメチャナオリ草がある! やったあ。これ、薬効がナオリ草より高いから、査定額も高いんだよね」  奥まった行き止まりの壁際に薬草を見つけ、いそいそと近づいていく。人が滅多に通らないような場所に希少な素材があることが多い。しゃがみ込み、手を伸ばして草を摘もうとしたその時だった。 「あっ……!?」  足元に金色の魔法陣が広がった。しまったと思った時には遅かった。軽い浮遊感を感じた後、視界がぐにゃりと歪んだ。  (ーーー転移魔法陣の(トラップ)!!)  抵抗できない力に身体が引っ張られながらも、僕は必死に意識を保とうとする。しかしすぐに何も見えない暗闇へと堕ちていったーー  どれくらい時間が経っただろうか。  意識が戻り、ハッと息を吸い込んだ。目の前にあるのは硬く冷たい石壁だった。 「……え?」  混乱しながら起き上がろうとして、異常に気づいた。両腕が、いや正確には腰から上が壁の中にめり込むように埋まっていて全く動かせない。完全に埋まった訳じゃなく、隙間があるためなんとか息ができるのは良かったけれど……。  つまり僕は今、下半身だけが壁から出ているという恥ずかしい姿勢で石壁に固定されてしまっているのだ! 「ちょっ……何だこれ!? なんでこんなことに……!?」  パニックになりかけながらも、脳裏にある知識が蘇る。転移魔法は通常、転移先が安全だと分かっている時にしか使われない。なぜならもし転移先に人や物体があった場合、最悪の場合双方がぶつかったり融合してしまう恐ろしい事故につながるからだ。  例えば魔法使いが誤って森に転移したら、ちょうどそこにあった大木の中に閉じ込められてしまった……だとか、転移先にたまたま人がいたためぶつかって二人とも……なんていう笑えない噂話もある。  眉唾な話かと思っていた……。それが自分の身に降りかかるまでは!  しかし現実は非情である。あの時、足元に現れた魔法陣の光が脳裏をよぎる。あれは間違いなくダンジョントラップだった。しかも運悪く転移先が壁の中!   おかげで完全に身動きが取れない状態に陥っているわけだ。 「嘘だろ……誰か助けてくれよぉ……!」  叫んでみても声が反響するだけで誰も応えてくれない。冒険者ギルドは僕がシーズニング迷宮の浅層に行くことは知っているかもしれないけれど、いつ帰るかなんて報告していない。ましてや壁の中にめり込んで動けなくなっているなんて、誰も想像しないだろう。  仮に誰かが僕の不在に気づいたとしても、迷宮の何階層にいるのか、階層のどのあたりにいるのか分からないから、ギルドは二次災害を防ぐため捜索隊を出すことはないだろう。下手をすればこのまま飢え死にだ。  餓死するくらい身体が細くなれば、隙間ができて壁から抜け出せるかもしれないけどさぁ……。 「ああ……人生終わったかもしれない……」  絶望に打ちひしがれながら何か手はないかと思考を巡らせるが、手も使えず身体もろくに動かせない状態では打開策など思いつくはずもない。下半身だけは自由だけれど、せいぜい足をばたつかせるくらいで、それが壁から抜け出す助けになるとは到底思えなかった。  焦って動いても体力が奪われるだけだ。誰かがここを通りかかってくれることを神に祈って待つしかないーー確率は限りなく低いだろうけど。  こんな形で冒険者人生に幕を閉じることになるなんて誰が想像しただろうか。情けなくて涙が出そうになる。  まるで永遠にも思えるほどの時間が、容赦なくゆっくりと流れていった。  …………カツ  カツ、カツ、カツ………  不意に静寂を裂くように、ひとつ、またひとつと規則正しい足音が近づいてくる。金属のプレートが付いた重厚なブーツの音だ。迷宮に棲む魔物たちなら、こんな整然とした歩き方はしないし、靴を履くこともない……ということは!  魔物じゃない。これは人間の足音だ! 「だ、誰かっ、誰かいるんですか? 助けてくださーーーーい!!!」  最後の希望を託して、僕は腹の底から声を振り絞った。顔は壁の中なので、声はくぐもっているが、それでも十分に相手に届いただろう。  足音がピタリと止まる。  数秒の沈黙。そして、低く落ち着いた声が聞こえた。 「……その情けない声は……シュガーか?」  聞き覚えのある低音ボイス。見えなくても誰かが分かった。間違いない。S級冒険者のソルトさんだ!  冒険者ギルドでは高位冒険者が見習い冒険者を連れて迷宮に行き、様々な指導を行ってくれる教導という制度がある。僕が初めてこの迷宮に入った時の指導役、それがソルトさんだった。あの時はまだスライムを倒せなくて、ソルトさんに苦笑いされたんだっけ。  彼は剣技だけでなく豊富な経験と知識を持つ実力者で、どんな困難な場面でも冷静に対処することで有名だった。そんな彼が偶然通りがかるなんて、なんてラッキー! 一生分の幸運を使い果たした気分だった。 「そうです、Gランクのシュガーです! 面目ありません、ダンジョントラップにかかってしまって……。お願いです、どうか助けてください!」  僕は必死に懇願した。  僕の背後にソルトさんがゆっくりと近づいてくる気配を感じる。ブーツの重い足音がすぐそばで止まった。 「……ククッ、これはまた……」 「え?」  何やら小さな笑い声と声がして、彼が近くで屈み込むような気配を感じた。ブーツの踵が石畳を擦る音が妙に大きく響く。  こんな姿を見られちゃって……きっとスライムを相手した教導の時のように呆れられているんだと思うと顔から火が出るようだった。 「今すぐ助けてやるからな……。もう少し我慢しろ」 「は、はい!」 「一気に壁を壊してしまうと破片で怪我をしてしまうかもしれんから、少しずつな」 「はい!」  ドゴン、パラパラと壁が崩れる音が聞こえる。僕の周りから壊していくみたいだ。二、三回音がしたところでーー 「う、ぐっ、こ、これは……!」  という、ソルトさんの焦った声が聞こえた。 「ど、どうしたんですか? 何か問題が!?」  僕は不安になりながら問いかけた。 「……う、マズいぞ、これは……」  ソルトさんの声はいつもと違って少し掠れている。マズいって何が!? 何も見えないので、何が起きているのか全く分からない。 (まさか魔物が襲ってきたとか!? いや、それにしては戦闘音も聞こえないし、魔物の唸り声も気配もしない)  しばらくして呻き声が止まって迷宮内に静寂が訪れた。静かになったと思ったのも束の間、突然ソルトさんの大きな手が僕の腰骨に触れ、ズボンのウェスト部分を掴んだのが分かった。 「え? ソルトさん……?」  慌てる僕の言葉には一切答えず、彼は慣れた手つきでかちゃかちゃと僕のベルトのバックルを外し、ズボンのホックを器用に外していく。何が起きているか理解する前に、下着ごとズボンが膝のあたりまでずり下ろされた。冷たい空気が尻を撫でて、僕は羞恥と驚愕で固まった。  抵抗しようにも下半身だけが自由な状態では限界がある。足をバタつかせてみても、すぐに太ももを押さえつけられて動きを阻害された。 「ちょっ……!? 一体何を……!」  狼狽して声を上げるが、彼は黙ったままだ。無言で伸びてきた手が今度は露わになった僕の臀部に触れた。 「ひゃっ!? そ、ソルトさん、やめて下さい! な、何かおかしいですよ……!」  必死に訴えるけれど、僕の尻を撫で回す彼の手は止まらない。そして僕が抵抗できないことをいいことに、さらに双丘を広げたり、揉んだりと、大胆に手を動かし始めた。 「ひっ、わあああああ!」  もう悲鳴を抑えることなんてできなかった。助けを求めたはずなのに、この状況はいったい何なんだ。 「ま、まさかソルトさん、精神支配攻撃を受けているんですか!?」  そう考えればソルトさんの様子も納得できる。そうだ、きっとそうに違いない。彼が正気なら、男の尻を揉むなんてことするはずがない! 「……ああ、どうやらそうみたいだ……悪い、身体が勝手に動くんだ!」  この異常事態に全身の血が凍るような寒気を覚えた次の瞬間、苦しげな声と共に、何か湿った暖かいものが後孔に当てられた。 「え、なにを……?」  声を上げる間もなく、節くれだった太い指が一本、ずぶりと体内へ侵入してきた。 「ひいっ……!?」  異物感と圧迫感が一気に襲いかかり、思わず息を呑む。ぬちゅっという湿った音とともに指が慎重に動き始める。抜き差しを繰り返し、蕾をかき混ぜられ、徐々に後孔の入り口が広げられていく。 「ぐっ、これは止める事ができないようだ……。こうなっては仕方がない。せめて痛みがないように、優しくするから許してくれ」 「は、はい……」  ソルトさんの方こそ、たまたま通りかかっただけなのに、こんな貧相な男の汚い尻穴に指を突っ込むことになって、迷惑しているだろうに……。僕のことを心配してくれて身体のことも慮ってくれるなんて、なんていい人なんだ!  ソルトさんの優しさと低音ボイスに腹の奥がきゅんとして、つい括約筋を締めてしまった。するとその刺激で、何かを探すように動いていたソルトさんの指が違う場所へと触れーー… 「ん、あっ!?」  腹の奥で今まで感じたことのない奇妙な感覚が走った。それは痛みではなく、むしろ痺れるような未知の感覚だった。ソルトさんはその反応を見逃さず、その一点ばかりを責めるように指を押し当てはじめた。 「ああっ、変です! そこっ……あぅ!」  ソルトさんの指は執拗にその場所を圧迫したりこねくり回したりする。未知の快楽が脊髄を駆け上がり、脳髄を直接揺さぶるような衝撃となって押し寄せてくる。膝が無意識に震え、股間が熱く疼き始めるのを感じた。 「……ぅんっ、あぁ、やめて……」  喘ぎ混じりの抗議も虚しく、ソルトさんの指の動きはさらに大胆になっていく。異物が抜ける感覚がしたかと思うと、数を増やされた指が再び後孔へと侵入してきた。手持ちの冒険道具を何か使ったのか、指はとろりとした粘液に包まれていて、僕の後孔は驚くほど容易くそれを飲み込んでしまう。  腹の中で指をばらばらに動かしたり、何度も繰り返し出し入れして、ソルトさんの指は僕の後孔を押し拡げていった。 「はっ、あんっ、や、そこきもちいい、はっ、はぁんっ」  かと思うと前立腺を挟み込んでふにふにと揉みしだかれ、指の腹で優しく押され、たまにかりかりと掻くように動かされて、快楽を追うことしか出来なくなっていく。 「そろそろ解れてきたようだな……」  ソルトさんは満足そうに呟くと、一気に指が引き抜かれた。その喪失感をもどかしく感じてしまう自分に戸惑いを覚えた時、すでにパンパンに膨らんで涎を垂らしていた僕のペニスにソルトさんの手が伸びた。 「あっ……そこはっ……!」  迷宮の冷たい空気とは対照的な熱い手の平が僕のペニスを包み込むように触れた瞬間、全身に快楽が走った。 「あっ、ああ、ダメです! そ、そんなところ、触らないでっ!」  悲鳴混じりの抗議を無視して、ソルトさんの親指が亀頭の割れ目をなぞるように上下する。溢れ出した透明な液体が潤滑油となり、くちゅくちゅと卑猥な水音を立て始めた。 「やあっ……あぁっ……! あんっ、あああ、あ、やんっ」  自分でも信じられないような甘い声が漏れる。ソルトさんは巧みに力を加減しながら根元から先端へ、ゆっくりと何度も僕のペニスを扱き上げる。カリ首を重点的に責められるたびに腰が跳ねるように揺れた。 「ふぁあっ!? や、やめーー」  言葉を紡ぐ暇もなく新たな刺激が襲い掛かる。亀頭全体に鈴口から溢れる蜜を塗り広げると、睾丸を持ち上げて柔らかく揉みしだく。 「ひゃぁっ!? あうっ!」  急所を他人に握られているという本能的な恐怖と同時に湧き上がる快感。痛みと気持ち良さが混ざり合った感覚に、意識が飛びそうだ。 「んぁあ! だめぇ……こんなのおかしくなるぅ……!」 「ああ、シュガー……なんて愚かで可愛いんだ……」  ソルトさんは満足げに喉の奥で小さく笑うと、ペニスを扱く速度を加速させた。ぬめりを帯びた肉棒がリズミカルに摩擦され続け、睾丸が持ち上がるような疼きが襲ってきた。 「あああ、もうっ、だめです、あんっ、ああ……もうイっちゃいますぅ……」 「待て。誰がそれを許した?」  今にもイきそうだったのに、ソルトさんはそれを許してくれず、親指と人差し指で竿の根元をキュッと押さえつけて流れを強引に堰き止めた。 「ああっ、ああ………あああ、あ、やーーっ!!!」  極限まで張り詰めた快感が行き場を失い、全身を暴れ回る。電流が走ったみたいに身体が自然にビクビクと震え、弓なりに背が反った。 「はぁ、はぁ……ゼィ、ハァ…………」  息を荒げていると、カチャカチャとソルトさんが防具を外す音と、ズボンを降ろす気配がした。風が股間を撫でたと思った刹那、灼熱の塊が後孔へと押し付けられた。この硬いモノは、まさかソルトさんのソルトさん!? 「ひぃ!?」  硬くて太い肉棒がゆっくりと僕の中に押し入ってくる。指でさんざん拡げられて準備万端だったおかげか思ったより痛くなかったけど、代わりに内臓を直接押されるような強烈な圧迫感に襲われた。 「力を抜け。身体がガチガチだと余計に辛いぞ。しっかり解してあるからそんなには痛くないはずだ」  ソルトさんの言葉に嘘偽りはないようで、確かに内部はしっとりと濡れていて、拡張されて柔軟になっていた。それでも初めて受け入れるものに対する本能的な拒絶反応はどうしようもなく、なかなかうまく力を抜く事ができない。   「うっ……ぐうっ……」  歯を食いしばって耐えているとソルトさんの荒い呼吸音が聞こえた。普段の冷静な彼からは想像できないほど切羽詰まった吐息だ。 「はあっ……シュガーの中は、なんて熱いんだ……」  掠れて辛そうな声を聞くだけで、なぜか背筋がゾクリとした。僕だけじゃない。ソルトさんも辛いんだ。  硬い杭が肉壁を掻き分けながら徐々に奥へ侵入してくる。ソルトさんのモノは想像以上に長く太くて、指など比べ物にならない質量が腹の中に収まっていく。全身の神経が鋭敏になり、皮膚一枚隔ててソルトさんの体温と脈動が伝わってくる。 「ふっ……!」  ソルトさんが短く息を吐き出した。彼も相当な興奮状態なのか、荒い息遣いと時折漏れる唸り声が妙に色っぽい。その声が鼓膜を震わせるだけで勝手に身体が反応する。 「んあぁっ!? それダメェ……!」  僕は悲鳴に近い声で懇願したがソルトさんは聞く耳を持たず、前後にゆっくりと腰を揺すり始めた。引いては押す緩慢な動きだが、亀頭が前立腺を押し潰し、擦り上げられるたびに指で弄られた時以上の鮮烈な快感が襲った。 「ひゃあっ……あんっ……ああっ……!」  甘い喘ぎが僕の口から断続的に漏れる。快感に溺れていると、ソルトさんはペニスをゆっくりと抜いていった。ずるりと腸壁を擦られ、後孔から出て行く感覚に鳥肌が立つ。解放された安堵感と共に、寂しさが胸を締め付ける。もっと続けてほしいとーーそう思ってしまった。 「……え」  今にも出ていってしまうと思った瞬間、ギリギリまで外に出したペニスをソルトさんは僕の腹の奥まで勢いよく一気に突き入れた。 「あ゛、がっ! ぁーーーー!?」  予想を遥かに超える衝撃が腹部を貫いた。熱せられた太い鉄の杭をまっすぐ身体に突き刺されたような感触。脳髄が爆発するような激痛と同時に、それを上回る猛烈な快感が全身を駆け抜けた。 「~~~~っ!」  視界がチカチカと明滅し、目の前に火花が散る。触られてもいないのに、僕のペニスから白濁がピュッと飛び出した。あまりの衝撃に言葉も思考も追いつかず、ただ意味不明な喘ぎ声だけが唇から零れ落ちる。 「……悪い。あまりにもシュガーの中が気持ち良すぎて……」  ソルトさんの苦しげな声が聞こえた。しかし彼自身も余裕がないのは明らかで、僕の背中に密着した胸板から伝わる激しい鼓動がそれを物語っていた。 「はぁ……すごい締め付けだ……シュガーのマンコは優秀だな」  掠れた声で呟くと、彼は荒々しい抽送を開始した。彼のペニスが前立腺を擦るたびに悲鳴が漏れる。 「あ、あっ? あ゛っ! ひぁっ! そこっ……ダメッ……!」  自分の意思とは関係なく腰が跳ね上がり、快楽を逃すためにかすかに動く指先で壁に爪を立てる。律動が激しさを増し、結合部から響く淫靡な水音と、パンパンと肉と肉がぶつかり合う音が迷宮内に反響する。  限界が近い。尿道口からは絶えず白い液体が流れ出し、肉棒は限界まで張って今にも爆発しそうだった。 「だめっ! あっ、もう…………イく!」  僕がそう叫ぶのとほぼ同時に、ソルトさんの動きが変わった。今までよりも深い部分を目指すように、僕の背にグッと体重をかけてくる。 「あ゛、うぁっ!?」  体重をかけた突き上げに、ソルトさんのペニスが腹の奥の窄まりへとぐぷりと嵌り込んだ。 「~~~~っ!?」  これまでとは次元の異なる、鋭い痛みとその何十倍もの圧倒的な快楽が同時に襲ってきた。光が白く弾け、絶頂が襲う。肺が機能を忘れたように呼吸がし辛くなり、水から出た魚のようにはくはくと喘ぐことしかできなかった。 「ああ……シュガー……」  ソルトさんの声も途切れ途切れだった。彼も限界が近いのだろう。嵌り込んだペニスを小刻みに揺すりながら、僕の最も弱い部分をピンポイントで攻め立ててくる。 「………っ、はっ…………ぁ……………」  言葉にならない叫びが漏れる。S状結腸を犯された僕のペニスから、まるで壊れた蛇口のように精液がビュルビュルと、とめどなく溢れ出していた。 「ああ……シュガー、気持ち良いよシュガー………」  ソルトさんが僕の名前を呼びながらさらに激しく腰を打ち付ける。 「んああっ……! おく……すご……いっ……! あああっ!」  視界が点滅し続けている。快楽の渦に呑まれて意識が飛びかける寸前、ソルトさんが低く呻いた。 「はっ、ぐうっ……!」  最奥で爆ぜた熱い奔流が僕を満たしていく。その熱さでさえも僕にとってはさらなる快感の燃料となった。 「ああぁっ……なか……あつい……んっ……!」  脈打つように注ぎ込まれる大量の精液に合わせて、僕自身もまた何度目か分からない絶頂を迎えーーー意識がそこで途切れた。   *    僕が意識を取り戻すと、まず目に入ったのは崩れた石壁だった。身体にあった圧迫感は消えている。床には温かい毛布が敷かれ、僕はその上で眠っていたようだ。何より驚いたのは、身体が清潔になっていたことだ。気を失っている間にソルトさんが壁から救出してくれて、身体を拭いて介抱してくれたんだろう。服も着ている。サイズが大きいので、これはもしかしなくてもソルトさんの物か。 「うぐっ……」  身を起こそうとすると腰に鈍い痛みが走った。あの体勢でずっといたから仕方がないことだった。僕が起きたことに気がついたのか、大きな影が僕の視界に飛び込んできた。 「シュガー、気がついたか! いくら操られていたとはいえ、あんな行為を強要して本当に申し訳なかった!!」  それはとても見事な土下座だった。S級冒険者ともあろう人が地面に額をこすりつけている。その姿に思わず吹き出してしまいそうになる。 「ソルトさん……頭を上げてください。僕は大丈夫です。あれはお互い不可抗力です!」  精神支配の魔法の影響でやむを得ず起こったことだからソルトさんが責任を感じなくていい。それを言うなら僕が転移罠に嵌ったりしなければ、こんなことは起きなかったはずだ。 「……いや、俺はS級なのに、簡単に精神支配を受けてしまった。迷宮内では何が起きるか分からないのに、精神支配遮断アイテムを何も持っていなかった。今まで何の困難もなく迷宮を攻略できていたから完全に油断していた」  悔恨の滲む声だった。僕を助けたせいで、僕とこんな関係になってしまった事を今さらながらに後悔しているんだろう。S級冒険者に嫌われては、もうこの街にはいられない。戻ったらすぐに宿を引き払って別の街に移動しなければーーーぐるぐると考えていたので、ソルトさんが真剣な顔で僕を見つめていたことにしばらく気付かなかった。 「ところでシュガー……」 「は、はいっ!」  名前を呼ばれて心臓が跳ねた。ソルトさんは一度、大きく息を吐き、覚悟を決めたように続けた。 「シュガー、俺の恋人になってくれないか?」  沈黙が落ちる。洞窟内の冷たい空気がひりひりと頬を刺す。ソルトさんが何を言っているのか分からなかった。 「……えっと、それは……もしかして責任感から言っているんですか? 今回のことはお互い様なんですから気にしなくてもいいですよ! いくら関係を持ったからって僕みたいな底辺冒険者と付き合うことはないです。あ、もしかして今日のことを誰かに話されることを危惧しているんですか? 大丈夫です、壁に嵌ったなんて恥ずかしいので絶対誰にも言いません!」  早口で捲し立てる僕の言葉は、半分本当で半分嘘だった。  ーーソルトさんを好きになりかけている自分がいる。チョロいなぁと自分でも思う。僕はずっと強い冒険者に憧れていた。ソルトさんはまさしく僕が憧れた冒険者そのもの。全部が眩しくて羨ましかった。そんな人が今、僕に「恋人になろう」と言ってくれている。  でもそれは責任であって愛情じゃない。責任感で付き合ってもらっても虚しくなるだけだ。 「いや、違うんだ。断じて違う。そんな責任感で付き合おうと言っているわけじゃない」  ソルトさんは即座に否定した。その真剣な眼差しに息を飲む。 「え……じゃあなんで……」 「シュガー、聞いてくれ」  逃がさない、とばかりに彼は僕の両肩をしっかりと掴んだ。逃げる気なんて元からないけれど。 「実は……最初に君を指導した時から気になっていたんだ」 「……ほえ?」  意外すぎる告白に言葉を失った。ギルト主催の迷宮の教導の日。僕はスライムさえろくに倒せず泣きべそをかいていた。それをソルトさんは苦笑しながらも丁寧に倒し方を教えてくれた。その後も会うたびに何度も声をかけてくれて、時には装備のアドバイスをくれたりした。その優しさは初心者への温情だとばかり思っていた。有名冒険者であるソルトさんはいつも美女に囲まれていて、貴族のお嬢様から護衛の指名依頼を何度も受けていて、将来は貴族になるだろうと言われるほどモテる人だ。  そんな人に恋人になってほしいと言われて、嬉しくないはずはない。 「君はいつも必死に頑張っていて……その健気さと純粋さに惹かれた。シュガーが成長していくところを隣でずっと見続けたいと思ったんだ」  ソルトさんは続ける。 「だから今回、迷宮の中で出会って、運命だと思うほどに嬉しかったんだ。それがまさかあんな事になるなんて……」  彼は俯き、拳を握りしめた。その表情には深い後悔が刻まれている。 「シュガーにとって大切な初めてだったはずなのに、あんな形で奪ってしまって……本当にすまない」 「ソルトさん……」  その言葉に胸が締め付けられた。S級冒険者ともあろう人がここまで自分を気遣ってくれることが嬉しい反面、その重さに息苦しさも覚える。こんな風に思いやりを持って接してくれる人を失望させたくなかった。 「僕は……」  声が震える。 「正直に言うと……僕もソルトさんのことが気になっていました。今回のことでちょっと……その……好きになりかけています」  勇気を振り絞って告げた。 「でも僕は男ですし、Gランクで弱いですし、あなたに相応しいとは到底思えません。すぐに恋人というのは……その、ハードルが高いです」 「だったら!」  彼は一歩近づき、僕の手を取った。 「最初は友人でいい。だがこれだけは覚えておいてくれ」  低い声で囁くソルトさんの声。僕はこの声に弱いかもしれない。 「俺は諦めない。必ずシュガーを振り向かせてみせる。毎日君への愛を伝え続けるからな。俺の愛はけっこう重いぞ。覚悟しておけ」 「え……重い……?」  思わず声が裏返った。ソルトさんは自信満々に頷いた。 「ああ。恋人になれる日まで……いや、なった後もずっと愛を乞い続ける。シュガー、これからよろしく頼むな!」  そう言ってソルトさんはからりと笑った。   *  まだ攻略が残っていると言ってシュガーを入り口に繋がる転送魔法陣で送ったあと、ソルトはシーズニング迷宮の最下層を歩いていた。 「キャハハハッ、まったくもって傑作だねぇ~」  洞窟の奥から笑い声が聞こえた。ソルトは即座に足を止め振り返る。迷宮最深部の暗闇から現れたのは、子供のようなシルエットだった。  耳は鋭く尖り、額にはねじれた角が二本。紅い瞳が闇の中で爛々と光り、背中には漆黒の蝙蝠の翼が折りたたまれている。子供は悪魔族の特徴を全て備えていた。 「ああ、なんだ、ルシフェルじゃねえか。趣味悪ぃな、ずっと見てたのかよ」  それはいつものソルトの喋り方とは違う、全てを嘲るような声だった。  悪魔は空中を舞い、ソルトの顔の前で停止した。少年の姿をした悪魔は肩を震わせて高らかに笑い声を上げた。 「キャハッ! 『な~にが操られてるだよ!』ってシュガーちゃんに言ってやりたかったぜェ。薬草採取しているシュガーちゃんの足元に転移陣を仕掛けたのも、十三階層の壁の中へ転移させて閉じ込めたのも全部……あんたの仕業のクセにさぁ?」  ソルトはまるで心胆を寒からしめるほどの黒い笑みを浮かべた。 「ああ、いい見せ物だったろ? 壁尻ってのを一度やってみたかったんだ」  悪魔は狂喜しながら続けた。 「うわぁ、趣味悪い! しかも十三階層の魔物は全部追い払ってさァ~。あの空間に二人っきりになれるよう手際良くセッティングしちゃってさ。あの完璧な仕事っぷり! さっすがぼくらのダンジョンマスターだぜ!」  そう。ソルトはこのシーズニング迷宮のダンジョンマスターだ。  ダンジョンマスターは迷宮の主人だ。魔物を生み出して支配し、外界から侵入してくる者を退け、あるいは殺して迷宮を成長させる役割を持つ。罠や魔物を適切な場所に配置したり、階層を増やしたり、地形や生態系を変えることも可能で、自分が支配権限を持つ迷宮内限定ではあるが、思いのままに何でも出来る、神と言ってもいい万能の存在であった。  ダンジョンにはダンジョンコアというものがある。その名の通り迷宮を生み出す核であり、壊されたら最期、迷宮が崩壊し、ダンジョンマスターも死んでしまう大事な物だ。一般的なダンジョンマスターはコアを最下層の一番奥、誰も立ち入れないような隠し部屋へと隠し、誰にも壊されないようにずっとそばにいて護る。  だが、ソルトはたまにダンジョンコアをルシフェルに任せて外界へ出て、自分好みの少年を言葉巧みに、あるいは身体で堕として連れて帰っていた。ルシフェルも数百年前にソルトに連れ去られた子供で、迷宮の魔物へと作り変えられた。  ルシフェルは今では最下層の大ボスになってこの階層を守っている。もし万が一、ルシフェルでも倒せない冒険者がいたら、その時はソルトが裏ボスとなって登場する。が、ここ数百年、そんな凄い冒険者は出てこなかった。 「『悪い、身体が勝手に動くんだ!』だってさ、キャハハハハ!」  ルシフェルはソルトの声色と仕草を真似て嘲笑った。それがまた似ているものだから、ソルトは面白くない。 「それにしてもさァ~。あんだけヤっといて結局お友達止まりなのってマジウケる~~! キャハハハハハ!」  ルシフェルは腹を抱えて転げ回った。ソルトは剣の柄に手をかけて一瞬のうちに抜刀。ルシフェルを真っ二つに切り裂いた。  だがルシフェルの身体は、まるで黒い煙のように霧散すると、すぐに集まって元の姿に戻る。 「うへぇ……マスター、怖っ!」 「俺はちゃんと計画してる。もっともっとシュガーを俺に依存させて、友人から徐々に距離を縮める。時には身体で堕として、洗脳しつつ身も心も全て掌握していくんだ! そのために次はこんなトラップを考えたがどうだろう?」  ソルトは指をパチンと鳴らし、ドヤ顔で叫んだ。 「その名も………『セックスしないと出られない部屋』だ!」  ルシフェルは一瞬沈黙した後で翼を広げて飛び上がり、くるくると空中を回って甲高い笑い声をあげた。 「シュガーちゃんと二人で入る前提じゃん! キャハハハッ!  さっすがダンジョンマスター、マジで性根ひん曲がってるよなぁ、あんたって。あんな純粋な子を騙して、良心の呵責とかないわけ?」 「良心?」  ソルトは低く笑いを堪えるように呟くと続けた。 「俺に良心なんてものがあったら、今頃こんな迷宮なんか運営しちゃいねえよ。そもそもダンジョンマスターってのは悪に連なるものだ。良心なんざあるわけないだろ」 「ま、そりゃそーかもな。あ~あ、シュガーちゃん可哀想。こんな奴に目をつけられちゃってさァ」   *  「……ん?」  宿屋のベッドの上でシュガーはブルっと身を震わせた。 「風邪でもひいたかな? 迷宮で下半身剥き出しにしたからかなぁ…………」  シュガーの顔がボッと赤くなる。ソルトとの痴態を思い出したからだった。 「………痛かったけど、すっごい気持ち良かった……。またシてくれるかな……なぁんてね!」  赤面した顔を隠すように、シュガーは頭からすっぽりと布団を被った。                 ーーーTo be continued? * * * ・シュガー(16才) 受け。チョロい。ソルトのことを優しくて強くてカッコいい冒険者だと思っている。『セックスしないと出られない部屋』の次は触手のトラップに嵌まる。 数年後にはソルトに魔物にされるよ。友人のうちに早く逃げて! ・ソルト(年齢不詳) 攻め。ダンジョンマスターだということを隠し、冒険者として活動している。 迷宮に飽きると外界へ出て冒険者として働き、見初めた可愛い男の子を拉致してくる。長く外界にいると歳を取らないことに気付かれてしまうため、拉致した後はダンジョンコアのある部屋に監禁し、しばらく二人で部屋に篭ってやり過ごす(ヤり過ごすとも言う……)。

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