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短編
弟(魔王)×兄(勇者)
※執着系俺様タイプの攻め。
※初な受け。エロに耐性がない。
※攻めも受けも二回死にますが、また生まれ変わります。
※シリアスめだけどバッドではない。
※催淫を掛けられすぐに挿入します。
「魔王ぉおおおおおおお!!!」
『勇者ぁああああああ…!!!』
お互いの心臓を同時に貫くのが分かった。
がふ、と口からは大量の血が溢れ、それは止まる事なく喉の奥からせり上がる。
「俺の命と…引き換え、か…ゴホッ!ゴホッ!!」
生に未練が無い訳ではない。
ただ、小さい頃から魔王を倒す為だけに生きてきたからか、死にゆく恐怖よりも達成感の方が胸を占めていた。
『まさか、たかが人間にしてやられるとは思わなんだ』
「そっか。ははっ…人間だって…ゴホッ!ガハッ!やる時はやるんだ…」
『お前はこんな人生で良かったのか』
そう問われると一抹の寂しいという気持ちが込み上げる。
村を出る時に見た幼馴染みが悲しむ顔、一緒に訓練した仲間と師匠達との一時。
戦いの中で築き上げた何もかもが手放すには惜しい。
「まあ、そう言うな…グッ、ゲホッ!!
俺は皆の命と…世界の平和を、守れて嬉しいんだ。
後悔しない、さ」
『…そうか』
「ガフッ…ガフッ、ゴフッガハァッ!!!
……ッあ"あ…限界、だな。俺は、先に逝くよ。
だから、お前も…ちゃん、とあ、とに……着いて、こいよ。
残って……悪さすんじゃ…ねぇ……ぞ………」
力が抜けた体の重みでズブズブと魔王の剣が体内に入り込む。
血を吹き出しながら魔王の足元に崩れ落ちた。
魔王が俺の体に触れたのを最後に、肉体から魂が抜け出した。
「はっ」
懐かしい夢を見た。
魔王と相討ちになった夢。
俺は幸か不幸か前世の記憶を持って新たな生を受けていた。
新たな人生では勇者と魔王の死後200年が経っており、世界はすっかり平和ムードになっていた。
俺の戦いは無駄じゃなかったんだなと知って嬉しかった。
ただ、一つ懸念がある。
それは俺が記憶を持って転生したという事。
こっそり前世の力を使ってみると、なんと勇者の力がそのまま残っていたのだ。
つまり、あの時相討ちした魔王ももしかしたら同じように記憶と力を持って生まれ変わっているのではないか…と。
「ケイン」
考え事をしていると、すぐ側で双子の弟の声がして体がびくんと跳ねた。
なんというか…いつも距離が近いのだ。
「大丈夫か?頭痛い?薬貰って来ようか」
「や、ただ考え事してただけだから…」
「無理してないか?」
「してないしてない」
弟は俺と違っていつも冷静沈着な癖に俺には妙に過保護で困る。
今も少し顔をしかめつつ考え事をしていただけでこれだ。
「…はぁ。ケインを置いていくのは…心配だな」
「気にすんなって。レインがやりたい事と俺のやりたい方向は違うんだから、無理して一緒にいなくて良いと思うしさ。
それにもう心配されるような歳でもねぇだろ」
「ケインがそう言うなら…」
弟は一週間後、魔法の発達した隣国の学校に入学する。
昔から魔法が上手かったから魔法がきちんと学べる学校に進みたいと言っていたのだ。
俺は騎士の方が性にあってたからこの国の学校で充分だったが。
「ケインも一緒に来れば心配しなくて済むのにな。
魔法も俺に劣らず上手いのに」
「嫌だよ、体づくりより魔法中心な学校なんて。
俺の性に合わないっつの」
「……残念」
レインがしゅんと寂しそうに俺を見た。
…あっ、なんか良い事思い付いたみたいな顔してる。
「じゃあこれ」
「ん?なんだ?イヤリング?」
「ん。通信魔法掛けたから俺といつでも話せる。
辛くなったらいつでも使え。
転移して駆け付けるから」
「お前は過保護過ぎる!
俺の事をなんだと思ってんだよ!」
「可愛くてずっと側に置いて愛でていたいお兄様?」
「兄にいう言葉じゃねえ!!!」
「ふふふ」
レインは子供の頃は俺と違って隠せなかった魔力のせいで周りの子供から大人達から親から化け物だと怖がられて傷付いて泣いていた。
俺は怖がられていなかったから周りに同じ魔法を使って、俺も使えるんだぞ、これで俺も化け物か!?と怒った事がある。
それからは俺も遠巻きにされたものの、弟にはえらく心配されて「俺と同じにならなくて良いのに」と言われながらも構い倒したし、魔法の制御をつきっきりで教えた。
それが今やこれだ。
「ていうかお前の方こそなんか言われないか心配だわ」
「言われたら捩じ伏せるから大丈夫だ」
「孤立するだろ!!程々にしとけ」
「嫌だ。俺にはケインがいる。
それにケインだって俺の為にわざと力使ったんだから俺だって遠慮しない」
「馬鹿、俺達は双子の兄弟なんだから仲良くすんのは当たり前だ。
少しでもトラブルを無くす為に周りに怖がられない程度に力抑えろ。な?」
「ケインが…そう言うなら」
トラブルは呼び込まない方が良いって分かってる癖に俺の事を気にしやがって。
そこがまた手が掛かるけど可愛い弟ってやつなんだろうな。
なんで俺には過保護なのか分からんが。
自分の身くらい自分で守れるっての。
入学から一週間前、レインは隣国の学校に行く為に早く家を出る。
「ケイン、辛くなくても気軽に連絡して」
レインが俺とは逆の耳にイヤリングを付けたらしく、それを軽く触った。
「分かった分かった。お前こそ大変だったら連絡してこい」
「ああ。それじゃ…少しの間離れる」
「ん。行って来い」
「行って来る」
両親は見送りに来ない。
俺達の事を未だに恐ろしいものを見るような目で見て来る上に避けている。
勿論お金だって出す訳がなく、レインと一緒に働いた金で俺達はそれぞれの学校に入ったのだ。
俺もレインもこの家に、この村にも戻る事はない。
次に会う時はいつ頃になるかは分からないが、お互い楽しく暮らせるようになればそれで良い。
「はああああっ!!!」
キィンと剣を弾く高い音。
そして体勢を崩した相手の目の前に剣を突き付けた。
「ま、参った…」
「勝者、ケイン!!」
腰を抜かす相手に手を差しのべ、体を起こさせた。
「また負けた…ケインお前強すぎないか」
「そりゃあ子供の頃から欠かさず鍛練してきたからな」
「俺も休まずやってきたつもりなんだけど?」
「ふっ、鍛え方が違うんだよ」
「ぐああその顔で言われると悔しい!!!」
周りが言うには俺の顔はなかなかイケているらしい。
確かに子供の頃レインが魔力を暴走させるまでは二人共ちやほやされていた気がする。
「この爽やかイケメンがよお…滅べ、爆発しろ」
「酷いヤツだな。お前らもそう思わないか?」
「いや、俺はグモートに賛成だ」
「俺も俺も!ケインは無自覚に人を誑かすのでその顔分けろっす」
「顔の皮を剥がせと?やめろやめろ!痛いだろ!」
「バイオレンスやめろケイン」
騎士学校にて気心しれたクラスメイト達との毎日はなかなか楽しかった。
バカやって騒いでこっそり寮に酒持ち込んだり。
……エロの方面は周りから「奥手過ぎる」「食い散らかされる」「初すぎるコイツを夜の街に放り込んだら二度と帰って来れない」と満場一致で遠ざけられた。
いやまあ良いけど。どんどん迫って来る女の人達怖かったし。
見た目綺麗だったのに魔王との死合いでも怯えなかった俺の体がすくむだなんて思わなかった。
前世で色恋経験なかったせいかもしれない。
「明日休みだし飲みに行こうぜ」
「お!良いねぇ賛成~!!」
「ただしケインは飲んだらすぐ帰れよ。絶対夜の色街に入るなよ。分かったか?」
「お、おう。そんな念を押さなくても分かってる」
授業が終わり、剣を片付けながら話を続ける。
「お前の貞操もそうだが…俺達が置いてけぼりにされるからな、イケメンのケインがいると」
「そうなんだよなぁ…ケインが女遊びに目覚めたらここら辺の良い女は根こそぎ持ってかれるだろーし。
ケインが奥手で良かったぜ」
「ちょ、やめろやめろ」
「顔真っ赤にして顔を引きつらせるケインは女の中の猛獣を高ぶらせるからなー。あと一部の男」
お、男!?
何故か尻に寒気が走った。
「ケインはあんま酔わないけど色気は増すからな。俺らはもう慣れたからあれだけどケインの顔に慣れてない奴らはヤベェよな」
「も、もう俺の話は良いから!早く飲みに行こう!?なっ!?」
「ははははっ!!!ケイン弄りはここまでにしておいてやるか」
「仕方ねーなー」
着替えて共同の風呂に入ろうとした所で耳元で「ケイン」と声がした。
「…レインか?」
“「ケイン、今日もお疲れ様。どうだ?順調か?」”
「今日もいつも通りだよ。この後飲みに行く」
“「良いな。俺もケインと飲みに行きたい」”
「もうすぐお互いに長期休暇だろ。それまで待て」
騎士学校に入って一週間もしない内にレインから連絡があり、何事かと思ったら俺から連絡が無くて不安だったと返って来たのだ。
緊急時でもないし別に辛くもなんともなかったのだが、レインの過保護が爆発したらしく、その日から毎日学校終わりにお互いの1日の出来事を話し合う事になったのだ。
“「早くケインに会いたい」”
「なんだ?寂しいのか?」
“「…多分?そう、なのか?」”
「分かってないのか」
“「こんなに離れた事なかったからな」”
そういえばそうだ。
俺達はいつも一緒に行動して、寝る時でさえ一時も離れなかった。
まぁ半分は人間不振なレインの為だし、もう半分はレインの過保護のせいだったが。
“「早くケインと触れあいたい」”
「馬鹿。それじゃ夜の街の変態みたいだぞ」
そう言った瞬間、レインの声が低く冷たくなった。
“「は?夜の街…?もしかしてケイン、人間を抱いた、のか?」”
「抱いた…?」
“「なら抱かせたのか」”
「レイン、良く分からない。抱いたとか抱かせたとか…なんか声に殺気乗ってるけど」
“「セックスしたのかって聞いたんだが?
………はあ。その分だと大丈夫みたいだな?」”
「あ、当たり前だろ!?せ、せ、セックス、とか…」
“「うん、今の反応でもっと安心した。
危うく世界を滅ぼす選択肢を選ぶ所だったからケインは自分を大事にしてくれ」”
「お、おお?」
そんな大袈裟な…。
レインの過保護が天井を突き抜けてて心配になるわ。
もし…か、彼女が出来たりしたらガチガチに束縛しそうで。
その後は長期休暇の初日に転移してこっちに来るだとか、待ち合わせだとかいつも俺が飲んでる店を教えて欲しいなど、予定を擦り合わせて通信魔法を切った。
「ケイン、話終わった?」
「ああ」
「双子の弟だっけ?毎日連絡してくるとか束縛の強い面倒臭い女並だな」
クラスメイトの中でもモテる奴が話し掛けて来た。
そいつがいうならレインはやっぱり束縛してしまうタイプなのだろう。
「わざわざイヤリングまで付けさせてるしな。弟の事気を付けてねーとお前、一生結婚させて貰えないぜ?」
「け、結婚なんてまだ早いだろ」
「あっはっはっ!お前押されたら弱いから女共にあっさり既成事実作られて結婚させられそう。
でもマジで気を付けろよな。お前は良い奴だし、不幸になって欲しくないんだ」
「分かった。有難う」
気を付ける…か。
何に気を付ければ良いのかは分からないが、困ったら相談してみるのも良いかもしれない。
「おいケイン、早く風呂入れよ。皆殆ど終わってるぞ」
「了解!」
風呂を烏の行水で済ませ、皆と夜の街に繰り出し、店に入る。
勿論色街では無く飲み屋の方である。
「~っくう!!やっぱ動いた後のエールは最高だなあ!!!」
「ケインに冷やして貰うともっと美味くなるからどんどん酒進んじゃう」
「魔力持ちが少ないとは思わなかったからなんで皆冷やして飲まないんだろうって最初は思ってた」
「この国に物を冷やせる貴重な魔力持ちとか貴族か突然変異の平民しかいねーよ。
俺らは身体強化魔法しか使えないし」
勇者だった時代は強くはなくとも周りは殆ど魔力持ちだった。
きっと魔王がいなくなって魔物達が減ったせいかもしれない。
「魔力といえば最近隣国きな臭いらしいな」
「ああ、魔力持ちが多いっていう。隣国で何かあったのか?」
「なんでも魔物が活発化しているらしい」
魔物が?
レインはそんな事一言も言ってなかった。
レインの学校には情報が届いてないのかもしれない。心配だ。
「それに…最近魔物の被害が増えてるって聞くな、この国でも」
「もしかしたら大規模討伐があるかもな。俺達も駆り出される可能性あるし」
「マジか」
大規模討伐ともなると俺の力を隠していられなくなるかもしれない。
魔王がどこに潜んでいるのかは分からないが、また世界征服を狙っているのであれば…俺は命掛けでそれを止めなければ。
「ケイン」
「久しぶりだな、レイン」
長期休暇となり、久々に会ったレインは身長が随分と伸びて顔立ちも幼さが抜けていた。
「ケイン、格好良くなったね」
「お前も体は細いが成長したんだな」
ただ……レインの体から闇の気配がする。
表面上は以前のレインと同じなのに、これは一体…?
「どうした?そんなにまじまじと見つめて」
「……ん。なんでもない」
俺は頭を振って気のせいだと誤魔化した。
「飲みに行くんだろう。ケインのオススメは?」
「そうだなー…」
クラスメイトと良く飲みに行く所で、個室がある店を選ぶ。
そこの方が落ち着いて話が出来るだろう。
毎日連絡しているとは言え、会って話をするのは本当に久しぶりなのだから。
「ここ、個室だからリラックスして飲めるんだよ」
「ほう。個室というのはなかなか良いな。ケインと二人きりで楽しめるのが気に入った」
「宿屋じゃ食堂でしか飲めないもんな」
「ああ」
食事とエールが届き、お互いの近況について話し合う。
こちらの国ではちょくちょく冒険者や騎士が魔物を減らしてなるべく大事にならないよう間引いているという話を。
レインからは隣国の魔物の話が聞けるのかもしれないと思った所で何故か俺の顔をガン見され、顔をしかめられた。
「ケイン色気が」
「色気?」
「俺の前で酒飲むのは良いけど他の人間の前ではもう飲まないでくれ。その顔はダメだ」
「でた過保護。今までに何度も飲みに行ってるのに」
「ケインの為を思って言ってるんだ。
それとも何か?人間を皆殺しにしてでも飲みたいか?」
「れ、レイン、そこまで怒る事ないだろ?」
「怒る?色気駄々漏れのケインを誰にも見せたくないだけなんだが」
なんだ…?闇の気配が濃くなっているのを感じる。
この気配、どこかで…。
「ケイン、聞いてるか?」
「あ、ああ。そ、それにしても隣国で大変らしいな?魔物の被害がどうとかって」
「そうだな」
「レインは魔物に襲われてないか?襲われたら心配でな」
「心配してくれるのか?襲われる事は絶対にないから大丈夫だ。
それより山奥に良い場所を見つけた。卒業後はそこに家を建てて二人で住もう。
なに、心配はいらない俺がケインを養ってやる」
レインの体から滲む闇の気配がとぐろを巻くのを感じた。
個室内にじわじわと充満していくそれに息が荒くなる。
「は、レイン…?」
「なぁ、ケイン。むしろ今からでも俺は良いぞ。
学校なんてやめて、一緒に暮らそう」
「な、にを」
「毎日ケインだけを見つめて暮らす日々は楽しいだろう。
子供の頃は当たり前過ぎて気付かなかったが、ほんの少し離れていただけなのにこうも胸がざわつくのだと知ったよ。
俺もお前も充分以上にこの世界の人間より強いんだからわざわざ鍛える必要なんてなかったんだ。
な、良いだろう?ケイン。一緒に」
「やめろっ!!!」
こちらに伸ばされたレインの手を叩き落とす。
なんで、俺はこの気配に気付かなかったんだ。
「はっ、はっ、はっ…」
息が苦しい。
信じたくない、信じられない。
「ケイン兄さん?」
そうか。今まで、近過ぎたんだ。
人間の気配に混じり、小さな時から感じていた違和感が普通になっていた。
それが、離れた事で分かってしまった。
最初から…お前は俺の側にいたんだな。
そしてまた隣国で悪さを始めた。
きっと俺に接触してきたのは何らかの準備が出来たから。
それならば俺が…兄として、勇者として…止めるしかない。
「お前が、魔王だったんだな」
「………どうして……?」
「お前の気配。以前は俺の気配と混じり過ぎて分からなかったが…今はとても良く分かる」
レイン…いや、魔王は肩を震わせ、笑った。
ようやく分かったのかと抑えきれない喜びが漏れたような笑みだった。
「隠していても仕方ないな」
「待て、ここでは被害が出る。外に見晴らしの良い平原があるんだ。
そこへ場所を移そう」
「ああ、良いぞ。勿論二人きりなんだろう?」
「…当たり前だ。他の奴らにお前の相手は出来ないだろう」
「良く分かってるじゃないか。くくく…」
魔王は嬉しくて堪らないと言うように笑う。
殺気は感じられない。
そもそも俺が勇者だといつから気付いていたのだろう。
もし早い内から気付いていれば魔物を操ってあっさりと殺せたはず。
最大の脅威は無くなるはずなのに。
「心底分からない、という顔をしているな」
「分からない。何故、早い内に俺を殺さなかった。
今もだ。街を巻き添えにすれば…」
「決まっている。お前の身を欲したからだ」
それこそまさに青天の霹靂。
自分の最大の脅威である勇者を欲する?
…ああ、もしかして最大の脅威だからこそ味方にしてしまえば敵はいなくなる、のか。
「俺がお前のものになると思うのか」
『なるさ。俺のものになれ勇者。
そうすればこの世界はお前と俺のものになる』
「断る」
平原で真の姿を現す魔王。
見慣れた双子の弟の姿がみるみる内に異形へと変わる。
金色の髪は漆黒に、背中からは同じ色の大きな翼、頭からはずるりと大きな捻れた角。
俺を見据える瞳は碧から深紅へと変化した。
「魔、王…!!!」
俺は魔力を使い、白銀の鎧を体に添うように纏い、手に光の剣を作り出し構えた。
『戦うか。それなら、またお前を殺して俺も死のう。
刺し違えてでも絶対にお前を殺すぞ勇者よ』
魔王は俺と同じように闇の剣を作り出し、悠然と構えた。
「何故…そこまで…?」
『何故?お前が俺を強く惹き付けるせいだ。
お前の輝きが俺をお前に縛り付けて離さない。
何度転生してでも俺はお前を…勇者を手に入れる』
どういう事だ。
世界より俺?いやでもさっきは世界は自分達のものと言った。
なのになんだ、これ。
分からない…魔王の考えている事が分からない…!
「…世界征服を目指すなら…俺はお前を何度も、何度も倒す。
この世界に仇なす存在であるお前を生かしておく訳には、いかない」
『そうか。ではまた殺し合おう勇者よ』
魔王の目に殺気は無い。
それなのに体が冷え込むような圧力が漂う。
それはそうだ。
魔王にとって殺そうが器を変えて新たな生を再び歩むだけなのだ。
そしてそれに俺を巻き込もうとしている。
俺を殺して死ぬと宣言するなら、俺が命を放り出せば魔王は勝手に死んでくれる…という希望は持たない方が良いだろう。
もし本当の事だとしてもすぐに死ぬとは限らないのだから。
「はぁあああああああッッ!!!」
光の剣に魔力を上乗せし、魔王に向かって振り下ろす。
それを魔王は同じ位の魔力を闇の剣に乗せ、打ち返す。
やはりこの魔王は一筋縄ではいかない。
『ああ。お前は美しいな…』
目を柔らかく細め、俺を見つめる魔王は殺し合いをしているとは思えない程に落ち着いている。
俺が光の剣を素早く切り結ぶ間も殆どその場から動かず、腕だけ動かして闇の剣で対応している。
その間も俺自身から目を離す事はない。
「…くっ…!!まともに戦え!!!」
『至極まともだが?それよりも勇者よ、剣を振る動きが鈍いぞ』
「誰のせいだと思ってる…!!」
その言葉に魔王は目を見開き、嬉しそうに口元を緩ませた。
『そうか。俺か』
「笑うな!!!」
魔王はきょとんとし、剣を持たない手で自身の口元を触った。
『笑っていたのか?』
「自分で気付いていないのか…!?」
『今気付いた。そうか、俺はよっぽどお前が好きなようだ』
「なっ!!!」
魔王はくすくすと笑いながらも手を休める事はない。
好きだというその口で俺を殺そうとする。
矛盾した行為におぞましさが込み上げる。
「く、う」
『どうした?剣がまた鈍っているぞ?俺を殺すなら本気で来ないとダメだろう…?』
「く、そっ…!!」
分かってる。それなのに本気で剣を触れない。
…双子の、弟だったのだ。
戦いにくいのは当たり前だ。
子供の頃のあれが全て演技だったとしても…殺す事に躊躇してしまう。
それが、俺の隙を招いてしまった。
「が…ふっ…」
殺気がないというのに容赦なく胸部を貫く闇の剣。
魔王の剣技に迷いはなかった。
「は、はは…まさか、相討ちすら…出来ないなんて…!
同じ力を持った弟に…魔王だと分かっていても、思った以上に、情があったらしい」
驚く程呆気なく戦いに終止符が打たれ、俺は勇者としての役割をこなす事が出来ずに魔王に破れ去った。
自分がこんなにも…弱くなっていただなんて。
もはや悔しいとすら思えず、笑う事しか出来ない。
『それは嬉しいな。
もっと上手くやれば今世でお前を俺のものに出来たのかもしれないな。
ふむ、次はどう攻めるか』
「は…冗談…。
魔物を操って、世界を征服するなら俺は、また刃を向けるぞ…」
『今度の世界征服はお前の為なのだがな』
「はっ、冗談でも、やめろ」
魔王が倒れる俺の側に跪き、剣を引き抜いた。
息が漏れる。肺が傷付いたのかもしれない。
『苦しいのはすぐに終わる。
が、その前に』
魔王は何を思ったか、俺と自分の服を魔法で破りさった。
そしてお互いの股間に手を伸ばし、ごしごしと扱き始めたのだ!
『弱ったお前なら体を重ねても抵抗は出来まい』
「はっ、はっ…まさか…!」
『最中は痛みと苦しみを消してやろう』
「ま、待て…!」
闇の剣で傷付いた体の身体能力は人並以下になっている。
そんな弱った力では魔王の手を退かす事も這いずって逃げる事も出来ない。
「あ、うあ、魔王ッ…正気、か!?」
『至極まともで正気だ。
お前の事はこの世界に転生し、一番側でじっくりと見させて貰ったからな』
「は、は、いつもお前の距離が近かったのは…」
魔王は口の端を上げ、股間を扱くのをやめ、俺の体に股がった。
そして俺の頭の後ろに手をやり、キスをした。
「… …!!」
一回では飽きたらず、何度も何度も降るキスの雨。
それは唇に留まらず、頬や目、鼻、額、髪にも。
「ま、お…っ!?」
『愛とは下らぬと思っていたが…この胸の内に熱く滾るものがそうであるならば、存外良い気分だ』
「んっ!魔王、俺とお前は敵…」
『ではない。少なくとも、俺にとってもうお前は敵ではない。
お前が拒むなら味方にはならぬがな』
「は、魔王が味方になるとかどんな展開だよ…」
魔王は俺の体を愛撫しながら愛しげに目を細め笑う。
魔王の言う好きが好意ではなく、愛だなんて…世も末、だな…。
『お前が俺を受け入れれば未来永劫俺はお前の唯一無二の味方だ』
「世界征服は、やめない癖に?」
『俺とお前の為だけに回る世界を望むのが悪い事なのか?』
「悪いだろうが…その他大勢を犠牲にするなんて、あり得ない」
『それならば再び巡ろう。何千何万と巡ればその内お前も諦めるだろう』
「………冗談、にしてくれ…」
魔王は静かに笑い、手を素早く動かした。
「あ、あ、あっ…!!♡♡♡」
生まれて初めての感覚が下腹部から全身を巡った。
そしてカッと熱くなったかと思うと、魔王に擦られていた自分の性器から白い液体が飛び出した。
「ッ…なん、白い…?!」
『夢精した事があるだろうに、何故驚く』
「だ、だって、こんな、はじめて…」
魔王は低く笑う。
面白くて仕方ないというように体を揺らした。
『俺がお前のはじめてを奪える事がこうも嬉しいものだとは』
「な、なにを…うああっ!!♡♡♡」
魔王が再びごしごしと俺の性器を擦ると、びくびくと体が痺れた。
『気持ち良いか』
「は、は、気持ち…?あっ、ああっ、魔王、やめっ、なんか、体が変だ…!!!♡♡♡」
『それが気持ち良いという感覚だ。快感とも言う』
魔王が俺のを擦る度に体が熱くなっていく。
魔法?デバフ?この感覚、淫魔に誘惑魔法を掛けられた時に似ている。
それなら解除してしまえば…!
「え、あれ…ふぁ、あ、なんで」
『状態異常だと思ったか?
これは正常な体の反応だ。
だが催淫を掛けても今のお前であれば解く事は出来まい』
魔王がまた唇にキスをした。
でも、今度は引っ付けるだけじゃなく、舌が入って来たせいで俺は目を見開いた。
「んっ!?んんんぅ…!!?♡♡♡」
俺の性器を触っていない魔王の手が、逃げようと動かす俺の頭をガッチリと固定する。
息が吹き込まれるかのように魔王と繋がった唇から舌から熱くて痺れる何かが口いっぱいに広がり、そこから体の奥まで流れ込む。
くちゅ、くちゅりと舌が動く度に触られた所がピクピクとして……心地、良くて……。
『良い顔だ。快楽に蕩けたお前は俺を興奮させる』
「ふ、あ……?♡♡♡」
魔王が舌舐めずりをし、再び唇を重ねた。
気持ち良い。
キスをされるのが、体を撫でられ、触られるのがこんなに気持ち良いだなんて。
クラスメイトにハグされたり肩を叩かれたり頭をぐしゃぐしゃ撫でられたりしても何も感じなかったのに。
「んっ、あっ…催……淫………?♡♡♡」
『正解だ』
頭を支えていない魔王の手が俺の尻に伸び、肛門を触った。
「ひあっ!♡♡♡」
穴を触られただけなのに、突然そこがヒクヒクと動き出し、魔王が指を入れると俺の体が勝手にビクッ!と跳ね、魔王の指をきゅうっ♡と締め付けた。
「ひ、ま、まお…!!あ、ああ、お尻、お尻が…!!♡♡♡♡」
『もう時間も無い。苦痛を取り除いたお前の体は催淫で更に快楽に弱いはずだ』
「あっあっ、ゆ、指、指ぃっ!!♡♡♡♡」
魔王が俺の尻を乱暴にぐちゅぐちゅと掻き回し、指を引き抜いた。
俺のお尻はどうなってしまったのか、魔王の指が気持ち良くて仕方がなかった。
それなのにもっと大きいのをお尻に当てられ、俺はひきつった顔を魔王に向けた。
「ま、魔王…お尻の穴に、そんな大きいモノ…入ると思うのか…?」
『苦痛は取り除いている。安心して快感だけを感じていれば良い』
「そ、そんな、これ、もしかしなくてもセッ━━ひあああああ!!!??♡♡♡♡♡」
衝撃が尻から頭の天辺まで一気に駆け抜けた。
それなのに魔王は俺に構わずがつがつと腰で俺の尻を叩き、腹の中の大きなモノで俺の気持ち良いを爆発させる。
「ああ"ッ!!♡♡♡♡♡まお"…♡♡♡♡♡ひあ"ッん!!♡♡♡♡♡
お、おな"がッ…あぐう!!♡♡♡♡♡」
『…時間が無いからと少し催淫を強めすぎたか。次は体が性に目覚める前からじっくり育てていく方向で行く事にしよう』
「なん"ッ、まお、ごれ"、やめ"ッ…ひああ!!ああああ!!!♡♡♡♡♡♡」
変な声が出てしまうのが止められない。
体がビクッビクッして気持ち良いが止まらない。
全身を甘い痺れが駆け巡り、魔王が腰を振る度に体がおかしくなっていく。
「おがじ、からだ、お"かしッ…ま、お…お…♡♡♡♡♡♡」
『…そろそろ限界のようだな。
だが、心配はいらぬ。
また俺達は巡り、同じ場所で目覚める。
次はもっと優しく抱いてやる。楽しみにすると良い』
「あ"ッ…、まお"…ッ、とめ"ッ…ああ"、あ"…… ッ………♡♡♡♡♡♡♡」
ああ、気が遠くなる。
さっきまでの快楽が嘘のように静まり、どくりと腹の奥に入って来た魔王の熱い体液が、急速に冷えていく俺の体にじんわりと染み込んでいく。
魔王が口付けしたのを最後に、俺は大量の失血により今世の命を失った。
「「オギャア!!オギャア!!」」
「奥様、男の子です!元気な双子の赤ちゃんですよ!」
…ああ、目が霞む。
ここは?俺は、一体。
苦しくて体が勝手に泣きわめくのを遠くでぼんやりと見ているような不思議な心地。
もしかして俺はまた転生したのか。
━(上手く転生出来たようだな)
頭の中に響くこの声…。
いや、そんなまさか。
━(前世では敢えて隠していたが今世は最初から明かす方向で行く事にした。
俺から死んでも逃げられると思うなよ、勇者)
魔王。
まさかまた双子としてお前と一緒になるだなんて…何か作為的なものを感じる。
━(逃げる訳ないだろ。お前を倒すのは俺だ。
…だけどッ……だけど死ぬ前にあんなっ…あんな、事…!!!)
━(…ん?くくく…そうかそうかなるほど。
今世は上手くいきそうだ)
━(な、な、何が…!!)
━(もう少し体が出来た頃に、覚悟しておけ)
━(だから何を!!!)
それきり魔王から念話は届かなくなった。
魔王の余裕な態度に体がムズムズする。
この時の俺には、ハイハイが出来るようになってから魔王が俺に物理精神共に積極的に関わりに来るだなんて知るよしもなかった。
【その後のお話や補足】
執着系俺様。
受けを殺して転生魔法を掛けて自死して追い掛けてくるヤバいヤツ。
また赤ん坊になってしまった勇者は異常な程早くハイハイが出来るようになった魔王にまとわりつかれる毎日を過ごす。
ハグキスを一日中され、逃げ出す為に自分もハイハイが出来るようになり、魔王は更に魔法を使って勇者を追い掛け、勇者も負けじと魔法で対抗してどったんばったんしてる。
それを見た今世の家人はヤンチャねぇで済ますおおらかな性格。
魔王の執着は凄まじく、勇者が疲れきって寝てしまうまで追い掛け回す。
大きくなったら外に出るようになり、外でも追い掛け回される羽目に。
必ず何をするにも魔王はベッタリ。
仲が良いのねで済まされるのを勇者はげっそりとしている。
幼児なのにベロチューされて、今から快感を育てようとする魔王に貞操の危機。
しかも寝た後に体を弄くられている事を敏感になってきた体で気付いて顔を真っ赤にする。
それを魔王は子供らしからぬ妖艶な流し目で舌舐りして笑う。
将来は魔王から逃げられなくなって陥落させられる事間違いなし。
ちなみに今世の勇者も魔王もタイプの違う雰囲気を漂わせた双子イケメンな為、両方に女の子が群がるのだが、魔王は笑顔でバッサリあしらい、勇者はタジタジになってる所を魔王に救われるのが日常。
前世では勇者に近付く有象無象を鬱陶しく思っていたが、今世ではそれを利用して勇者を自分にすがらせようと画策している。
押しに弱いし、色事も苦手な奥手勇者。
押し倒されて既成事実を作られるといけないからと魔王は勇者に過剰な防衛魔法を掛けている。
魔王は魔物を統括してこの時代でも密かに世界征服を狙っており(何者にも邪魔されない二人の世界を作る為。勇者はどうしても周りに目を向けてしまうので)、勇者はそれを察知して牽制しながらも魔王からの誘惑から逃げようと今日も頑張っている。
今回の話で、子供の頃魔力暴走したのはわざと。
そして執着ヤンデレ魔王弟が勇者兄から離れて隣国の学校に行ったのかは、世界征服の足掛かりに魔物の多い隣国で魔物を配下に置く為と兄に魔王だという事がバレないように活動する為。
逆に離れたせいで魔王だとバレたのは誤算だった。
ちなみに同じ設定で分岐を考えていたものがありまして、
15歳になり学園でも一緒だったある日、弟が突如豹変し、主人公を襲う。
妙な力を使い、主人公を蹂躙した弟は生まれ変わった魔王だとのたまう。
汚された事により勇者の力は失われ、魔王の体無しで生きられなくされる。
勇者は弟を返せと叫ぶが、弟自身も知らず魔王の精神の影響か、昔からどんな時でも一緒だった主人公が好きであり、一つになりたい夢を絶賛叶え中なので魔王に同調している。
というのも良いなぁと。
どちらの分岐でも共通しているのは魔王が前世死ぬ間際に勇者に熱烈な想いを抱き、転生の魔法を二人に掛けた位には執着している。それが双子として生まれたので魔王はしてやったりとほくそ笑んでいる。
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