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第7章 departure

西高のバスケット部は悪夢の優勝を手に入れた。キャプテンは全治3ヶ月。週明けには、 柏木の素行の悪さは瞬く間に生徒に広がった。 「…柏木は、これから医者を目指すそうだ」 「医者?なんでまた」 「柏木のお父さんは医者だったんだ」 「へえ、医者か。ん?だった?」 「あぁ。10年ほど前までな。だが、医療ミスで医師免許は剥奪されている」 「…それは…辛いな」 「父親はは重度のアルコール依存性だ。 因果関係までは調べていないが、まぁ…関係があるのだろう。柏木は四ツ葉女学院の幼稚園卒園後、公立の小学校へ入学しているしな」 昼休み、俺と露木は屋上で昼食を取っていた。 首が痒い。俺が首をこっそり触ると露木が俺の顔を覗き込む。 俺は、柏木を今回の対象者に…選ぶことにした。きっと柏木の過去が今の完璧な柏木を生成させたのだろう。 だが柏木が女性に行った行為は許されるものでは無い。医者を目指すだと?何今更清い心で将来を立て直そうとしてんだ。 胸糞悪い。 苛立ちと共に首の皮膚が疼く。 いや、首だけでは無い。背中。太腿。脹脛。 身体全体から居た堪れない痒みが沸き上がってきた。 「痒いか」 悔しい。薬を塗られる行為は恥ずかしいのに反抗できない。 同時に…期待している。露木に触れられる事をを。 「…痒い」 露木の手が俺に伸びる。 バリ…。バリバリ。 音を感じて露木の手の甲を見ると、白い鱗が広がっていた。何度も見ていないのに、日々のストレスが解けるように緊張が解ける。 「おい、学校だぞ」 「ふふ、大丈夫です。角は出していません」 「…早く塗れ」 サァァァァ。 そろそろ梅雨に入るのに、春風のような暖かくて心地いい風が吹いた。 パチ…パチ… 電流の流れる露木の瞳から目が離せない。 捕らわれた。動けない。 違う… 俺はこの龍に、捕らわれたいのだ。 自分の全てを… さらけ出したい… 「星様…」 鱗に覆われた手が俺の耳に触れる。 気持ちいい。 苦しい。 切ない。 気持ちいい。 薬なんてどうでもいい。俺が触れて欲しいのは… 露木の唇が俺の唇に触れた。 「星様。そんな欲しがった顔。青龍がしてはいけません」 …は? …はぁぁ!? 「なななななななにしてんだよ!! はあ!?意味わかんねー!!」 「薬を切らしていまして。私の唾液は同じ効能がございます」 片手でポケットに何かをサッとしまって ニコニコ微笑み、俺の唇に指が触れる。 「!?」 「…2、3日は大丈夫ですが…」 ジリジリと露木の唇が近づく。 「また…接吻を……なさいたいですか?」 こここここいつ……!! 変態ド変態クソ白龍!! ななななななななななのに……なのになのに………なのに… したい… 「…失礼いたしました、星様に行きすぎた真似を」 露木は、俺から離れると苦笑いした。 …本当に薬の代わりだったのか。 「三島様と柏木様の元交際相手の石田リカ様は…。今回、メイストームの影響を受けられておりました」 「え」 「…三島様のご家系は…代々政界を担う三島家です。直近で言うと、財務大臣の三島明正です」 空いた口が塞がらない。莉央ちゃん、ドーナツ売ってたぞ。 「石田家は、近年石田製菓の食品偽装、パワハラセクハラでご両親の不正に引っ張られておらられました。メイストームの対象になるのは必然です」 「…」 「三島様は…対象者でしたが…我々は…外す予定でした」 「本当にクソだな」 「…申し訳ありません」 「…」 「…三島様は…我々の予想を裏切られました」 露木はため息をついて、目線を真っ直ぐに戻した。 「人間は…どの生物よりも、感情を主に生を真っ当しておりまります。それは我々から見ると、愚かで、浅はかで…とても…愛おしい存在です。 特に、日本人は自分を犠牲にしてまで相手を救い愛する行為が美徳なのです。 …三島様は、柏木様と関わらなければ…」 「関わらなければ?」 「素晴らしい人生を歩まれたでしょう」 グラウンドからは、昼休みにフットサルをしている男子高校生の笑い声が聞こえる。 「ですが、三島様は素晴らしい人生より柏木様を選びました。愚か者です。本当に」 露木は目を細めて微笑むと、やれやれと手を挙げお決まりのポーズを決めた。 「…愚か者だけど、好きな人と一緒に居ることを選んだんだな」 「きっとこの先、柏木様との交際をご両親が許さないでしょう。ですが、三島様は強いお方です」 露木は立ちがって、少し伸びをして 振り向いた。手の甲の鱗は消えている。 「決めた。柏木を今回の対象者にしてくれ」 「了解。柏木の脚は…きっと完璧には戻らないだろう。だが、今までの行いに比べたら軽い方だ」 …決めてしまった。 罪悪感が込み上げるのに…どこかで俺は決断する事を受け入れている。 最悪だ。 「もう1人は。2人いるんだろ」 「いえ、1名で。柏木の行いは2名分の不幸に値する。だが、いじめの対象者はいいのか?」 「…」 そうだ、いじめの主犯格とか親の財布から金抜いてたやつとかいたな。 「今回は見送ろう。心残りだろうが、人間界の幸は巡り巡るものだ」 食べ散らかしたコンビニのおにぎりやパンのゴミをまとめて露木は歩き出した。 その時、俺のスマホが鳴った。 お母さんだ。なんだ?トイレットペーパー切らしたとかか? 『星、今すぐ帰ってきて』 声が震えている。 「母さん!?どうした!?」 ツーツーツー。 「…早いな。ったく…。帰るぞ」 露木は強い力で俺の腕を掴み、階段を駆け下りていた。

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