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陸上部である二人は朝練してきたのだと分かる.第二ボタンまで開けたシャツの下にユニホームらしきものがちらりと見えた。 運動部であるために日焼けし、さらに高身長であるためか、よく目立ち、それに加え爽やかな笑顔を見せるものだから、一部の女子は憧れの眼差しで見ているようだが、月岡は恐れていた。 というのも、こないだの授業の合間の10分休憩の時。 いつものようにスケッチしていると、青葦の席から声が上がった。 見ると、席を囲むように友人らが机に突っ伏していたらしい青葦が顔を上げている時のようだった。 「疲れているのか?」「大丈夫かよー」「走りすぎじゃね」と口々に言う友人らに、「んー⋯⋯」と億劫そうに返事した青葦と不意に目が合った。 何気ない瞬間に目が合った驚きで目を見開く月岡に青葦は言った。 「見てんじゃねーよ」 不機嫌丸出しで言われた言葉に月岡は硬直した。 見てんじゃねーよ。見てんじゃねーよ⋯⋯。 情けなく身体が固まっている月岡の頭に容赦なく反響する。 別に見ていたわけじゃないのに。たまたま目が合っただけなのに。 「どうしたどうした急に」「俺らが悪かったって」と言う友人が弁明するようにひしめき合ったことで、目を鋭くさせた彼の姿は見えなくなった。 金縛りが解けたように身体の緊張が解けたものの、その日はスケッチを描く気力が湧かなくなったのだ。 密かな楽しみを奪われた。 あまりにも酷い。なんであんなことを言われなければならないのか。 機嫌が悪かったのか何なのか知らないが謝って欲しい。 彼の席に行って言ってやりたかったほどだ。 しかし現実は言えずじまい。なんて情けない。 ふつふつと湧き上がる怒りがぶつけられず、悔しさが残った。 あの時のことを思い出してしまうと、やる気が削がれてしまう。 共に青葦の席に行くらしい彼らの姿を最後まで見るまでもなく、スケッチ対象に向けた。

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