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26.クロエネダの行く道は!?※R18描写なし

 クロエネダの面々と会えたのは、その日の夕方になってからだった。ギルドの受付嬢に見かけたらセナが探していると伝えて欲しいと告げておいたおかげで、自宅で片づけをしていたセナの所にわざわざやってきてくれた。  これまでの礼と挨拶を兼ねて夕食をご馳走したいと告げて、ギルドの側にある酒屋に腰を落ち着けた。静かな店ではないが、隣のテーブルの人間に話を盗み聞きされない方がありがたい。 「かんぱーい!」  ずらりと並ぶ肉料理と焼野菜、パンやスープ、チーズの盛り合わせと言ったメニューに赤い果実酒で乾杯する。グイっと半分ほど一気に飲み干したウィルは、堪らないとばかりにため息をついてから本題に入った。 「んで、セナは結局どうすることにしたんだ」 「俺は冒険者ギルドの本部に行ってみようと思います。あそこには、俺みたいな人の資料がたくさんあるし、同じような人が働いているらしいので」 「ギルド本部か、ユンインの向こうだろ」 「はい」 「まあグロウがいるから大丈夫か」  セナの隣に陣取って皆と同じようにグラスを傾けていたグロウは、任せろとばかりに蔓で自分の植木鉢を叩いて見せる。正面に座ったイモの焼いたものをグロウに向かって差し出しては、パカリと開いた口に放り込んで興味深そうにしている。 「皆さんはギルド本部に行ったことあります?」 「あぁ、一度だけな」 「どんなところですか」 「どんなって、世界で一番でかいギルドだよ」 「でかい」  ざっくりとしたウィルの言葉に、ウィルの隣に座っているルーシャが呆れ顔で解説をつけ足してくれる。 「それじゃよくわかんないでしょ。ギルド本部は世界各地にあるギルドからの情報を集約してる場所よ。ダンジョンの情報から、モンスターの生息地、習性。スキルや魔法の研究もやってるわ。各国の支部から定期的に報告書が送られてくるらしいの。ギルド独自の情報も多いわ。セナが自分の事を知りたいなら、本部に行くのも充分アリだと思うわ」  差し出される食べ物を美味しそうに頬張っていたグロウに、ロコが今度は酒の入った瓶を手渡す。蔓を巻き付けて受け取ったグロウが人間と同じようにそれを飲み干していく。 「皆さんはどうするんですか」 「それなんだけどさ……」 「意見が割れてるのよねえ」  ルーシャが頬杖を突きながら焼いた腸詰をフォークで突き刺し、深いため息をもらす。そこでグロウに酒を飲ませていたロコが顔を上げてセナの方を見た。 「俺はセナと共に行く方がいいと言ったんだ」 「え?」 「スキルの研究がしたい。生態の分かっていない魔人の研究も同時にできる」 「あー……ロコさんはそうですよね」  セナが一日何をして魔力をどれくらい消費したか、何を食べてどれくらい魔力が回復したか、という日記じみた記録を覗きに来るぐらいだ。ユレネの洞窟では成し得なかった、魔素濃度の高い場所で魔力が回復するかどうかの実験も残っている。 「アタシは予定通りケイロンがいいと思うのよね。ケイロンの先にはダンジョンも多いし、高ランククエストもあるし」 「俺はどっちでもいんだけどなー。セナにはいいとこ見せられてないし、一緒に行くのもいんじゃねって」 「僕はみんなの選択に合わせようと思う」  そんな感じで、ウィルとゴルシュは中立を保ち、ロコとルーシャの意見が割れて決着がつかないらしい。クロエネダでは多数決ではなく、話し合いでの方針決定を基本としているようで、どちらかが折れない以上はどうにもならないのだとか。 「そもそも、セナのスキルの研究だとかなんだとかはロコの趣味でしょ?セナだって自分のこと知りたいって言ってるんだから、ロコじゃなくても誰かが研究するわよ」 「ああ、趣味だ。だがこれは確実に魔法研究の今後に役に立つ。だがセナにはまだ知識が足りない、自分の体の事だったとしてもどんな事が重要であるか分からないはずだ。そこで、魔力に精通してる俺がいれば過不足なく情報を集められるだろう」  恐ろしく自信満々に趣味だと言ってのけたロコだが、ルーシャは納得していないようだった。ルーシャは魔法の研究などには興味がなさそうな様子だったが、当たり前と言えば当たり前だろう。 「それに、ケイロンにどうしても行かねばならん理由もないだろう。クエストの難易度はケイロンでもギルド本部でもあまり変わらない」 「ケイロンじゃなくて、その先に用事があるのよ。ケイロンの西側はほぼ未開拓の土地でしょ。未踏破のダンジョンもあるし、未発見のダンジョンも多いわ」 「ギルド本部の東もだ」 「…………」  形勢はややルーシャが悪いようだ。つんと澄ました顔でチーズを齧るロコに、不服そうな顔をしたまま果実酒を傾けている。 「何かギルド本部へどうしても行きたくない理由があるんですか?」 「別に、そういう訳じゃないのよ」  ふと口をついて出た疑問に、ルーシャは視線だけでセナを見て返事をする。けれど彼がなぜケイロン行きをここまで推すのかという理由は終ぞ聞けなかった。何かこの場で話すには不都合な話なのではと考えれば、セナは口を閉ざすしかない。恐らく、この場で話せない理由とは自分だろうと気づいたからだ。 「セナはいつ頃この街を出るんだ?」 「えーと、まあ、そういう事ならクロエネダの皆さんの答えが出てからにしようかと思います。急ぐ旅でもないし、急かすのもアレですから」 「そっか、ありがとな」  ウィルが笑って言い、それから視線をずらして驚いた顔をした。ウィルの視線を追いかけて自分の隣を見ると、グロウが頭の木をぐったりとしな垂れさせている。 「え?グロウ?大丈夫?」 「飲み過ぎたみたいだな」 「あ、あー……」  プスプスと寝息のような呼吸音を立てているグロウの前のテーブルには、空になった果実酒のボトルが置かれている。半分以上残っていたはずだから、会話している短時間に全て飲み干してしまったらしい。 「魔人も酒に酔うのか」  ロコが身を乗り出してしな垂れた木を持ち上げても、グロウは眠ったまま反応しない。苦しそうにしている様子はなさそうなので、単純に酔っぱらって眠っているだけだろう。 「酔うみたいですね」 「その緑の部分に酒をやっても酔うのだろうか」 「やめてあげてください」  酒の瓶をこちらに向けてくるロコも酔っているのか、その後も追加で酒を頼むたびに浴びせようとしてくる。それを手で押し返したり、あるいは代わりに飲んだりして、気が付けば大分酔っぱらう羽目になってしまった。

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