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王都から未開地域までの間の森を抜けると、粗雑な小屋が見えてきた。
アイレは風の足場をいくつも先にながら、上空からひょいひょいと地上に飛び降りていく。
風の足場を蹴るたびに、リオナのにおいが鼻についた。
血と、それから香のような、甘く香しいものだ。ふわふわの髪が靡くのが鬱陶しかったのか、途中でぐるると唸って抗議をしてきたが、もはや無視だ。
ーー移動をしながら考えた。2週間前までの自分は、やはりどうかしていた。
王族に対する猛烈な殺意。そして、異様なまでの反発感情。
アカサの民が熱病に冒されたことを、なにひとつ対処をしてくれなかったレオナード王を恨んだ。
だから暗殺を決行した。
でも、実際にレオナード王を見た時に、自分のなかに生じたアレの正体が、未だにわからない。
強烈な引力のような、エレメント詰まりが弾けたような、そんな感覚で殺意自体が塗り替えられた。
ふと、腕の中のリオナを見る。態度こそふてぶてしいが、表情にはまだ幼さがある。本当にこのリオナが、熱病や災害で死に行く民を、見て見ぬふりをしていたのだろうか。
本当にそうなら、あの墓地での空虚な目と、いまにも消え入りそうな赤い目は、一体なんだったのだろう。
「ほれ、見えてきた。あれが未開地域」
眼下に微かに見えてきた。
豆粒くらい小さかったものが、徐々にその輪郭をはっきりと表していく。リオナは眉間にしわを寄せて、その未開地域の様子を眺めていた。
「ナクシャの手前、ヴァナ・ドゥワーラ……森の門あたりか」
ぼそりとリオナが言う。アイレは驚いて、リオナを見下ろした。
「意外。知ってんの?」
「俺をなんだと思っている?」
「フェネックにお姫様抱っこされてる、意外にも高所恐怖症の元王様」
けけっと笑いながら言ってやると、今度はしっぽで勢いよく腿裏を叩かれた。
「いってっ!」
衝撃で足場を踏み外し、数メートル垂直降下したが、すぐに別の足場に片足をかけた。リオナから一瞬、小さな声が聞こえた気がして、しらっとした目で見下ろしてやる。
「あんた、生殺与奪を俺が握ってるってこと、忘れてねえよなあ?」
リオナがじろりと上目遣いに睨んでくる。かなり乱れた、長い髪の間から覗く顔は、満月に照らされているせいか、牢の中よりも、そして二週間前よりも、幼く見えた。
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