1 / 1
第1話
「お前って、酒飲むと記憶失くすタイプ?」
と突然、高瀬が言い出した。高瀬は大学の同級生で、淡々とした雰囲気の男で、暑苦しい他の友人と違って、付き合いやすい。
「は? 知らんけど。記憶失くすならそれも解らねえんじゃね?」
「そうか」
高瀬はそれ以上、なにも言わず、スマートフォンに視線を落とした。
(なんだったんだ?)
腑に落ちないながらも、それ以上、聞く理由もなく、オレも放置してしまった。高瀬の態度から、それほど大事ではないと判断したからだ。
数日後、また高瀬が不意に聞いてきた。
「お前ってさ」
「おん?」
「エッチの時、やたら饒舌になるタイプ?」
「ちょっと何言い出すのキミ」
「参考に」
「いや、参考にじゃねえよ。何聞いてんだよ」
急な質問に、耳まで熱くなる。淡々と聞くことじゃないだろ。あとなんだ、そのよく解らん偏見。
高瀬はじぃっとオレの方を見てくる。居心地が悪い。
「で?」
「で? じゃねえよ。んなわけねえだろ。普通だよ。あと恋ばなするならそういうテンションで言おう?」
「別に恋ばなじゃない」
そういって、高瀬はスマートフォンに視線を落とす。もうオレに興味などないようだった。
(なんだったんだ……)
◆ ◆ ◆
数日後。
オレは床に頭を擦り付け、土下座をしている。
「これ」
と、高瀬が差し出したのは、彼のスマートフォンで。録画されていた動画に、思考を停止させる。
『ここ、弱いんだろ? びんびんに勃って可愛いじゃん』
『奥好きなんだ? ぐりぐりってしてやるから、脚開けよ』
『あー、マジですっげー、良い。お前も良いだろ? ナカすげーうねって、キュンキュン締め付けてくんじゃん』
『あ、今ビクビクってなった。イきそ? こっちも、出るっ……』
動画から聴こえてくる声は、どう考えてもオレの声。加えて、高瀬の艶かしい、
『あっ』
『やぁっ、そこっ……』
『ひぅっ……奥っ……、ダメぇ……』
って声も聴こえてくる。ベッドサイドにスマートフォンを隠して撮ったらしい動画には、激しく動くオレの姿と高瀬の脚が見切れていて、言い逃れしようがない。
「マジで、済みませんでしたっっっっっっっ」
額を床に擦り付け、謝罪する。
ヤバい。
勃起してる場合じゃない。
人として終わってる。
「まぁ……」
高瀬がポツリと呟く。
顔を上げてチラリと彼の顔を盗み見ると、頬がピンクに染まっていた。
可愛い。
いや、そうじゃない。反省しろオレ。
いや、そもそも高瀬のことは可愛いと思ってたけどさ。オレってノーマルだったじゃん。何しちゃってんの。
「――嫌じゃ、なかったから」
「へ?」
顔を上げると、高瀬は赤く、蕩けた顔をしていて。
オレの理性は、終了を告げた。
完
ともだちにシェアしよう!

