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07 初めての……

 俺たちは、出会ってからのことを振り返り、思い出話に花を咲かせていた。 「なぁ、泰雅(たいが)はさ、俺のこといつから好きだったんだ?」 「初めて会った時から」 「はっ? え、それって、俺に一目惚れしたってこと?」 「目が離せなくなった」  それって、俺がそそっかしくて目が離せないって意味じゃないよな? 「守りたいって思った」  俺は思わず両手で顔を隠した。そんなにストレートに言われたら、恥ずかしくなっちゃうよ。 「圭太(けいた)は?」  逆に聞き返されて、俺は顔を上げた。 「いつからかはわからない。けど自覚したのは、中学のバース検査で、泰雅がアルファで俺がベータとわかった時かな」 「バース検査の時?」 「オメガなら……そう考えてしまって、ああ、俺は泰雅のことを友達としてじゃなくて、恋愛の意味で好きだったんだって気付いたんだ」 「俺は、泰雅がベータでも、諦めるつもりはなかった」  やっぱり、今日の泰雅はいつもと違う。多分ずっと心の中にしまっていた想いを、惜しげもなく伝えてくれているんだろう。  普段寡黙な分、言葉の破壊力はすごいな。俺はさっきから、嬉しい気持ちと照れる気持ちで、感情が大忙しだ。 「俺は、ベータだから友達として隣にいられればいいって思ってたけど、俺も諦めなくて良かったんだな」 「圭太を離すつもりはない」  なかなかの激重感情だけど、俺はそれがすごく嬉しい。 「ありがとな。……俺も、泰雅を誰にも渡さないからな!」  クリスマスって、本当に特別な日なんだな。  泰雅も俺も、普段なかなか言えない内に秘めた激重感情を、惜しげもなくさらけ出せるんだから。 「あ、そうだ! プレゼント用意したんだ!」 「俺も」  自分で言った言葉なのに急に恥ずかしくなって、熱くなった顔を手でパタパタと仰ぎながら、用意していたプレゼントを取りに行った。 「俺からのプレゼントは時計。泰雅、腕を出して?」  普段使いできるものがいいなって思って、時計にしたんだ。泰雅ならもっといいもの持っているだろうけど、似合うだろうなって思いながら選んだ特別な時計なんだ。 「うん、やっぱり泰雅に似合うな」 「ありがとう、大切にする」  泰雅は腕につけた時計を嬉しそうに眺めると、今度は自分が袋の中のプレゼントを取り出した。 「俺からは、ネックガード」 「かっこいい! つけてみてもいいか?」  黒色の細めのネックガードは、役所にオメガ申告した時に渡されたものと違って、シンプルなのにおしゃれでめちゃくちゃかっこいい。  俺は泰雅にネックガードをつけてもらうと、鏡の前に立った。  オメガになったとわかった時は戸惑ったけど、オメガの象徴であるネックガードを躊躇いもなくつけられるのは、泰雅が隣にいてくれるおかげだ。 「似合ってる」 「ありがとな!」  俺はそう言いながら、そっとネックガードに触れた。  アルファがオメガにネックガードを贈るのは、『俺の物だから触れるな』という周囲への警戒の意味もあると聞いた。  ベータだった俺にとって、オメガがアルファの所有物のような扱いを受けるのは、少し気になっていた。  でも、泰雅は俺を守るために、ネックガードをプレゼントしてくれたんだ。……それに、泰雅になら束縛されてもいいなんて、少し思ってしまった。  俺たちの関係は、確実に少しずつ前に進んでいるんだなと思ったら、じわりと胸が熱くなった。  今……かもしれない。  俺たちの間に流れた沈黙を破るように、俺は勇気を出して口を開いた。 「……あのさ。プレゼント、実はもう一個あるんだけど」 「まだあるのか?」 「プレゼントは……俺! なんちゃってな! あはは、うそうそ、冗談!」  意を決して言ったのに、やっぱり急に恥ずかしくなって、俺は慌てておどけて見せた。  古い漫画じゃあるまいし、『プレゼントは俺』とか、ないよな。ほんと俺、なに言い出したんだろ。  かき消すように『なしなし、今のなし!』そう言いながら俺は逃げるように窓辺に向かった。  夜景に視線を移しながら、はぁ……と小さくため息をついたら、後ろからぎゅっと抱きしめられた。 「圭太……」 「は、はいっ……!」  思わず声が裏返ってしまった。 「もう一つのプレゼント、もらってもいいか……?」  耳元で囁く泰雅の声に、俺の心臓は耐えきれないほどバクバクと大きな音をたてている。  でも、俺はそのつもりで今日を迎えたんだ。想い出に残る聖夜にしたくて、ずっと考えていた。  泰雅は冗談にしないで、ちゃんと俺の決意を受け止めてくれたんだ。  俺は、泰雅にバックハグされたまま、こくんと頷いた。 「圭太、こっち向いて」  俺は、ゆっくりと振り返った。 「圭太、愛している。大切にするから……」  泰雅が俺を見る視線があまりにも優しすぎて、俺はただ黙って頷くことしかできなかった。  でも泰雅には、俺の気持ちはちゃんと伝わっていると思う。  泰雅は俺の頬に優しく触れて、大切そうに唇にキスを落とした。 ◇  幸せな夢を見た。  ずっと好きだった泰雅と、そういう関係になれた夢。  夢の中の泰雅は、めちゃくちゃ俺を大切にしてくれて、俺はもう幸せすぎて……。  夢の余韻に浸りながらゆっくりと目を開けたら、見慣れない天井があった。  あ……夢じゃ、ない?  ここがホテルの一室だと気づいた瞬間、昨日のことが走馬灯のように思い出された。  急に恥ずかしくなった俺は、思わず毛布を頭まで引っ張り上げた。 「起きたか」  泰雅の声がした。毛布の中から恐る恐る顔を出すと、泰雅が髪の毛を拭きながら、シャワー室から出てきた。 「シャワー、入ってこい」  なんかとても気恥ずかしくなって、泰雅の顔もちゃんと見れないまま、俺はシャワー室に駆け込んだ。  シャワー室から出ると、テーブルには朝食が準備されていた。  昨日の夕飯も美味しかったけど、朝食もすごく美味しかった。 「帰りに、お土産を買って帰ろう」 「お、おうっ」  普段と変わらない態度でいたいのに、やっぱりどうしても意識してしまう。  そんな俺を見て、泰雅はふっと笑って俺の頭にポンと手を置いた。その腕には、俺がプレゼントした腕時計が付けられていた。 「じゃあ、行こうか」 「おう、行こう!」  泰雅は、俺が不安にならないように、いつもと変わらない態度で接してくれてるんだ。だから俺も、意識せずにいつものペースに徐々に戻っていく。 「あ! 道の駅でソフトクリーム食べたい! 今度はバニラ以外がいいな!」  俺がどさくさに紛れて泰雅の手を握ったら、ぎゅっと力強く握り返してくれた。

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