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24 いつものメンバー
高校三年生の秋にオンラインに切り替えて以来、ひさしぶりにいつものメンバーで集まる。卒業式に少し顔を合わせたけど、ゆっくり話をしている時間もなかったから、今日は楽しみだ。
けど、実はかなり緊張している。
「うー、緊張するなぁ」
「大丈夫だ。あいつらなら」
「だといいなぁ。……みんな、驚くだろうな」
今日、俺がオメガに転化したことと、泰雅 と番 になったことを報告しようと思っている。
第二の性の話題はデリケートな問題だから、報告するタイミングを悩んでいたんだ。仲良しグループには、先に話をしたいと思っていたから、久しぶりに集まろうと声をかけてもらったのは、ちょうど良いかもしれないと思った。
「おっ、来たか圭太 」
「ああ、久しぶり」
「なんだお前、柄にもなく緊張してんのか?」
「俺だって緊張くらいするわ!」
こんな軽快なやり取りをしていると、高校時代を思い出す。……って言っても、まだ卒業して半年も経ってないんだけどな。それでもすごく生活が変化したから、高校時代がすごく遠いような気がしてしまった。
「大樹 はまだ来てないのか?」
「飲み物とお菓子買ってくるように頼んだんだ。そろそろ来るんじゃないか?」
「あ、そうだ。俺も少しだけど持ってきたんだ」
「おお、サンキュ」
俺はそう言いながら、委員長に袋を差し出した。昨日泰雅が準備してくれたものだ。俺は手土産まで気が回らなかったから、さすがは泰雅だなって感心した。
「ここに来るのも、久しぶりだなぁ」
「そうだな、高校三年生になってからは、ここで集まってなかったよな」
今日集まったこの場所は、委員長の家族経営の居酒屋だ。中学の頃から、昼間に部屋を借りてよくみんなで集まったものだ。カラオケ付きの個室があるから、多少騒いでも迷惑がかからない。
程なくして、大樹も部屋に入ってきた。
「よぉ、圭太。久しぶりだなー」
「大樹! お使いありがとなー」
「泰雅、相変わらず空気と化してるな」
「別に、今はまだ話すことがないだけだ」
「相変わらずだなー。圭太以外には塩対応」
大樹はそう言って笑った。こんなことを言っても、泰雅もふっと笑って許せるような関係なんだ。
買ってきたものなどを準備し、俺たちはそれぞれ分かれて座った。
「……えっと、なんか、気を遣わせちゃったみたいで、ごめんな」
まずは、ひさしぶりと乾杯の音頭をとったあと、俺はいつもより小さな声でみんなに告げた。なんて言い出したらいいのか悩んだけど、やっぱり、気の置けない奴らにも気を遣わせてしまったことは、不甲斐ないって気持ちもあるんだ。
「なんだよ圭太、水臭いな。気を遣ったわけじゃないよ。ほら、泰雅に圧をかけられたからさぁ」
「そうそう。圭太は今大事な時だから、連絡するなら俺を通せってな」
「あー、泰雅。今、それのどこが悪い? って顔してるな?」
「お前、中学の時からずっとそうだもんな。圭太のボディーガード……いや、番犬だな」
委員長と大樹は、言いたい放題言ってケラケラと楽しそうに笑った。好き勝手言われてるぞ? って思ってチラリと泰雅の方を見たら、バチっと目が合った。
「初めて会った時から、圭太を守るって決めたから」
泰雅は恥ずかしげもなく、俺をじっと見つめたままサラッと言ってのけた。
「おーおー、さすがだな、泰雅。圭太がオメガなら……あれ?」
大樹はからかうようにそこまで言うと、何かに気づいて言葉を止めた。大樹の視線は、俺の首元だ。その視線に気づいた俺は、二人に転化のことを伝えることにした。
「んー、実はな、俺、オメガになったんだ」
「オメガ?」
「マジ?」
俺は、首元のネックガードに触れて、答えるように頷いた。
「もしかして、それでオンラインに?」
「そう。……今もまだ不思議な感じがするんだけどな」
「そりゃそうだ。ずっとベータだと思ってたんだから」
俺は、辻本に襲われたという詳細はさすがに伏せたけど、トラブルがあったこと、進路変更をすることになったことなどを説明した。自ら後天性オメガということを広げるつもりはないけど、この二人には知っていてほしいって思ったんだ。
「……じゃあさ、お前らって、番になるの?」
大学の制度の話もしたから、委員長が濁すことなくストレートに聞いてきた。今までは、気を遣ってくれていたんだろうけど、再会して俺自身から真実を伝えられた今なら、突っ込んだ話もできる。
「実はな、もう、番ったんだ」
「マジか! すげー、おめでとう!」
「おめでとう!」
ベータだったはずなのに、オメガに転化したこと。ずっとそばにいてくれた泰雅と番になったこと。それらを伝えると、二人は拍手喝采で喜んでくれた。やっぱり、すごく嬉しいな。
そして、いずれは一緒になりたい……とは思うけれど、はっきり言葉にするのはまだ照れてしまう。なのに泰雅は、まだ決定していない未来のことも、当然のように口にした。
「今は大学の寮にいるけど、卒業したら一緒に住むつもりだ」
「そっかそっか! 愛の巣に、ぜひ招待してくれよ」
「結婚も時間の問題だな!」
泰雅といつかは『結婚』したいという思いを共有しているけど、正式に『結婚を前提のお付き合い』だとは口にはしていない。もちろん、口にしていないだけで、俺は泰雅しか考えられないし、泰雅も同じ気持ちだと思う。
だけど、改めてこうやって口にされると、なんかすごくくすぐったい。
「結婚かぁ……」
「お? 圭太、顔赤くね?」
「全然、フツーだし!」
こいつらの前だと、俺がベータだった頃と何も変わらないような気がしてくる。少しだけ、悩みのなかった頃を思い返したけど、未練があるわけじゃない。オメガに転化したことも、今の生活も全て受け入れているんだ。
二人が興味津々で色々と聞いてくるから、俺と泰雅の近況はあれこれ話したけど、俺だって二人の近況を知りたい。
この場所提供をしてくれた委員長。……中学の時に委員長だったからそれ以来ずっと委員長と呼んでいるけど、本名は航平 っていうんだ。そろそろ委員長はないよなって思うけど、タイミングを逃している。
「なぁ、航平」
「ぶっ……なんだよ、急に」
「いや、高校も卒業したし、いつまでも委員長ってのも変かなって思って」
「確かにな。……けどお前、俺の下の名前覚えてたんだ?」
「そりゃ覚えてるさ」
「俺も四月から航平って呼んでんだぜ」
「大樹も? やっぱ、このタイミングかー!」
中学から一緒だった俺たちは、こうやって変化しつつ、それぞれの道へと進んでいく。それでも、俺たちの関係は変わらないと信じている。
航平と大樹の近況報告を聞きながら、大学を卒業する四年後に、泰雅とのことを報告できたらいいなって考えていた。
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