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6.戦乱の夜明け:5

「――ラウロ! 捕まっていた人たちの避難は完了した!」  謁見の間に本物のニコラが現れると、ラウロの唇はニヤリと弧を描く。エリゼオは「一体どういうことだ!」と叫ぶだけで、アルディスは負けを悟ったように絶望していた。 「帝国内は反乱軍に包囲されている。捕虜や奴隷として捕まっていた者たちも解放され、残っているのはお前だけだ、エリゼオ・リュガー」  ラウロがレイヴンから剣を受け取り、怯えて尻餅をついているエリゼオの首元に当てる。  帝国内にはもちろんエリゼオ派閥の者もいたのだが、その者たちは今頃アーサーたちが制圧しているだろう。エリゼオ派閥よりも、この状況を憎んでいる人のほうが圧倒的に多かった。  獣人の騎士や傭兵、一般人たちも反乱軍に加わり、パスフィ王国の騎士団やヴァニラ神聖王国の騎士たちも加わった反乱軍は、あっという間に帝国を取り囲めたのだ。  ミンフティ大国が攻め込まれた時のように何の準備もなかったら、再び帝国軍には負けていただろう。ただ、これまでの月日がこの大陸に住む者たちの絆を深め、それが力として集結した。  もう誰も、エリゼオの味方はいないのだ。 「な、何が望みだ? お前の望むものを何でもやろう! ミンフティの領土も返してやる、それでいいだろう⁉︎」  エリゼオは何とか生き延びるために必死に交渉するが、ラウロはハハッと失笑した。 「領土を返してもらっても、お前が死んだとしても、俺の父上と母上は戻ってこない。あの時に命を落とした我が民の命も、もう二度と戻ってこないッ! お前が傷をつけた国や人々は一生その傷を背負い、生きていくんだ。そうしていつか、何百年も経った時には――お前の存在は綺麗さっぱり忘れられるだろう」  ラウロはエリゼオの首元から剣を引く。そのまま剣を鞘に収めるラウロの背中を見つめ、ニコラは胸が締め付けられる思いだった。 「お前がいなくなったあとの大陸の再生を、その命が尽きるまで見るといい。自分のことが、人々から忘れ去られていく様子を」  血を血で洗う復讐は、終わりがない。  皇帝を殺すことを目的としていたラウロは自分自身でその選択が間違いだと気がつき、これからの人生を変えたのだ。ニコラはなによりも、ラウロの選択が嬉しかった。 「ライアス、塔の上の監獄に収監してくれ。この帝国を一望でき、再び活気に満ちていく様子が見られる特等席を」 「承知いたしました」  切られた腕を止血し、エリゼオは「許さんぞ、若造め!」と喚いていたが、ライアスたちに連れて行かれた。謁見の間には静寂が訪れ、ラウロの安堵の息だけが大きく響いた。 「……今はまだ、終わりではない。これからが始まりで、この場にいるそれぞれの国の者たちが、未来のために正しい選択をしてくれることを祈っている」  謁見の間に降り注ぐ光がラウロを照らし、ミンフティ大国の次代の王の誕生を祝っているかのようだった。後光が差しているようなラウロに、この場にいる全員が片膝をついて忠誠を示した。

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