1 / 1

淫楽

 ピチャピチャ、と濡れた音が真っ暗な部屋の中に響く。 一人の男子が床に腰を下ろし、後ろに両手をついて荒く息を吐き、天を仰ぐ。 「……あ……っ、うぅ……っ」 肌は汗ばみ、下衣は乱れ、性の匂いを放ち、誰がどう見ても発情しているその様は滑稽だった。 (ふっ……何だ自慰もしたことねぇのか?) 彼の耳元で男の低い声が笑う。 だが部屋の中に差し込まれた月明かりは、彼一人分の影しか映さなかった。 「う、……も、やめ……」 声に向けて制止の言葉を掛けるも、自身の雄根への刺激は止まない。誰も触れてないのに見えない何かが雄根を上下に扱き上げる。 生まれて初めて与えられた快楽は、彼にとって刺激が強すぎた。 どうしてこうなったのか、床一面にバラバラに散らばった陶器の破片を見つめながら、纏まらない頭の中で考えようとする。 「無駄な抵抗はやめるんだな…………どうせお前は俺には敵わない」 久々にうまそうな獲物だ、と囁かれた言葉に自分の無能さを悟る。 「…………っ、」 少しでも気を抜けば、快楽になけなしの理性が押し流されてしまいそうだった。 ──落ち着け。考えろ、考えろ…………。 歯を食い縛って頭の中で必死に思考を巡らせる。

ともだちにシェアしよう!