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プロローグ

 込童六弥(こみどうむつや)は、その日まで何と言うことのない、いわゆる順風満帆な生活を送っていた。  家は代々続く裕福な医師の家系で、上には姉が五人。込童は、その末っ子に産まれ皆に愛されて育った。  大学を出て医者になり、同じく医師だった今は亡き祖父の一軒家をもらい受け、そこにひとり暮らしをしている。  いわゆる上流の家の出だ。  院内での印象も悪くない。  ストレートの栗毛を眉のあたりでぱっつりと切り揃えたマッシュヘア。中肉中背。仕事はスマートで正確。そして、本人はいたって生真面目。  と言うのが、患者や看護師たちの主な所見だ。  けれど。  ──退屈だな。  毎日が家と病院の往復で、休日は家事をしてぼんやりと過ごす。  人にあまり興味がない込童は、進んで街中に出るタイプでもない。  学生時代は強制的に人の中にいたので、そんな込童でも人付き合いはあったし、恋人のような者も居た。ようなもの、というのは、あまり愛着もなく言われるままに付き合って、セックスして、面倒になって別れるの繰り返しで――込童の場合、言い寄ってくる相手は男も女も関係なく、自分の何がそんなに良いのだろうと首を捻ったものだった。  卒業して職場に入ってからは面倒ごとを避けるようになり、そう言った人間関係もなくなった。と言っても潔癖な彼はワンナイトの相手を求めることもなく、結果、本当に退屈な毎日を過ごしていた。  ──まったく、退屈だね。

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