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54.雨降って地固まる?
三人で名刺を食い入るように見てしまう。
俺が思ったことは正しかったみたいで、とっきーとげんちゃんも思い当たったように顔をあげた。
「どっかで見たことあると思ったら……再開発の!」
「なるほど。鷺羽 は商店街の再開発の話が出たときに、色々と調べてたからな」
「じゃあ、このホテルも……」
「ああ。サービスが行き届いているか、何日か泊まってチェックしていたんだ。君たちの喫茶店へ行ったのは偶然で、本当にコーヒーが飲みたくて立ち寄らせてもらった」
そうか、北條さんが話づらそうだったのはプラコレも再開発の対象区域だったからだ。
「今日、永瀬君にあの店をリニューアルして再開発の目玉にするのはどうかと提案しようとしていた。私も永瀬君の淹れてくれるコーヒーと料理の味は気に入ってしまったからな。だが……身勝手で浅はかな考えだったようだ」
美味しい料理を食べながらだけど、真剣な内容に聞き入ってしまう。
でもテレビに出演したっていうのは確か若社長だったよな?
北條さんは会長だから、社長とは別人ってことなのかな。
「私は再開発を見守っている立場でね。会社へ資金を提供しているから経営に口を出すこともあるが、主に進めているのは友人の社長なんだよ」
「そうだったんですね。俺は例え店を売って欲しいと言われても最後まで居座るつもりでした。プラコレはじいちゃんの思い出が詰まった大切な場所ですから」
俺の話を聞いたとっきーが、北條さんをまたにらみつける。
北條さんは謝ってくれてるし、もう少し態度を改めてもいいと思うんだけどなあ。
「どちらにしてもあんたは俺たちにとって敵みたいなもんですよ。だから、これ以上蒼樹 につきまとうのはやめてください」
「ずいぶん嫌われてしまったな。いや、私が悪いのだから仕方ないか。だますような真似をしてすまなかった。永瀬君のことも含めて謝罪しよう」
北條さんは丁寧に頭を下げてくれる。
とっきーもさすがに毒気を抜かれたのか、溜め息を吐きながら怒りを静めようとしてるみたいだ。
「だまし打ちのようなやり方は気に食わないが、謝罪している人間をこれ以上責めても仕方がない。責めたところで何が変わるわけでもないだろう」
「うん。再開発の話が立ち消えてくれるのが一番嬉しいけど……そういうわけにもいかないだろうし」
俺が呟くと、とっきーも諦めたようにまた息を吐き出す。
「そうだよな。この人に謝られたところで、店の存続が危ういのは変わらないし。気分が晴れるわけでもない。なら、俺が折れてやるしかないよな」
とっきーは相変わらず不機嫌なままだけど、俺と店のことを心配してくれてるんだもんな。
心配をかけちゃったみたいだし、後でちゃんと話さないといけないな。
「そのことだが、お詫びと言っては何だか私から社長に再開発の見直しを提案してみよう。君たちを振り回してしまったし、私は永瀬君とあの店を本当に気に入ってしまったからな」
「え? 北條さんから言ってくださるんですか?」
「それは俺たちが何かするより効果があるだろうな。鷺羽もそう思うだろう?」
「まあな。いちいち蒼樹のことを持ち出すのは気に食わないが。北條さん、早速俺たちの役に立ってもらおうか」
とっきーの言い草が酷すぎる。
時々しょうもないマウントをとる癖があるからな。
反省してもらう意味で、無言のまま力を込めて脳天にチョップした。
とっきーは頭を抱えてるけど、無視だ無視。
全く……いくらなんでも失礼すぎるだろ。なんだよ、俺たちの役に立ってもらおうかって。
恥ずかしいな、もう。
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