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第1話
もうすぐ夏休み。でもその前に必ずあるのが期末テストだ。
一学期分の内容の復習ってことだけど、まあ大半は中間テスト以降の問題だよね。でも俺の場合成績はあまり良くないので期待はしないで欲しい。
「歴史は年表覚えればどうにかなるだろ」
「まあ二十五点くらいはどうにかなるかも。しかもそれ全部合ってた場合だけどね。ねぇ周。いい加減覚え方変えれば?」
「俺最低点数あればそれでいいから。だいたいさ、歴史って後でまた変わったりするじゃん。絶対それが合ってるっていう保証ないんじゃん? だったら俺、無理して覚えたくないわけよ」
「うーん。まあ周がそれでいいんならいいんだけど、最低点数って赤点ギリギリだからね? 夏休み一緒に遊べなくなっても知らないよ?」
「そ……れは困るっ」
「だろ? だったらもう少し勉強しようよ」
「うーーん」
渋々相手の言う通り出そうな所を勉強するが、テストが終われば全部消えてなくなってしまうのも常だ。
それより肝心なのは相手である二埼希世(ふたさき きよ)とじゃれ合うのを楽しみにしている。
三日月周(みかづき しゅう)・十六歳は彼と一緒にいたくてこの学校に入ったのだから。
そして夏休み。密かに計画してるのはキャンプだった。
「あのさ」
「駄目」
「俺まだ何も言ってないじゃんかよ」
「この勉強終わってからじゃないと何も聞かないから」
「……分かったよ」
言われて教科書に目を落とすが、言いたい気持ちに変わりはなかった。
それから二時間の勉強タイムを終えて初めて言いたいことを口にする。
「キャンプ、行かないか?」
「ああ、夏休み?」
「うん」
「どこ行くの?」
「ま、まだ決めてないっ、けど」
「どこ行く?」
「えっと……」
「近場だとN高原とかHキャンプ場とかあるよね。ぁ、テントとかどうするの? それともロッジとか? てか、金あるの?」
「えっと……。ごめん。まずOKもらえるかどうかが問題だったから、それから先を考えてなかった」
「はははっ。そういうトコ、好きだよ」
コロコロと笑われて恥ずかしくなってしまったが、『これってイケるってことだよな』と安堵する。
「じゃあ、周の一番得意な現国で50点以上取れたらキャンプ、行こうか」
「ぅっ……」
「一番得意な現国なら大丈夫でしょ」
「だといいな……」
いつもの点数なら、まあどうにかなるかもしれないが、万が一と言うこともある。
あー、そうなるとやっぱ勉強しなくちゃいけないじゃん……。
〇
結局いつもより頑張ってしまった周は、それと同時にキャンプの地も色々と調べていた。
本当はテントの方がキャンプっぽかったのだが、いかんせん初心者。
ここは無難なロッジタイプを選択した方が賢いかなと言う考えで希世の言っていたN高原のロッジを予約した。
元手は親に預けたお年玉だ。ついでに色々かかるので、それも余分手元にくるようにした。
「まっ、希世君と一緒ならいっか」
「うん」
N高原はアスレチックとかもあるので人気の場所だったが、どうにか場所は確保出来た。
後は自分たち次第な展開に今からワクワクしていた。しかし。
「現国45点なんですけど!」
「うん……。ごめん……」
でも赤点30点だし……。などと言えるはずもなく、希世から睨まれて『蛇に睨まれた蛙』になった気分だった。
「どーすんの、これ!」
「うん……」
「言ったじゃん。ちゃんと勉強してって」
「うーん……」
勉強は、したんだけど……。
余分なことをしていたせいで浮かれていたのかもしれない、などとは口に出来るはずもなく怒られるだけ怒られた。
「もぅぅっ、ほっんといい加減にして欲しいっ! せっかくロッジ予約したのに!」
「ぇっ……」
「ロッジ! 普通あれだけ言えば絶対頑張ると思うじゃん!?」
「あーーーっと……。ごめん、俺もロッジ予約した」
「ぇ……。そんな見通しして結果がこれ!? 駄目駄目じゃん!」
「そこまで言わなくても……」
本当にちょっと凹んでしまうほど大打撃な言葉に力なく俯く。
「ぁ、ごめん。そんなつもりはなかったんだけど……。そうだよね、期待しちゃってごめん……」
「余計落ち込むようなこと言うなよ」
「ごめん……」
二人してシュンとした後、どうするか考え出す。
「でも行きたいよね」
「まあ」
今なら何とかキャンセル料無になる。約束は約束だからなぁ……。
半ば諦めていると希世が腕組みをしながら渋い顔で提案してきた。
「だったら今度の中間で、ってことにする?」
「ぇ?」 何を?
びっくりして目をパチパチさせていると、希世がもう一度同じことを口にした。
「って?」
「まず行っちゃってから実行してくださいってこと」
「ぇ……」 いいんですか?
思わず聞き返してみたくなったが、今はそんな状況じゃない気がする。
「でも今度は本気で頑張ってよ」
「ぅ、うん」
いつも本気なんだけどな……。と思いつつも苦肉の笑顔を作る。
嬉しいけど悲しい。
「で、どっちのロッジに泊まる?」
「日にちは? いつ取ったの?」
「8月1日」
「ぇ、俺8月3日」
「どっちも登校日前だね」
笑い合って早速旅行の打ち合わせをしだす。
テストの点数で踊らされてるとは分かっていても止められない。
乗り越えなければいけない壁はまだまだ厚いように思えた周だった。
終わり 20260624
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