16 / 41

第16話 修行

鳳雛の提案で個室のある店に入ることになった。 でもティグルが『フォンチュのすすめる店の食物は毒が入っていそうで嫌ダ』と警戒して、白虎門派の縄張りまで案内されることになった。うん、まあ、確かに嫌だよな……。 白虎門派のアジトは島の西側で『島で最も治安が良い』と言われるらしく、街も清潔で綺麗だった。ゴミひとつ落ちていない。 真っ白い建物が多くて、門派の人間は皆ティグルみたいに白い毛皮や虎のしっぽを身に着けている。髪や肌や瞳の色もバラバラで、凄く自由に感じた。 しかし街中を歩いていると、敵意のある視線が突き刺さる。 鳳雛がいる所為だ。 仲間を実験台にされたことを白虎門派の人達は恨んでいるのが伝わってくる。 肝心の鳳雛自体は気楽そうに歩いていて、まるで危機感がない。 まぁ、お前クローンいっぱいいるもんな。死んでも残機が1つ減るだけだもんな……。 そんな白虎門派の縄張りにある食堂の一室、卓についたオレだけど……。 左右を伏竜とティグルに挟まれて、とても暑苦しい。ちょっと離れろよ! と訴えるも……。 「手前は目を離すと、直ぐにトラブルを起こしやがるからな」 「モーシン、好きダ。もっと近くに居たイ」 鳳雛は向かいの席で優雅に一人で座ってるけど、誰も鳳雛の隣りに座りたくないからじゃないのか? そうして運ばれてきた料理にオレが舌鼓を打っている間に、伏竜と鳳雛がティグルにこれまでの経緯を話しだした。 伏竜は情報開示を渋っていたけど、そうでもしないとティグルが『モーシン、好きダ! 地の果てまでついて行ク!』ってなりそうだからさ……。 鳳雛も「ティグルは誠実な男だから情報を口外も利用もしないさ」とか言う。 いや、お前、ティグルの最大の敵だろ。何で理解者面してるんだよ。 で、 どうして人魚のオレに足が生えたのかとか、伏竜が死ぬとオレも死んじゃうとか、伏竜の記憶がないから青龍門派から追われていることとか、オレは姉ちゃんを捜していることも、鳳雛は玄武門派までの金ヅル以下でしかないこととかを明かした。 ティグルは納得していたけど、涙目になっていた。え。 「……モーシン、フーロンに騙されて番にされタ」 それに伏竜がツッコむ。 「騙してねぇし、こいつとヤッた記憶なんざ無ぇんだよ! 誤解を招く言い方するんじゃねぇ! 玄武門派で情報さえ買えば、こいつなんざ海に棄ててやるよ!」 お前、ふざけんなよモグモグ! と点心を食べながら抗議する。 すると、ティグルに抱き寄せられた。 「なら、玄武門派でフーロンの呪い解けたアト、ワタシ、モーシンとケッコンすル。モーシンが海に還りたいなら、ワタシ海の側に住ム」 その言葉に伏竜が一瞬、動きを止めた……ように見えた。 けど次の瞬間には「勝手にしやがれ!」と吐き捨てるように言った。 な、何だよ! お前ホント最低だな! ならオレの処女返せよ! なんだかんだ言ったり食べたりしてる間に、夜も更けてきた。 ティグルが宿を提供してくれるとかで、その言葉に甘えることにした。 でも鳳雛が翌日死んでたりしない? またこいつの死に顔見るの嫌なんだけど……とティグルに問うと、ティグルは首を振る。 「白虎門派、どれだけ憎いカタキでも、騙し討ちしなイ。奇襲もかけなイ」 「へ~、そうなんだ」 「正面から撃破すル。それが白虎門派の誇りダ。誇りを捨てること、白虎門派で最も恥であル」 わーカッコイイ~! とオレが手を叩く。 すると、ティグルは褐色の頬を紅色に染めて抱きついてきた。 硬い胸板にぎゅうぎゅうに抱きしめられる。 わーっ! ステイ! ティグル、ステイ!! そんなことをしていると、伏竜がティグルの肩を掴む。 「おい、野良虎。手前、銃修だろ」 「そうダ。剣修の青龍門派とは真逆。白虎門派だけの攻撃ダ」 銃修とか剣修とか何なのかと思ってると、鳳雛が説明してきた。 「剣や銃で戦うのが主な修仙者さ。鳳雛の場合は術が主だから、法修と呼ばれるけどね」 伏竜は今からティグルに修行に付き合え、と言い出した。 もう夜なんだけど!? 他人の都合、考えろよ! それでも伏竜は今より強くなりたいと言う。 ティグルも了承して、二人で霊力が強まる修行場へ向かうという。 「……」 それを聞いて、なんかモヤッとした。 ふーん……。オレとヤッて強くなるのは嫌だけど、ティグルと修行はするんだー……。 ふーんふーん……別にいいけどね。別にー……。 なんかムシャクシャして鳳雛の足を蹴る。 「八つ当たりかい?」 でも鳳雛はニヤニヤしていた。 そうしてオレは自分にあてがわれた部屋へ向かった。鳳雛が入ってきたら怖いのでドアにも窓にも鍵をかけて。

ともだちにシェアしよう!